リアルアカウント ~another story~
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account 1 日常
前書き
~一言~
ちょこちょこと書いてたら、いつの間にか 少し溜まっちゃってたので思い切って投稿してしまいました……。
あまり、続くと思いませんので 他に投稿している作品よりも文章はかなり短くなってますが、ご了承下さい。こんなのでも、見てくれたら……本当に嬉しいです。
では、よろしくお願いします。
20XX年 4月24日 16:30
右見ても、左見ても、視線に入る ほぼ皆全てが ケータイを見ている。操作をしている。それは、学校であろうと、街中であろうと殆ど同じだ。世の中は いつからこうなったのだろうか。
四六時中、弄って弄って……、それしか する事が無いのだろうか。
少し前までは、子供だったら外を駆け回って遊んだり、公園で遊んだり。それは学生だってそう。色んなレジャー施設に遊びに行ったり、友達と一緒に買い物に出かけたり、スポーツ観戦をしに行ったり、映画を見に行ったり、と色々出来る事もあるし、それらをする方が良いだろうとも思える。大きくなれば成る程に、行動範囲が広がる。選択肢は広がっていくんだから。
――……なのに、なんで ケータイばかりなんだろう……、どうしても判らない。
「――って、なんてね。僕が なんだかついていけないだけだから。……機械とか、苦手だし。これがアブれる、って事、なのかな? ……いや 間違いなく、だよね。……はぁ」
永々とため息を隠れながら吐いてしまう少年が1人、教室の片隅。一番隅の席で座っていた。本を読むふりをしながら、顔を隠して。
彼は、学校に転校してきたばかりの転校生だった。
人見知りが少し激しく、更には機械が苦手、と言う理由でケータイは持っているものの、殆ど扱ってない。目的は電話くらいであり、相手も家族である妹くらいだけだ。転校前、
地元には少し話せる程度だが、友達はいたけれど……、とある時期から、話が少なくなってしまったのだ。
「(あれ、やってないと……やっぱり なかなか話題が見つからないよね……)」
彼が言う《あれ》とは。
「おっ、彼女から、メッセが来てた」
「おおっ 《リアアカ》の新作ゲーム、明日配信開始だって!」
「マジ?? 見せて見せてー」
「うーむ……、漸くフォロアーが増えた……」
「さいてーだ。既読スルーなんか、すんなよ……」
「あ~、いつ見ても、このマスコットの顔、なんか腹立つよな~」
彼の姿等最早眼中にないのは仕方ない。教室に残っている生徒の殆ど全員がケータイを操作したり、その内容を話したりをしているからだ。
そう、彼が言う《あれ》とは、そのケータイ。皆が夢中になってしているモノは。
《リアアカ》、こと『リアルアカウント』
国内最大のSNSの名称だ。
それは、数年前までは 沢山の種類があったSNSだが 全てが統合された、基本実名登録で、現実ともリンクしていて、サービスもかなり充実している。手軽に利用出来るモノが多い為、どんどんその便利さは拡散されていき、規模がどんどん膨れ上がっていた。
軽く国の経済をも動かせる規模になって来た、と言う事もあってなのか、政治家達も目を付け、あれよあれよという内に国からの支援も増え、更に充実。普及率は信じられない程にまで 膨れ上がった。
その普及率は、携帯電話の普及率に迫るのも時間の問題ではないか? とも言われる。無論、複数アカウントを取得する事は原則として不可能だから、1人で何台もケータイを持っている人もいる為、リアルアカウントと携帯電話の普及率がイコールになる事は無いが。
「…………」
本を只管眺め続ける。
後 数分で学校も終わる。その瞬間まで。
「ねー、圭君は リアアカ しないの? 確か前にしてみる、って言ってたと思うんだけど。落とした、とも言ってたしね?」
たまにだが、まだ 転校して日も浅かった、と言う事もあって 声をかけられる事もある。だが、それを活かし 友達の輪を繋げていく。
なーんて事が出来るなら、こんな感じで1人きりにはならないだろう。
「あ……、えと、その……」
突然話しかけられた、と言う事もあって、挙動不審になってしまった様だ。
ここで彼の名を紹介しよう。
彼の名前は圭。真田 圭。
転校したばかりで まだまだ全然クラスメイトと話す事が出来ない。
「あー、やめとけよ、けいには。本当は、興味無いみたいだし。結構前、俺らが押し付けた感じもあったしよ?」
「だよな。楽しいのは楽しいけど、無理強いはやっぱ 良くないって」
いや、決して、クラスメイトに仲間はずれにされた訳でもなければ、いじめの様な陰湿な目に合わされている訳ではない。 ただ、人との付き合い方が よく判らなかった。
そして、周囲に言っていた機械が苦手と言う公言。それは、本当は……とある理由により、ケータイが、苦手。SNSと言うモノが苦手だった。そして、更には引っ込み思案な性格も災いしてしまい、逆に気を使わせてしまった。
それが更に罪悪感となって、負のスパイラルを生み出している。
リアアカを 逆に今してない方がおかしい時代において、それは孤立してしまう最大の要因になってしまっていたのだ。
そして、学校も終わり 足取りも重いままに 通学路を歩きだした。
いつも通りの街並み、住宅街。その風景と同じで自分自身も何も変わらない。いや 変えようともしていないのかもしれない。
「はぁ……、やっぱり 上手くいかない、なぁ。でも、仕方ないかな……」
仕方がない、仕様がない、とは思いつつも 彼は……。圭はやはり 苦しんでいた。
圭には、これまでにも 色々とあったから。
そんな時だった。
「……ん? なんだ??」
突然、胸ポケットの中に入れていたケータイが光出したのだ。
着信か? と思ったが違う様だ。
それは、ディスプレイだけじゃなく ケータイ全体が光ってる様にも感じたんだ。
「え、な、なに? なにこれ??」
突然、ケータイの光が圭の身体全体を光で包んだ。
有り得ない光源に 驚く間もなく、光で包まれ 目の前も真っ白になってしまったのだった。
――ここは、どこ??
あまりにぶっ飛んだ自体だ。
意味がわからないし、思考も纏まらない。
身体が宙に浮いている様な浮遊感を感じるが、実際にどうなっているのかがわからない。目の前? 瞼はしっかりとあけている筈なのに、何も見えない。恐らくだが、光で溢れすぎていて、自分自身の姿が見えないのだろうか。
ただただ、真っ白な世界だけが続いていた。
『へぇ~、漸くきたな! って思ったら、ガキだったか。まぁ 電子媒体持ってて良かったぜ。《入り込み》安いだからな』
そんな時だ。
たぶん、目の前からだ。目の前から、声が聞こえて来た。
「え、ええ? な、なに?? いったい、なに??」
『よぉー、小僧。お前、ついてるぜ?』
「な、何が、何が起きてるの??」
『まぁ、聴けよ。もぅ ちっとしたら、この世界で 面白そうな事が起きそうなんだよな。ま、詳細までは判らんがな。だから、よ~。―――オレと一緒に遊ばね?』
「だ、だから、いったい……何を??」
会話が、全く成立しない。
何が起きてるのか? いったいなんなのか? それがわからないまま、だった。この声も理解が出来ない。目の前は真っ白なのに、声だけが聞こえてくるんだから。
だから、圭は 最終的には、夢だと思うしかなくなった。だが、それをも見越したかの様に《声》は続いた。
『はは。白昼夢なんかじゃないぜ? まぁ 信じられないのも無理ないな。ふつーは 信じれん。 だが、よ? 1回だけ、信じてみ? 楽しくなるぜ?』
「や、いや、信じてみ? っていわれても、何がどうなって、どうすればいいのか……?」
『簡単だよ。腹ん底から 一緒にヤルって 念じりゃ良い。……それに、お前 《強く》なりてぇんだろ?』
「っ……、な、なんで?」
『オレぁ、今お前ん中にいるんだ。今のオレに隠し事は不可能なんだよな。信じられないんなら、ぜーんぶ、言ってやろうか? お前がなんで ケータイやSNSが嫌いなのか、その訳って奴を……よ?』
「っっ……」
それは、誰にも言っていない事だ。
家族である妹にも。……いや、共有しているかもしれないけど、自分の内までは言っていないから。
『……強くなれるぜ? オレを受け入れりゃ。そらもう、マジで。有りえねーーっ って叫びたくなるくらいになぁ? くくく』
「いったい、なにが目的……?」
まだまだ、何が起こっているのかが判らない。だけど、簡単に頷いてはいけないものだという事。それは、沢山の物語を読んできた彼だからこそ、即座に連想出来るモノだった。
『ああ。安心しろよ。オレは楽しみたいだけ、なんだ。最高によ? ま、それがお前にとってイイことなのか、悪い事なのかは、オレにとったら、判らんが。まだ これから 何が起こるか、詳細までは判らんのでね。ただ、これだけは 断言してやるぜ……』
ひと呼吸おいた後に、続いた。
『明日だ。20XX年 4月25日。文字通り生死が関わる様なヤツが起こるだぜ? だから、楽しいんだがな♪ ――勿論、それは お前だけじゃない。この世界、人類全てだ』
その後、どうやって帰路に着いたのか判らない。
いつの間にか、家のリビングにあるソファーに座り込んでいた。テレビをつけてるわけでもない。部屋の電気さえつけていない。ただただ、困惑をしているだけだった。
「ちょっとー、お兄ちゃん? 帰ってるなら 返事してよー! 真っ暗な部屋で一体何してるの??」
そんな時だ。
2階から足音が聞こえたかと思えば、扉が開いていて、少女が腰に手を当てて、頬を膨らませていた。
「聞いてるのっ!? お兄ちゃんっっ!」
「あ、ああ。うん、聞いてるよ。ごめんな。琴美」
慌てて、返事を返した圭。そして、少女の名は琴美。圭よりも2つ歳下の妹だ。
――たった、1人の家族だ。
その表情はまだ、優れない。あの異常な現象があって、何が現実で、何が夢なのかがわからないからだ。
「……? どうかしたの? お兄ちゃん。いつもと何か、おかしいよ? 変なものでも食べた??」
「馬鹿。……そんな訳無いよ。ちょっと、疲れてるだけ、だから」
「んー、なら 良いけど。さ、ご飯にするよ。準備、手伝って」
「……ん。了解」
圭は、ゆっくりと立ち上がると台所へと行き、準備を手伝った。
そして、準備をする中で、徐にではあるが、妹に今日の出来事を話した。勿論ストレートではなく、フェイクを織り交ぜながら。
「あははは。その人、リアアカのし過ぎなんじゃない? 色んなゲームだってあるし。熱中のし過ぎで、区別つかなくなっちゃんだと思うよ。そ〜いうのは、少しでもいいからおやすみするのが一番なんだよ? ほら、ゲームにだって表示されてるし。《1時間したら、15分は休憩》ってね」
「ま、まぁ 確かにそう言う線もあるよね」
「ん~、私は白昼夢なんて、見たことないしー、後は 疲れてるせい何かも知れない、かな。それが、一番オーソドックスっぽいでしょ?」
聡明な妹。圭の自慢の妹だ。
頭もよく働いていて、どこにも非がないとも思える。周りに言えばきっと、シスコン、だと思われるだろう。勿論、色々と弁えているつもりだが、別にそう思われても構わないと思ってる。
…妹を守る男の人が現れるまでは。自分がしっかりとしなきゃいけない。
圭はそう思ってるから。
―――セカイは、激変 スル――――
その時だ。
再び、声が聞こえたのは。聞こえた、と認識、理解出来た瞬間 飛び跳ねる様に 圭は立ち上がった。
「っっ!?」
「? お、お兄ちゃん? どうしたの? 突然、立ち上がって」
琴美も驚いて、首を傾げた。圭は、琴美には何も言わず、ただただ 周囲を見渡していた。
―――サァ タノシモウ。 オマエハ、ウン ガイイ ―――
―――オマエ、ソシテ オマエノ イモウトモ、ドウヨウ二 ―――
―――モウ、オマエハ オレデ オレハ オマエ ―――
―――オマエガ、シヌコトハ ナイ ―――
―――ダカラ、 タダタダ、タノシモウ ―――
その後、圭は 糸が切れた人形の様に崩れ落ちた。
琴美が驚いて、急いで近所付き合いのある隣のおばさんに助けを求め、ベッドで寝かされた。
救急車を呼ぶ所まで言ったのだが、数分で目を覚ましたのだ。
最後に覚えているのは、その頭の中に直接響いてくる言葉の中のたった1つだけだった。
―――セカイは、激変 スル――――
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