ロックマンゼロ~救世主達~
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第2話 NEWレジスタンスベース
前書き
NEWレジスタンスベースにて
ハルピュイアによってレジスタンスベース付近に送り届けられたルインはゼロを運びながらレジスタンスベースに近づいていく。
「これが…ゼロの仲間がいるレジスタンスベース…?ここって確か…アルマージが占拠した場所じゃなかったっけ?」
自分からすればつい最近でも、二百年の年月で随分とここ周辺も変わり果てたものだが、確かにここなら資源も大量にあるだろうし、基地として絶好の場所だろう。
長い年月の末に忘れ去られてしまったのだろうと判断し、少し寂しさを感じたルインは足を進めようとした直後であった。
「動くな!」
「え?何?」
「何者だ!ネオ・アルカディアか!?」
ゼロの持っていた物と同じ同型のバスターショットを構えながら警戒するが、ルインとゼロの姿を見ると警備のレプリロイドは驚愕に目を見開いた。
「ゼロさん…が二人!?」
「じゃなくて、私はルイン。ゼロの後輩だよ…私はいいけど、ゼロが危険な状態なの…誰か、メンテナンスが出来る人はいない?」
「は、はい!!」
その言葉に警備兵はシエル達を呼ぶためにレジスタンスベースの奥へと消えていった。
そして一方、基地内では新しいレジスタンスベースの完成に全員が活気付いていた。
「レジスタンスの皆さん…長い間、ご苦労様でした…皆さんのおかげで、ようやくこの新しいレジスタンスベースが完成しました…私、エルピスもこうして…新しいベースの司令官としてここに立てることを大変光栄に思います。これからも…これまで以上に努力致しますので…皆さん、よろしくお願いします!!」
司令官であるエルピスの言葉にレジスタンス兵が歓声を上げ、喜びながらレジスタンス兵達がこの場を去っていくのと同時にシエルが入ってきた。
彼女の姿を見たエルピスの表情は先程よりも穏やかになる。
エルピスはシエルに対して好意を抱いていた。
「ふふ…照れくさいですね、司令官なんて。本当に私なんかで良かったんでしょうか?」
「ネオ・アルカディアから逃げるだけで精一杯だった私達を纏めてくれて、ネオ・アルカディアと同等に戦えるようになったのは、あなたのおかげ…」
実際にエルピスと合流するまでは、戦闘に関しては素人同然で、ゼロに頼りきりだったことを考えると、正面からではないにしろネオ・アルカディアに対抗出来るようにしたエルピスの力は大きい。
「そんな…私が…こんなに頑張れたのも…ひとえにあなたが…シエルさんがいてくれたからこそ…です」
遠回しにエルピスは自分の想いを告げたつもりだったのだが、シエルは気付かず、エルピスに諭すように口を開いた。
「ただ…これだけは忘れないで欲しいの…レジスタンスは、あくまで、自分達を守るための手段…ってことを」
「ふふ、分かっていますよシエルさん!あくまで…シエルさんの研究が完成するまでの時間稼ぎですよね。」
柔和な笑みを引き締めて真剣な表情を浮かべると、エルピスは口を開く。
「しかし…まだエックスが復活していない、今…今がチャンスなんです。自信があります…今回の私の作戦だけは…是非、やらせて下さい」
その作戦はネオ・アルカディアへの直接攻撃。
出来ることなら止めて欲しいと言いたい。
しかし、自分達を纏め上げ、レジスタンスを強化してくれたエルピスに対してあまり強くは言えなかった。
「……………分かったわ…だけど本当に…無理だけは…しないでね」
「はい、分かりま…」
「た、大変です!!」
司令室にレジスタンス兵が慌てた様子で入ってきた。
ただ事ではない様子に何事だと目を見開くシエル達に構わずレジスタンス兵が口を開く。
「外で、ゼっ、ゼロさんが…ゼロさんが来ていますーーーー!!」
「えっ…ゼロがっ!?」
一年間、別行動をしていたゼロがこの基地に来たことにシエルは目を見開いた。
「はい!後、ゼロさんの知り合いらしき人もいます!!さっ、こっちです。」
それを聞いたシエルと、かつてゼロと作戦を共にしたレジスタンス兵達が外に向かうのだった。
「…………ゼロ…さん、か…」
エルピスは外に向かっていくレジスタンス兵とシエルを見送りながら小さく呟いた。
「ゼロ!!」
レジスタンス兵達と共に外に出たシエルは酷く傷付いているゼロに駆け寄ってゼロの状態を見ると、思っていたよりも酷い損傷に胸が痛む。
「大丈夫、ゼロは気絶してるだけだよ。」
「あ、あなたは…?」
ゼロに似た容姿のレプリロイドに、シエルは目を見開く。
「私はルイン。イレギュラーハンター時代のゼロの後輩。安心して、君達の敵じゃないよ」
安心させるように笑みを浮かべると、ルインはゼロを支える。
「メンテナンスルームはあるかな?ゼロのメンテナンスをしないと…見ての通り酷いダメージを受けてるから…」
「え、ええ…」
そして急遽メンテナンスルームに運び込まれたゼロはメンテナンスベッドに横にされ、ゼロのメンテナンスを終えたセルヴォはゼロの武器を修理していた。
心配そうに看病をするシエルだが、ゼロが僅かに身じろぎしたのを見て立ち上がる。
「ゼロ…!!」
即座にセルヴォはメンテナンスベッドを解放し、起き上がれるようにすると、ゼロはゆっくりと体を起き上がらせた。
「生きていたのね…ゼロ!!」
「おお、ゼロ。目を覚ましたか!!全く、こんなにボロボロになりおって…よく…生きて…帰ってきたな」
一年間もネオ・アルカディアに追われていたゼロをシエルとセルヴォはずっと案じていたが、基地のことや研究のこともあってゼロの捜索が出来なかったことをずっと気にしていたのだ。
その分、ゼロが満身創痍とは言え、この基地に辿り着いたのは喜ばしいことであった。
「……………ここは?」
メンテナンスベッドから降りると周囲を見回す。
「私達の新しいレジスタンスベースよ。あなたのおかげで、私達はネオ・アルカディアの追求を逃れ…ここで新しい生活を始めることが出来たの。本当にありがとう…そして…直ぐに迎えに行けなくて…ごめんなさい。」
「さっ、シエル…。ゼロはまだ疲れている。話は尽きんが、もう少し休んでもらおう。これからはずっと会えるんだからな。ところでゼロ。君が持っていた武器は殆ど壊れていたから私が修理しておいた。新しい武器も用意しておいたから、後で私の部屋まで来てくれたまえ」
それだけ言うと、セルヴォは修理を終えて新品同然のZセイバーとバスターショットをゼロに渡す。
「ルインはどうした?」
「ああ、彼女か…。今、エルピス司令官から尋問を受けているよ」
「エルピスが念の為って…多分そろそろ……」
「失礼するね」
シエルの言葉が終らないうちにメンテナンスルームにルインが入ってくる。
「ルインか…」
「やあ、ゼロ。元気になって何よりだよ」
メンテナンスを受けたことでボロボロだったボディが新品同然の状態になっているゼロを見て、ルインも安堵したように言う。
「ゼロ、彼女に礼を言わなくてはならないよ。彼女がここまで君を運んでくれたんだ。」
「そうか……」
「え?あ、いや…私は別に……」
「謙遜しなくてもいいのよ。ゼロを助けてくれて、本当にありがとう」
助けたのは自分ではなくハルピュイアだと言いたかったが、ハルピュイアは敵なので、言わない方がいいと他でもないハルピュイア本人から言われたので黙っておく。
「それにしても君達は本当に似ているな」
「え?」
「…………」
セルヴォが二人を見比べながら言うと、二人の視線がセルヴォに向けられる。
「君達二人が並んでいると兄妹のようだ。」
「あら、本当だわ」
シエルもゼロとルインを交互に見つめる。
二人は確かに長い金髪などの特徴が似通っているため、端から見れば兄妹型のレプリロイドに見えなくもない。
「似ているだけだ」
あっさりと否定するゼロだが、ルインはキョトンとしながらゼロを見上げながら口を開いた。
「え~?私はゼロのことお兄ちゃんのように思ってたのにな。」
その言葉に僅かだけ、本当に僅かだけ硬直するとゼロは自然な動作で彼女の頭を撫でた。
「あは、この撫で方、記憶は無くしても変わってないや」
「…………」
ゼロとルインのやり取りを見ていたシエルとセルヴォはイレギュラー大戦が起きる前までは本当に兄妹のように仲が良かったのだと気付かせるのに充分過ぎた。
「それにしてもゼロ、昔と比べて随分性格が変わったね」
「?」
「そうなの?」
「口数は少ない方だったけど、口調はもっと荒っぽかったもん。」
「昔のゼロはどんな人だったの?」
あまり分かっていないイレギュラーハンター時代のゼロのことを知るチャンスだとルインに尋ねる。
「うーん、そうだね…昔のゼロは口が悪かったかな。私がイレギュラーハンターになる前はライバルで親友だった人と些細なことで喧嘩もしていたらしいし、人間のケイン博士を殴り飛ばした時もあったなあ。あ、勿論、それにはちゃんと事情があるんだけど。髪を三つ編みにされたり、からかわれたりさ」
「人間を…殴った…?」
信じられないと言いたげなセルヴォである。
無理もない、レプリロイドは基本的に人間に危害を加えることは許されていないのだ。
例えそれが英雄であろうとだ。
「勿論、私もエックスもゼロと共謀してケイン博士に報復したよ。料理にタバスコ……滅茶苦茶辛い調味料を混ぜたりしてさ…今思えばケイン博士の年齢を考えればやりすぎだったかも…まあ、自業自得か…」
「エックスも…?」
「うん、エックスもエネルギードリンクの青汁風味を飲まされたり、私もオバケとかで怖い思いさせられたりね…」
信じられないとばかりに目を見開くシエル。
幼い頃に見たエックスはまるで神様のように見えたので、人間相手にゼロも一緒にそんな報復に加わるとは…。
「ゼロはケイン博士のことを爺だの糞爺だの言ってたけど、本当に変わったね。記憶喪失って凄いなあ…でも本質は変わってないようだけどね」
記憶にあるゼロと今のゼロを比較して感心したように言うルイン。
「今のエックスとゼロを見ているとちょっと信じられないところがあるけど…昔の…英雄と呼ばれる前のエックスやゼロも、私達とあまり変わらなかったのね……」
英雄と呼ばれているエックスとゼロも最初から完璧だったわけではないのだと分かり、シエルも少し親近感を抱いた。
「うん……ゼロとは会えたけど…オリジナルのエックスはどこにいるのかな……?シエルは知らない?」
寂しげに呟くルインにシエルも首を横に振る。
「ごめんなさい。私もエックスがどこに行ってしまったのか知らないの…」
「そっか……」
ある程度予想していたため、やはりショックではあったが、笑みを浮かべる。
「本当にごめんなさい。私達、席を外すわ……私は研究室にいるから…元気になったら、会いに来てね。貴重なお話をありがとうルイン。またゼロ達の昔話を聞かせてもらえるかしら?」
「うん、そっちこそ。今のゼロ達のお話を聞かせてね」
「勿論よ」
そしてシエルはセルヴォと共にメンテナンスルームを後にし、残されたゼロとルインはメンテナンスベッドに横になり、休息を取るのであった。
後書き
シエル達からすれば若い頃のエックス達のやんちゃぶりは信じられないの一言だろうな、特にマンガ版。
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