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戦国異伝

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第二百三十六話 生きていた者達その十二

「しかも十二家の一つじゃった」
「十二家といいますと」
「魔界衆の棟梁たる家々じゃ」
「その十二家が魔界衆を操っているのですね」
「そして崇伝もまたじゃ」
「十二家の一つだったのですか」
「そして公方様のお傍に入り込みな」
「公方様も惑わしておられたのですか」
「そうしておった」
「もう一人いましたが」
 ここでだ、帰蝶は崇伝の他にもう一人義昭の傍にいたというのだ。その傍にいた者は一体誰なのかというと。
「同じ様な僧侶が」
「南光坊天海じゃな」
「あの者も」
「そうじゃった、魔界衆じゃった」
「やはりそうだったのですか」
「二人で公方様を惑わしておったのじゃ」
「では十二家の」
「一人でな、その十二家の者達はな」
 信長はここで帰蝶にその家の者達を話した。
「十兵衛の軍勢におったあの老人にじゃ」
「他にも」
「その天海と崇伝、津々木に無明、法界坊に津々木」
 信行を惑わしていた彼もというのだ。
「公卿の高田家、百地三太夫、石川五右衛門、楯岡道順、音羽城戸それに松永久秀じゃった」
「松永殿もだったのですか」
「そうじゃった、書にあった」
 そうだったとだ、信長は帰蝶に答えた。
「魔界衆について書かれていた古書にな。松永家もとな」
「魔界衆だったと」
「そう書いてあった」
 そうだったというのだ。
「魔界衆の十二家じゃ」
「その主達ですか」
「その者達がな」
「ではその十二家が」
「わしに何かを仕掛けておったのじゃ」
「周りの方も使い」
「奴等は闇の者達、陰にいるまつろわぬ者達じゃ」
 それが魔界衆だというのだ。
「何故この名になったか。どうもかつて神武帝が大和に入られる頃に朝廷と戦をしたな」
「古事記た日本書紀にある」
「まつろわぬ者達が出ておるが」
「その者達でしたか」
「そうだったのじゃ」
 まさにというのだ。
「あの者達こそがな」
「そうでしたか」
「そのまつろわぬ者達の一派が闇に隠れてな」
「魔界衆となったのですか」
「名付けたのは雄略帝の様じゃ」
 この帝であられたというのだ。
「雄略帝もこの者達と激しく争いな」
「その中で、ですか」
「あ奴等を異形の者と言われ」
「あちらも自ら言って」
「そう名が決まった様じゃな」
 魔界衆と、というのだ。
「元は鬼や土蜘蛛と言われた者達と同じじゃった」
「左様でしたか」
「その様にな」
 こう話すのだった。
「あの者達はな」
「そしてその魔界衆が」
「天下を常に乱そうとしていてな」
「天下布武、天下泰平を目指される上様を」
「消そうとしておったのじゃ」
「そういうことでしたか」
「うむ、わしは多くの敵と戦い全て降してきた」
 その天下布武の戦の中でだ。 
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