三角定規×2
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11部分:第十一章
第十一章
「えっ・・・・・・」
「嘘・・・・・・」
唖然として驚く千里だった。そして驚いているのは千里だけではなかった。
そこに立っていた貴匡もそうだった。彼も唖然としていた。
「何でここに」
「いるんだよ」
「おい貴匡、聞いたよな」
「千里ちゃん謝ったぜ」
しかし二人に考える時間は与えられなかった。卓也と六郎がすぐに彼に声をかけてきたのである。まさに考える時間を与えない為である。
「これでいいよな」
「謝ってくれたんだから」
「あ、ああ」
突然の事態と言葉に唖然となったままであるがそれでも応える貴匡だった。
「じゃあ」
「ほら、言ってあげなよ」
「今ここでな」
「わかった。それじゃあな」
貴匡は彼等の言葉に頷いた。そうしてそのうえで千里に顔を戻して述べた。
「千里さ」
「ええ」
「わかったよ」
微笑んでの言葉であった。
「それでさ」
「そう、許してくれるの」
「いいよ、もう」
許すというのであった。これもまた微笑んでの言葉だった。
「それでさ。謝ってくれたから」
「有り難う。じゃあ」
「仲直りしようか」
貴匡からの言葉であった。
「これでな」
「そうね。それじゃあ」
千里は顔を真っ赤にさせていた。そのうえで彼に応えるのだった。
「これで。もうね」
「うん、仲直りだよ」
二人で言い合うのだった。これで二人の仲は戻ったのだった。
そんな二人を見ながら四人は教室を出た。仲直りを果たした彼等にまだ何か言う程彼等は野暮ではない。そういうことなのである。
四人で歩きながらだった。卓也は沙耶と、六郎は理美と並んでいる。そのうえでそれぞれ話していた。
「上手くいったよな」
「そうね」
理美は六郎のその言葉にこくりと頷いた。
「大丈夫かなって思ったけれど」
「大丈夫になったよな」
「よかったわよ」
六郎の言葉を受けてまた微笑む理美だった。
「おかげでね」
「そうだよな。それでさ」
「何?」
「怪我とかないよな」
心配する顔になって理美を見ての言葉であった。
「さっきのテーブルを移動させた時に」
「ああ、大丈夫よ」
笑ってそれを否定する理美だった。
「何ともないから、全然ね」
「ならいいんだけれどな」
理美のその言葉を受けて六郎も笑顔になった。
「だったらな」
「心配してくれたんだ」
六郎のその優しさを今知ったのである。
「有り難うね」
「いいって」
小柄なその顔で理美を少し見上げての言葉だった。
「そんなのはさ」
「いいのよ。本当に有り難うね」
それでも言う理美だった。とにかく二人はこれで笑顔になっていた。
そして卓也と沙耶も。それぞれ言い合っているのであった。彼等も彼等で。
「これでハッピーエンドだけれど」
「一時はどうなることかって思ったな」
「全く」
困った様な微笑を浮かべて言った沙耶だった。
「本当にね。どうなるかってね」
「けれどよかったよ」
ここでこんなことを言う卓也だった。
「上手くいってな」
「そうよね。別れずに済んだし」
「俺達だけじゃどうにもならなかったよ」
卓也はこんなことも言ったのだった。
「本当にな」
「けれど四人だったら」
「何とかなったわね」
理美も沙耶も笑顔で応えた。
「それじゃあ何とか」
「やっていけそうね」
「じゃあこれからどうする?」
六郎が話した。
「とりあえずあの二人は上手くいったけれど」
「そうだよな。四人で何処かに行くか?」
卓也が六郎のその言葉に応えた。
「祝いにな」
「そうだな。ラーメンでも食いに行くか?」
六郎は彼の話を聞いてラーメンを出した。
「それで四人でな」
「あっ、いいわね」
「四人で。違うわね」
理美と沙耶がここで言った。
「二人ね。二人と」
「二人になるわね」
「二人?そうか」
「二人か」
卓也も六郎もそれで頷いた。皆で言い合う。
そうしてだった。四人ではなく二人と二人で二人の祝いをしに行く。復縁とはじまりの祝いに。
三角定規×2 完
2009・10・13
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