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真田十勇士

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巻ノ二十四 鎌倉その十三

「しかもさらにな」
「新しく上杉の執権となられた」
「直江兼続殿か」
「はい、どうやらです」
「あの御仁は天下の臣というが」
「幸村殿にもです」
 その彼と比べてもというのだ。
「負けてはおらぬ」
「そこまでの御仁じゃな」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「上杉に隙を見せてはなりませぬ」
「そしてあの家と正面からぶつかることもな」
「避けるべきかと」
「では、じゃ」
 ここまで聞いてだ、氏政は断を下した。その断はというと。
「甲斐、信濃はな」
「徳川殿に」
「渡すとしようか」
「そうされますか」
「やはり我等は東国じゃ」
 甲斐、信濃は西国になる、氏政はこのことからも言ったのである。
「東国、それも関東をな」
「完全にですな」
「手中に収める。だからな」
「甲斐、信濃はですか」
「手を引いて徳川殿にお渡ししよう」
「そうされますか」
「そうじゃ、しかしすぐにはそうせぬ」
 二国を家康に渡す、それはというのだ。
「こちらも強さ、意地を見せてな」
「そしてですな」
「そのうえで渡す」
 甲斐、そして信濃をというのだ。
「そして後は徳川殿と盟を結ぶか」
「徳川殿はお強いので」
「そうじゃ、それでお互いに攻めぬことを約してじゃ」
 そして、というのだ。
「手打ちとしよう、どう思うか」
「よいかと」
 風魔は氏政に一言で答えた。
「それで」
「そうじゃな、では甲斐及び信濃に攻めるのは止めてな」
「徳川家とは盟を結ぶ」
「そして上杉家ともな」
「あの家ともですか」
「出来る限りじゃが」
 徳川家に対するのとはかなり違ってだ、こちらは絶対という訳ではなかった。氏政はそれを言葉にも出していた。
「手を結びたいな」
「あの方は北陸で、ですか」
「そうしたい、しかし」
「上杉家とは、です」
 風魔も言う、暗い声で。
「今の上杉家は謙信公からで本来は長尾家ですが」
「それでも上杉家とは早雲様の頃からの因縁がある」
「長年に渡って数多く争ってきました」
「そうじゃ、だからな」
「しかも謙信公は」
「父上とどれだけ戦ったかわからぬ」
 関東管領だった上杉家の要請を受けてだ、謙信は頻繁に関東に攻め入り北条家と争ってきたのだ。氏政のその数多くの戦に出ている。
「そしてあの家に養子に入れたな」
「弟君も」
「御館の時に腹を切っておる」
「因縁が深いですな」
「だから家中において上杉家と手を結ぶにしてもな」
「それでもですな」
「反発をする者が多い」
 そうした現実があるというのだ。 
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