戦国異伝
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第二百三十六話 生きていた者達その七
「ここはな」
「成程、あの者をですか」
「ここで使われますか」
「そうしてですか」
「城を攻められますか」
「あの者にじゃ」
明智、彼にというのだ。
「それに後の二人も使おう」
「明智家を動かす三人を全てですか」
「使ってそのうえで」
「兵を動かしてですか」
「攻めさせますか」
「明智の兵達はあの三人が動かしている」
もっと言えば兵達だけでなく家全体がだ、明智家は明智光秀と斎藤と秀満の二人の重臣が両腕となり動かしている家なのだ。
だからだ、この三人を使ってというのだ。
「だからじゃ」
「ここは、ですな」
「あの三人を三人共使い」
「そして動かし」
「そのうえで」
「攻めさせるとしよう」
これが老人の考えだった、そして実際に。
明智達三人がだ、動いてだった。
軍勢の前に来てだ、兵達に告げた。
「攻めよ」
「殿、ここに来られたのですか」
「御自ら」
「左様」
抑揚のない声での返事だった。
「わし自ら采配を取る」
「そしてそのうえで」
「城をですか」
「攻め落とし焼け」
そうせよとも言うのだった。
「よいな」
「わかりました、では」
「これより」
兵達も応える、そのうえで攻めようとするが。
ここでだ、城の正門が開いてだった。
そこから軍勢が出て来た、その者を見てだった。明智の兵達は飛び上がらんばかりに驚いて声をあげた。
「ば、馬鹿な」
「こんなことがある筈がない」
「これは嘘じゃ」
「何かの間違いじゃ」
「ど、どういうことじゃ」
その者の姿を見てだ、老人も言った。明智と斎藤、秀満達の後ろに闇の衣を着た者達を連れて控えていたのだ。
「あの者達が生きておるだと」
「真田幸村や前田慶次には逃げられましたが」
「このことはわかっていましたが」
見れば幸村や慶次達もいる、無論兼続と可児もいて十勇士や飛騨者達もいる。
しかしだ、彼等だけでなくだ。
「森蘭丸もいて」
「しかもです」
「あれは帰蝶姫」
「それにです」
「織田信長、織田信忠」
「二人もいます」
こう言うのだった、その二人を見てだった。
闇の者達も驚愕していた、だが明智達だけは人形の様に表情を変えない。先頭にいる馬上の者はその彼等を見て言った。
「ここで驚かぬとはな」
「上様、やはりこれは」
すぐ左に控える平手が言った。右には長政がいる。
「思われた通りかと」
「そうじゃな、三人共な」
「操られておりますな」
「しかも勘十郎の時よりも強いな」
「まるで人形でありませぬ」
「そうじゃな、さて」
その者信長がだ、ここでだった。
馬上から明智の後ろにいる者達が自分を剣呑な、しかも憎悪に満ちた目で見ているのに気付いて彼等に対して問うた。
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