戦国異伝
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第二百三十七話 魔界衆その一
第二百三十七話 魔界衆
本能寺から逃れ安土において魔界衆の者達を退けた信長はすぐに天下の諸大名を安土に集めた。その中には。
佐久間、林、安藤といった織田家から追い出された者達もいた。彼等と付き合いの長い柴田は彼等のところに来て笑顔で言った。
「戻って来ると思っておった」
「そう言ってくれるか」
「うむ、上様には何かお考えがあってのことと思っておった」
こう佐久間に言うのだった、見れば三人共既に青い織田家の服を着ている。
「そしてやがてはな」
「こうしてか」
「上様の御前に共に参上出来ると思っておった」
こう笑って言うのだった。
「そしてその時が来てな」
「嬉しいか」
「そうじゃ」
笑顔がここで満面のものになった、濃い髭の中の口を大きく開いてのものだ。
「まことにな」
「そこまで喜んでくれるとはな」
「意外か」
「いや、、考えてみれば御主らしい」
佐久間も笑って柴田に言葉を返した。
「そうした風にすることもな」
「そう言うか」
「うむ、御主は又左が織田家を追放となっている時も最も親身じゃったからな」
「済まぬがこの度は御主には何も出来なかった」
「何を言う、女房子供に何かと世話を焼いていたというのではないか」
このことは佐久間も高野山で聞いていた、無論柴田は林や安藤の家族にもそうしていた。
「そのこと有り難く思う」
「上様もそのことは何も仰ることはなかった」
これまた前田の時と同じくだ。
「どういうことかわかるな」
「うむ、確かにな」
「こうして織田家に戻れるだけでなく」
林も晴れやかな顔で言う。
「禄も戻して頂けるとのこと」
「そのこともじゃな」
「感無量じゃ」
林もまた柴田に言った。
「まことにな」
「最初から領地はそのままじゃったしな」
林達のものだったその領地はだ。
「それを考えるとな」
「上様のお言葉通りじゃ」
「御主達も言われておったか」
「そうじゃ、追い出すがな」
「そのうえでか」
「自由に動き探れと」
「あの者達についてか」
柴田はあらためて林に問うた。
「上様が文で言っておられた」
「それでわしは都の高田家のことを突き止めた」
「わしは高野山でな」
「わしは伊賀を重点的に調べておった」
佐久間と安藤も言って来た。
「そうして突き止めたのじゃ」
「あ奴等のことをな」
「魔界衆か。古事記や日本書紀にあった」
「その者達のことじゃ」
「我等も調べた」
「わしもまた」
丹羽も来た、滝川もいる。
「調べてな」
「奴等のことがわかった」
二人で言うのだった。
「まさかと思ったが」
「天下を乱す者達がおるとはのう」
「裏から企み乱す」
「そうした者達がおるとはな」
「敵は表におるだけではないか」
柴田も言うのだった。
「まことに世の中は一筋縄ではいかぬわ」
「しかも」
丹羽はこうも言った。
「長年に渡って暗躍してきたのじゃ」
「そうじゃな、まつろわぬ者共か」
「確かに古事記や日本書紀には出て来る」
林も言う。
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