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ファーストキスは突然に

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7部分:第七章


第七章

「それはね」
「そうだったんだ」
「だってお決まりじゃない」
 だからだというのである。
「そういう場所で、っていうのは」
「けれどここで」
「恥ずかしかったわ」
 言ってそこで顔を真っ赤にさせる恵美だった。
「やっぱり。皆がね」
「確かに」
 周りには二人の高校の制服が多い。他の学校の制服もいることにはいるがやはり多い。中には知った顔もある。皆その二人を見て驚いている。
「見てるし」
「けれど。一瞬だから許されるわね」
「どうかなあ、それは」
 崇はここで先生もいることに気付いた。見れば先生は眉間をぴくぴくとさせている。これからおっかないことになってしまうのは何となくわかっていた。
「実際のところ」
「難しいのね」
「みたいだね。それでもね」
 とりあえずその話は置いておいて、であった。彼は恵美にさらに話した。
「したことはしたし」
「絶対河川敷で仕掛けて来ると思ったのよ」
 恵美はここでまたにこやかな笑顔を見せてきた。
「だったらその前に」
「ここで?」
「意表を衝いてやろうって思ったのよ」
 今度は悪戯ッ娘の笑みになっていた。
「それでだったのよ」
「俺やられたってこと?」
「そういうことになるわね」
 まさにそうだというのである。
「これはね」
「何だよ、折角あれこれ考えたのに」
「私もよ」
「恵美ちゃんも?」
「そうよ。考えたのよ」
 恵美の顔はにこにことしている。
「けれどね。ここでね」
「仕掛けてなの」
「勝利は我が手に」
 また悪戯っぽい顔になるのだった。
「やったって感じよ」
「参ったな、本当に」
 崇はしてやられた顔になって苦笑いを浮かべた。
「やられたよ」
「まずは私が一勝」
 こう言うとだった。崇は少しムキになって言い返してきた。
「いや、これから河川敷に行って」
「どうするの?」
「今度は俺が勝つよ」
 それを今本屋の前で宣言するのだった。
「そう、絶対にな」
「じゃあ何してくれるのかしら」
「キスより凄いことしてやるよ」
 彼はまた宣言した。
「それこそな。やってやるよ」
「それじゃあ楽しみにしておくわ」
「うん、じゃあ河川敷にね」
「とはいっても」
 崇はここでまた先生の方を見る。顔は最早政治犯を見つけた秘密警察の人間になっている。何故かロシアの首相にそっくりな顔である。
「あまり派手なことはできないみたいだけれどな」
「何かあるの?」
「あるんじゃなくているから」
 その首相を見ての言葉である。
「まあちょっとだけね。ちょっとだけ冒険するから」
「それじゃあ河川敷にね」
「行こうか」
 こうしてであった。二人は今度は河川敷に向かう。そして今度は。
 
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