おぢばにおかえり
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第十八話 プールですその十六
「長池先輩は怖くないわよ」
「そう?物凄く怖いんだけれど」
「厳しいなんてものじゃないっていうし」
「そうかしら」
言われて首を捻ることしきりです。
「私は別にそれは」
「同じ部屋なのに知らないの?」
「全然」
首を横に振るしかありませんでした。
「優しいし穏やかだし」
「なまじっか奇麗なせいかしら」
「奇麗なのが怖いの?」
「ほら、奇麗な顔の人が怒った時の顔って」
話を聞いていて何か般若とか夜叉を思い出しました。先輩の穏やかな白いお顔も思い出します。思い出しても頭の中では全然つながりません。
「物凄いことになるじゃない。だから多分」
「長池先輩も」
「だから。先輩はそんな」
「そうなの」
「私先輩と一緒の部屋で本当によかったって思ってるし」
これは本当のことです。
「そんなの別に」
「そうなの。まあその話は置いておいて」
「ええ」
「先輩のスタイルってどんな感じ?」
「先輩の?」
話はまたそこに。
「そうよ。一緒の部屋じゃない」
「そうだけれど」
「だったらわかるわよね。どんなの?」
「・・・・・・凄いわよ」
ついついこんな言葉になりました。
「凄いの」
「お風呂で見てるじゃない、結構」
「そういえばそうか」
「先輩達って何か皆凄いわよね」
これも本当のことです。たった二年でこんなに違うの!?って感じで。天理高校は三年になると皆奇麗になるんでしょうか。私達は全然なのに。
「お顔もスタイルも」
「ほら、佐野先輩も」
その小柄で垂れ目の先輩です。広島の。
「胸大きくない?」
「小柄なのにね」
小柄なのに胸は結構あるんです。私と全然違います。
「だったらちっちも。ってそれはないわね」
「そうね」
「ないの」
こう言われてまた憮然とします。
「欲しいのだけれど」
「そうよね。胸はね」
「けれどさ、男の子ってわからないわよ」
また中の一人がこう言ってきました。
「わからないって?」
「胸が小さいのがいいって人もいるし」
「そうなの」
言われても今一つ、いえ二つ以上わからないお話です。何度言われても。胸は大きい方がいいのに決まっていますから。違うんでしょうか。
「有り得ないわよね」
「ええ」
見たら皆同じ考えでした。
「小さいのがいいっていうのはどう考えても」
「それはないわよ」
「例えばうちの男連中」
今私達がいるこのクラスです。
「しょっちゅう胸の大きい娘に注目してるわよね」
「そうそう」
ちょっと声のトーンを低くします。けれどこれは天理高校の制服は大人しいデザインでスカートの丈も長めですから。自然とそこに目が行くのかも知れません。
「嫌らしいけれどわかるわね」
「男の子って皆そうよね。小学校の六年辺りから」
「急によね」
教会にいたら小さい子もよく来るのでこういったこともわかるんです。私の家の教会にも子供がよく来ました。小さい時は私が相手をしてもらって今は私が、です。
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