ロックマンゼロ~救世主達~
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第10話 過去と現在の違い
前書き
正義の一撃作戦の前に…
エックスの想いを受け止めたルインは一応シエルに報告した。
一応年(この場合はルインの設定年齢を指す)が近いし、自分を元気づけてくれたのは他でもないシエルだからだ。
「まあ、ルイン。エックスとお付き合いすることにしたの?」
「う、うん…そうだよ。でも、まだまだ恋愛とか分かんないとこ沢山あるけど」
照れながらも嬉しそうに言うルインに、シエルも微笑む。
「良いじゃない、少しずつ知っていけば。誰だって最初は分からないことが多いわ」
「うん、ありがとうシエル」
互いに笑みを浮かべながら言うと、ルインの視線はベビーエルフが入ったカプセルに注がれる。
「ベビーエルフ…保管方法変えたの?」
「ええ、エルピスと相談してロックを二重にしてみたわ。これでしばらく様子を見てみるから」
「うん…ところでシエル…それ、おやつ?」
シエルが食べているのはどこからどう見ても、ビスケットのようなブロック栄養食だ。
イレギュラーハンター時代でもハンターベースの購買で見かけた物でカロリーが高く、腹持ちがいいものの、味はあまりルインは好きではない。
ミッション前に時間がない時の軽食にすることはあったが、やはり食べる物はしっかりとした物をルインやエックス達は好んでいた。
「いいえ、昼食なんだけど?」
「はい?」
一瞬、シエルの言葉に有り得ないと言いたげに目を見開くルインだが、現在の状況を思い出して納得した。
「あ、ああ…最近は作戦準備とか研究とかで忙しいからね。昨日は何食べたの?」
「昨日は少し寒かったし、体が温まるスープよ」
「スープ…他は?……もしかしてそれだけ?」
「そうだけど?」
それを聞いたルインは頭痛を感じそうになったが、シエルのような研究者は食事を抜くことなど平気でする者が多いのは過去の知り合い達で熟知済みだ。
「シエル…シエルはレプリロイドじゃなくて人間なんだから、ちゃんと食事を摂らないと体を壊すよ…仕方ないから私が作ってあげるよ。」
「え?ルインは戦闘用レプリロイドなのに作れるの?」
「昔、ケイン博士と暮らしていた時に食事の用意をしてたの…だからそれなりにね…食料庫は…って、何これ?」
早速料理を作ろうと、シエルの部屋にある食料庫を見たら食料が殆ど底をついていたのだ。
「最近、研究で忙しくてネオ・アルカディアの居住区に行ってないの。でも食べるのは私だけだからまだ少しは保つわ」
「シエル…流石にこれはないよ。今すぐ、ネオ・アルカディアの居住区に行こう」
人間の…特に年頃の女の子とは思えないあまりの酷さにルインは思わず深い溜め息を吐いた。
そしてルインはシエルと、偶然近くにいたゼロを伴って、エルピスにネオ・アルカディアの居住区に向かうための許可を得ようと話しかけた。
「ネオ・アルカディアの居住区へ買い物に?」
「うん、シエルの食料庫の食料が殆ど底をついていたから早く買い足さないと。後、薬とか衣服とか。だからネオ・アルカディアの居住区に行くための許可を下さい」
「「………」」
エルピスはルインの後ろにいるゼロとシエルを見遣ると、咳払いを一つ。
「コホン…正義の一撃作戦が成功すれば、より安全に食料等の確保が出来ます。ですから今危険を冒してまでネオ・アルカディアの居住区に行く必要性は…」
エルピスは出来ることなら作戦準備を優先したいので、却下しようとした時であった。
「必要性大有りに決まってるでしょうが!!」
「っ!?」
今まで聞いたことのないルインの怒声がレジスタンスベースに響き渡る。
「どれだけ完璧な作戦だか知らないけど!確実に成功するかどうか分からないでしょうが!シエルは私達レプリロイドと違って人間なの!ちゃんと食事を摂らないと体を壊すし、薬がないとシエルが病気になった時、危ないし。今のシエルの年齢を考えれば衣服だって必要でしょう!?寒い場所に行く時には防寒具だって必要になる!分かったならさっさとネオ・アルカディアの居住区に行く許可を下さい!今すぐにっっっ!!」
「わ、分かりました。ネオ・アルカディアの居住区に行く許可を与えます……」
表情を引き攣らせながら言うエルピスに、ルインは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます♪それじゃあシエル。支度してね。私とゼロは非戦闘モードで行くから」
「非戦闘モード…?」
初めて聞く言葉にシエルは疑問符を浮かべ、ゼロも口には出さないが、戸惑っているようだ。
「へ?非戦闘モードって言ったら、戦闘用レプリロイドが人間がいる街に外出して過ごしたりする時のモードに決まってるでしょ?私達のような戦闘用がこのまま人間の街に出たら事件か何かだと勘違いしちゃうじゃない?…まあ、他にも使い道はあるけどね…とにかく基本的に騒ぎを防止するためにあるモードなの……もしかして今のレプリロイドに非戦闘モードってないの?」
「ないわ」
「私も、その非戦闘モードというのは初耳ですね」
シエルとエルピスの言葉に、どうやら今の時代のレプリロイドにはそんな機能はないらしい。
「分かった。それじゃあ、見せてあげるよ。非戦闘モード、オン」
アーマーが粒子化したかと思うと、衣服を思わせる物になり、今のルインはまるでどこにでもいる人間の少女のように見えた。
「どうかな?」
「凄い!本当に人間のようだわ」
「さあ、ゼロも早く非戦闘モードに移行してよ」
当然ルインと同じ時代のレプリロイドであるゼロにも備わっている機能なので、ルインはゼロにも非戦闘モードに移行するように促すが…。
「どうやればいいんだ……?」
「あ、そうか。ゼロは記憶喪失なんだっけ?じゃあ、私がやってあげるよ」
ゼロはルインの助けを受けて非戦闘モードに移行し、早速シエルの日用品や食料を手に入れるためにネオ・アルカディアに向かうのであった。
ネオ・アルカディアの居住区に来たルイン、シエル、ゼロの三人は人々が賑わう姿を見ながら街を堂々と歩いていた。
「うわあ、こういう賑やかな場所は久しぶり」
「これがネオ・アルカディアの居住区か…」
「ふ、二人共…あまり目立たない方がいいわ。ネオ・アルカディア軍に見つかったら……」
居住区とはいえ一応敵地であるにも関わらずに堂々と歩くゼロとルインに、シエルはもしネオ・アルカディア軍に見つかったらと思うと気が気でない。
「大丈夫だよ。非戦闘モード中は殆ど人間と大差ないから。余程高性能な感知器で調べようとしない限りは気付かないよ」
途中で金目の物を売って金に換えると、ルイン達はまず食料を買いに向かう。
「それにしても人間の居住区だけあって平和だよねここは。外では勝手な都合でイレギュラー認定されたレプリロイドが処分されているのにさ」
「偽りの平和に飼い慣らされた人間……まるで人形だな」
外では不当な理由で処分されているレプリロイド達がいると言うのに、ここに暮らす人間達はただ何もせずに与えられる平和を享受しているだけだ。
「昔もここまで酷くはなかったよ。一応いざこざはあったりしたけれど、人間とレプリロイドは平等にって思う人はそれなりにいたからね」
「コピーエックスの極端な政策のせいか…エックスがやっていたならまだ少しマシだったかもしれんな」
コピーエックスの人間第一主義で短絡的な政策は本人がいなくなっても未だに根付いてネオ・アルカディアを狂わせている。
「そう言わないの。エックスは今、ボディを動かせないらしいから仕方ないじゃない。」
「……………」
ゼロとルインの会話を聞きながらシエルは俯き、それに気付いたゼロとルインは口を閉ざした。
コピーエックスを造ったのはシエルであり、今のネオ・アルカディアを生み出してしまったのは自分のせいだと思ってしまったのだろう。
ルインは話題を逸らすように、シエルの手を引っ張って食料を扱っている店に向かう。
必要な物をいくらか購入した後、ルインは買った物のチェックしていた。
「えっと、食料買った。薬買った。服も買った…お金がかなり余っちゃったね。丁度良い時間だから夕食はここで摂ろうか。私も久しぶりに温かい食事が食べたいし」
「え?」
「何?私、何か変なこと言った?」
目を見開いたシエルに、ルインも疑問符を浮かべた。
「ルイン…食べられるの?」
「………そんなの当たり前じゃない。食事はレプリロイドの娯楽の一つじゃない。エネルギーの補給も兼ねてるんだから……もしかして今のレプリロイドには食事を摂る機能もないの?」
「え、ええ……」
「うわあ、この時代のレプリロイドって、みんな大損してるね。昔のレプリロイドは食物をエネルギーに変える機能があったんだよ。とにかく、あそこの喫茶店で何か食べよう」
ルインが喫茶店のドアを開くと、カランカランと軽快な音を立ててドアベルが鳴った。
「いらっしゃい」
「どうも。さあ、行こう。ゼロ、シエル」
シエルはこういう店に入るのは初めてで、ルインもここに入るのは初めてだろうに全く動じた様子はない。
そういうところも凄いとシエルは思ってしまう。
「んー、すいません。Aランチ三人分。お願いします」
残りの金額を確認し、メニューを読んで適当に注文する。
しばらく待つと、オムライス、サラダ、スープ、デザートにチョコチップの入った小さなケーキが運ばれてきた。
ルインはオムライスを一口頬張り、ゼロも見様見真似で料理を口に運ぶのを見て、シエルも慌てて料理を口に運んだ。
「どう?久しぶりの料理の味は?」
「……悪くない。何故か懐かしい気がするな」
「本当に美味しいわ」
料理を食べ終え、代金を払うと店を出てレジスタンスベースに帰るためにネオ・アルカディアの居住区から離れる。
そしてネオ・アルカディアの居住区から大分離れたのを確認し、ようやく息を吐いた。
「久しぶりに食べた食べた。」
「本当。私、誰かと一緒に料理を食べるの久しぶりだわ。セルヴォやアルエットは食べられないし……」
「そうか……」
満足そうなシエルの表情を見て、今まで気にしていなかったが、レジスタンスでは人間はシエルだけで他は自分を含めてレプリロイドだ。
この時代のレプリロイドは人間の食事は摂取出来ないので、シエル一人で食べていたので、やはりシエルもどこか寂しかったのもしれない。
「もしネオ・アルカディアと和解出来たなら、レプリロイドの食事機能のことを進言してみようかしら……」
こういう食事を一緒に食べると言うのも、今の人間とレプリロイドの交流に必要なことなのかもしれない。
「いいんじゃないかな?それじゃあレジスタンスベースに戻ろうか。アルエットちゃん達も心配してるだろうし」
非戦闘モードから通常の状態に移行し、レジスタンスベースに戻ろうと通信を繋げようとした時であった。
「待て!!」
「え!?」
「ハルピュイア!?」
「見つかったか……」
三人の前にハルピュイアが降り立った。
偶然、居住区に訪れていたハルピュイアは居住区を離れようとしているルイン達を呼び止めようとした時、非戦闘モードから元の姿に移行したのを見てしまったのだ。
「貴様ら…ネオ・アルカディアの居住区で何をしていた!?」
返答次第では許さないと言うのがハルピュイアの表情と、握り締めているブレードから見て取れたが、隠す必要もないのでルインはあっさりと返答する。
「何って…買い物だけど?」
「はあ?」
ネオ・アルカディアの居住区で何か仕掛けたのかと危惧していたが、即座に返ってきた返答は“買い物”という単語と品物が入った紙袋であった。
思わず気が抜けた声が出てしまったが、それは仕方ない。
「買い物…だと…?曲がりなりにも敵地で、か…?」
「うん。だって仕方ないじゃない。シエルは私達レプリロイドと違って人間なんだよ?ちゃんと食事を摂らないと体を壊すし、病気になった時に薬がないと危ないし、年齢を考えれば衣服も必要でしょう?それに寒い場所に行く時とかのために防寒具も買わないと。人間用の物が売ってる場所なんてネオ・アルカディアの居住区くらいじゃない。私、何か間違ったこと言ってる?」
「ぐっ…い、いや…間違っては…いない」
現在、コピーエックスの代わりとしてネオ・アルカディアの統治者代行となり、人間の生活にも目を向けているのでハルピュイアからしてもルインの言葉は正論その物だった。
「でしょう?」
「あのハルピュイアが言い負かされてる…」
信じられない物を見るかのようにシエルはルインとハルピュイアを見つめる。
「ふふ…ネオ・アルカディアの居住区を見たよ。平和で笑顔が満ちていたね…買い物の途中で聞いた話題も夕食のことや明日の予定とか、昔以上に理想郷って感じ……人間限定でね」
「っ……」
それを言われたハルピュイアは痛いところを突かれたとばかりに表情を歪めた。
「ハルピュイア、私はずっと眠っていたから統治者時代のオリジナルのエックスのことは何も知らないけどね。私の知るエックスはいつも人間やレプリロイドの未来を考えていた。今のネオ・アルカディアの姿をエックスが見たら、喜ぶと思う?君もオリジナルのエックスに仕えていた時期があるんでしょう?」
「…ああ」
当然ハルピュイアはコピーエックスのオリジナルにも仕えていた時期がある。
そしてオリジナルのエックスならば今のネオ・アルカディアの現状をどう思うかも、それくらいのことは分かるくらいの時間は共有していたのだから。
「なら、どうしてまだこんな極端過ぎる政策を続けるの?シエルが言っていたようにエネルギーの問題?」
「…そうだ…かつての戦争によりエネルゲン水晶などのエネルギー資源が枯渇する寸前なんだ。新たなエネルギー資源の開発の目処も立っていない現状では今の政策を続けるしかない…人間の最低限の生活を守るためにも…」
「でも、エックスならきっと簡単に妥協なんてしなかったよ。エネルギー不足を理由にしてね……ハルピュイア…君は今のネオ・アルカディアに何の疑問も抱いてないの?同じレプリロイドを、レジスタンスを倒すことが本当に人間のためになると思ってるの?正義だと思ってるの?」
「……俺は…!」
「止めるんだ二人共」
重い空気の中、暖かな光と穏やかな声に全員がハッとなって振り返ると、そこにはサイバーエルフの球体状態のエックスがいた。
「エックス?」
「エックス様!?」
突如現れたエックスに、ここにいる全員が目を見開いた。
ハルピュイアは呆気に取られたような顔でエックスを見つめていたが、やがて自分の本分を思い出したのか慌てて跪く。
自分に仕えていた頃から変わっていないその様子に、エックスは安堵して人型になるのと同時に微笑んだ。
「ハルピュイア、ルイン達を見逃して欲しい」
「エックス様?」
「今更僕にこんなことを言う資格がないことは分かっているよ。でも、ルイン…彼女は、僕の大切な人なんだ。ゼロも二人といない親友…。」
「エックス…」
エックスとルインの間に流れる穏やかな空気にハルピュイアは二人の関係を察した。
「エックス様…まさか…」
「うん、そうだよ」
エックスの穏やかな表情にハルピュイアはそれを肯定と受け取り、ブレードを収めた。
「ありがとう。ハルピュイア、エックス」
礼を言うと、ルイン達はレジスタンスベースに転送された。
「彼女のあんなに楽しそうな顔は久しぶりに見たな…」
「エックス様…俺は…」
「僕に君に何か言う資格はないよ…。ネオ・アルカディアのことを君達に押し付けてしまった僕には…ね…」
「………」
「でも、良かったよ。間に合って…もし、戦いに発展して君とルインが殺し合うなんて見たくなかったから。何せ…黙っていたけど、君達には僕の他にルインのDNAデータが刻まれているから…親と子供が殺し合うのは見たくないんだ。」
「俺達にルインのDNAデータが?」
それを聞いたハルピュイアは僅かに目が見開いた程度で、それを見たエックスはもしかしたらハルピュイアは薄々自分達がルインと何らかの関係があることに気付いていたのかもしれない。
「あまり驚かないんだね」
「はい、ルインの各アーマーの特徴が俺を含めた四天王に似ていましたし、彼女を初めて見た時…他人ではないような感覚を覚えました。戦闘記録を見たレヴィアタンとファーブニルも同様のようです」
「…そうか…やっぱり分かるものなんだね…」
「エックス様…このことは…ルインに…」
「ああ…まだ彼女には知らせていないんだ。まだ目を覚まして日が浅い彼女に伝えても混乱させるだけかもしれないし……とにかく頃合いを見て話してみるよ」
それだけ言うとエックスは人型から球体のような状態に戻り、姿を消した。
「……母…か……」
“君は今のネオ・アルカディアに何の疑問も抱いてないの?同じレプリロイドを、レジスタンスを倒すことが本当に人間のためになると思ってるの?正義だと思ってるの?”
「…正義…俺は……」
脳裏を過ぎるルインの言葉によってハルピュイアの心には二つの正義が揺れ動いている。
コピーエックスの人間優位の正義を信じようとする気持ちとエックスが統治者だった頃の人間とレプリロイドの平等な共存を模索しようとする気持ち。
悩むハルピュイアだが、自分は統治者代行としてやらねばならないことが山積みだ。
ハルピュイアは悩みながらも一度ネオ・アルカディア本部へと帰還するのであった。
一方、ネオ・アルカディアの居住区からレジスタンスベースに戻ったルイン達は、一緒に食事を摂るようになった。
ルインとゼロは食物のエネルギー分解効率がいいらしく、エネルゲン水晶よりもこちらを好んだ。
「シエルお姉ちゃん、ゼロとルインお姉ちゃんと一緒に食べるようになってから嬉しそうだね」
「ああ、今まで一人で食べていたからな。今では一緒に食事が出来るから嬉しいんだろう」
「むっ?何だ、この緑の奴は?変な味がするが?」
「あ?それピーマンだよ。」
ゼロが変な味と言った物は炒め物に入れたピーマンであった。
「ピーマンって、独特の苦味とかがあるから嫌いな人が多いのよね」
「シエルは食べられるのか?」
「…あまり好きじゃないかも……」
仲良く食事を摂るゼロ達を見て、コルボーが一言。
「何というか……ゼロさんやルインさんの時代は本当に人間とレプリロイドが共存してたんですね。時々ゼロさん達がレプリロイドなんだと忘れてしまう時が……」
「晩御飯は野菜をたっぷり入れたシチューにしようか?」
「あ、じゃあ…私も手伝うわ」
「うん、ゼロ。食材を切るのお願い」
「…了解」
食事をすることもあり、一緒にいることが普段よりも格段に増えたゼロとシエルだが、そのことに嫉妬している人物がレジスタンスベースにいた。
その人物は自室にて机に顔を埋めていた。
「シエルさん…あなたはやっぱりゼロがいいんですか…。あんなムッツリ男のどこがいいんですか…っ」
それはレジスタンスの司令官エルピスであり、こっそり撮ったゼロの写真に拳を叩きつける。
「でも、私は負けません。いつかゼロを出し抜いて、必ずあなたを振り向かせてみせます。ゼロ…正義の一撃作戦が成功するまでは精々シエルさんと仲良くしているといい…。最後に勝利を手にし、幸せを手に入れるのはこの私です……ちょっと私より強くて戦えるからって、いい気になって、シエルさんの部屋に入り浸った挙げ句、シエルさんどころか、あの、得体の知れない女(ルイン)まで侍らせて。あのいけ好かない澄ました顔と態度といい、にっくきハルピュイアやネオ・アルカディアの高官達にそっくりで本っ当に許せませんっ!というか、ハルピュイア達にそっくりなあの女が現れてから私は……ブツブツ……」
エルピスの恨み辛みの言葉は運良く誰も聞いていなかった。
後書き
途中のハルピュイアとルインの会話を変更。
あそこはギャグじゃなくてシリアスにすべきだったと反省してます
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