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三角定規×2

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9部分:第九章


第九章

「一週間持っていればか」
「まだ六日なんだよ」
 その持っている時間まで言うのだった。なおこれは全て作り話である。彼が今時分の思いつくままに設定しているだけであるのだ。
「あと一日なのにな」
「そうか。じゃあ絶対に見つけないとな」
「そうだろ?だからな」
 そう言いながら探すふりをする。しかしあくまでふりはふりだ。彼は探すふりを続けながら耳をそばだてていた。そのうえで聞いているものがあった。
(もう少しかな)
 扉が開く音をだ。待っているのだ。
 それはもうすぐの筈だった。だがそれは中々来ない。少なくとも彼にはそう思える時間だった。しかしそれも遂に、であった。
 扉が開く音がした。一瞬だった。しかし彼はそれを見逃さなかったのだ。
(よし)
 それを聞いて心の中で会心の声をあげる。そして芝居を変えるのだった。
「あっ」
「見つけたのか?」
「ああ、ここにあった悪い」
 言いながらポケットからそのコインを出してみせたのだった。出してきたのは只の十円玉である。それを貴匡に対して見せるのであった。
「俺が持ってたよ」
「おいおい、しっかししれくれよ」
 貴匡はその彼の言葉を聞いて苦笑いで返すのだった。
「持ってるんだったよ」
「御免御免」
「まあ見つかったらいいさ」
 人のいい彼はそれでいいとするのだった。そうしてそのうえで卓也に対して述べた。
「それじゃあ。確か」
「ああ、そっちのクラスな」
 言いながらすぐに左手を指差すのだった。そこに彼等が目指すそのクラスがあるのだ。
「そこで聞きたいことがあるからな」
「ふうん、そうなのか」
「じゃあ入るか」
「ああ、悪いな」
 こう話しながらそのうえで彼を部屋に入れるのだった。
 するとそこには六郎がいた。彼も芝居をして言うのであった。小声で言うのだった。
「よお」
「あれっ、御前もいたのかよ」
「ちょっとな卓也と一緒に考えてな」
 こう言うのだった。あくまで小声である。それはまるで貴匡をそこに入れるかの様であった。
「それでなんだけれどな」
「それで?」
「そうだよ。聞きたいことがあってな」
 こう話すのだった。その間に囲いの向こう側では千里が理美や沙耶と話していた。あえて小声にしてだ。そのうえで話すのだった。
「ねえ」
「それでよ」
「何よ」
 千里は自然とそんな二人の言葉を受けて。彼女も小声になっていた。そうしてそのうえで二人に対して言葉を返すのであった。そうしてである。
「秋山君のことだけれど」
「どう思ってるのよ」
 怪訝な顔を作って問い返してみせた理美と沙耶だった。
「あんたが悪いと思わない?」
「誤解なんだし」
「それはね」
 親友の二人にこう言われるとだった。千里も無下に言うことはできなかった。顔を曇らせてそのうえで困った顔で話すのであった。
「悪いと思ってるわよ」
「思ってるのね」
「それ嘘じゃないわよね」
 二人はここぞとばかりに千里に話す。
「じゃあさ。謝りたい?」
「そう思ってるの?」
「ええ」
 この返事は二人の思う通りだった。千里は気付かなかったが彼女は二人の言葉を聞いていてそのうえで話すのであった。
 
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