戦国異伝
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第二百三十七話 魔界衆その九
「消えております」
「何処かにとか」
「はい、どうやら明の南に大きな島がありますが」
「美麗島とかいったな」
信長から島の名前を出した。
「そうであったな」
「はい、あの島は実は倭寇の拠点にもなっていますが」
「倭寇といってもな」
信長は倭寇についても知っていて言うのだった。
「本朝の者は少なかったな」
「はい、明や朝鮮の者にです」
「南蛮の者がじゃな」
「多く」
「その倭寇にか」
「入った様です」
こう信長に話すのだった。
「どうやら」
「堺を出てか」
「そして他の港町にいたそうした者達も」
堺のことだけでなく、というのだ。
「次々と港からいなくなり」
「そしてか」
「美麗島に入った様です」
「おかしな動きじゃな」
「その者達の中には伴天連の者達もいますが」
「伴天連の坊主達じゃな」
「その者達はフロイス殿達とは違いまして」
利休はその目を鋭くさせて信長に述べた。
「耶蘇教を広めるのを口実に本朝を」
「乗っ取るのじゃな」
「そして民を奴隷として売ろうとしている者も」
「ふむ、そうした奸賊もおるか」
「ならず者達に混ざって」
「そうであったか、以後気をつけねばな」
彼等にもと言う信長だった。
「是非な」
「左様ですな」
「そしてその者達も美麗島においてか」
「何かをしているかも知れませぬ」
「そうなのじゃな」
「どうやら」
「わかった」
信長は利休の言葉に頷いた、そのうえで言うのだった。
「天下が定まってから耶蘇教の者達についてはじっくりと考える」
「そうされますか」
「ことと次第においては厳しいことも考えておく」
信長はその目を険しくさせて述べた。
「そうの様にしよう」
「では」
「さて、伊賀を攻める用意をし」
そしてだった。
「帝はご無事であられるな」
「はい」
信行が信長に答えた、大坂城に信広と共にいた彼がだ。見れば信行の隣にはその信広がしかと控えている。
「御所にまでお送りしました」
「安土に来るまでにか」
「公卿の方々と共に」
「よくやってくれた、ではわしは再び都に入る」
伊賀攻めの用意を進めるその間にというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで遂に、ですか」
「うむ、なるぞ」
信行に笑みで以て答えたのだった。
「そうなる」
「そうですか、遂にですか」
「既に本姓は変えてある」
信長のそれはというのだ。
「その為の桐じゃったからな」
「足利の御紋」
「あれですな」
「うむ、わしは源氏じゃ」
その本姓はというのだ。
そしてだ、信長はその腰にあった刀を手に取ってだ、そのうえで大名達に見せてから言った。
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