コスプレイヤー
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1部分:第一章
第一章
コスプレイヤー
高見沢由比はこのクラスの学級委員長である。眉目秀麗容姿端麗で有名であるがそれと共に自他共に対して非常に厳しいことでも知られている。そう、他人に対しても。
しかも学級委員長である。だから余計に問題なのであった。
「駄目よ」
「駄目っておい」
彼女が学級委員長を務めるそのクラスにいる木戸敬太郎はそう言われて思わず言い返した。彼の横には数人の同士が並んでいる。
「まだ言ってもいないぞ」
「言わなくてもわかるわ」
由比は腕を組み足を少し開いて厳しい顔で仁王立ちをして二人の前にいる。背は高く胸も大きい。ミニスカートの制服をしっかりと着こなし白い清楚なソックスによく似合う奇麗な脚だ。和風のすっきりとした美貌の顔だがそこにはやや吊り上がった厳しい目がある。
奇麗だが厳しい感じのする目である。その目で啓太郎達を見据えているのだった。
「どうせあれよね。今度の休みに教室を使いたいのね」
「ああ、そうだよ」
啓太郎はそののほほんとした感じの顔を綻ばせて答える。
「いいだろう、ただダンスの練習をするだけなんだしさ」
「悪いことには使わないよ」
啓太郎達はブレイクダンスをしているのである。たまたまその休みの時は練習できる場所が学校にはなく教室を使おうというのだ。しかしそこに障壁があったということなのだ。実は彼等にはまともな部室がない。それでものを置く場所にも困っている。新設の部なのでまだそうしたものはないのである。それで教室を使ったりもしているのだ。
「教室は勉強をすることよ」
「うっ」
「ダンスを踊る場所じゃないのよ」
全てを退ける強い言葉であった。
「わかったわね。だから駄目よ」
「駄目なのか」
「ダンスをしたいのなら外ですればいいじゃない」
これが由比の意見であった。
「するなとは言わないから。公園でも何処ででも」
「雨が降ったらどうするんだよ」
「そうだよな」
「そうなったら」
「そんなことは知らないわ」
また随分ときつい言葉であった。
「私の知ったことではないわ。そこは自分達で考えて」
「ちぇっ、厳しいなあ」
「厳しいっていうか冷たいな」
「どっちでもいいわ」
そんな言葉は聞き慣れているのか全く平気だった。由比はその話を聞いても平気な顔のままで啓太郎達の話を聞いているのであった。
「とにかく。教室は使ったら駄目よ」
「ちぇっ、先生はいいって言ってくれるのに」
「何で由比ちゃんだけ」
「由比ちゃんじゃないわよ」
呼び方にも言ってきた。ブレザーの制服の中にある胸がはちきれそうになりそれが反り返っている。姿勢がいいことの証拠だがそれでも目立つ。
「高見沢って呼んでね」
「高見沢さん」
啓太郎が渋々ながらも彼女をこう呼んだ。
「ええ。そういうことだからね」
そこまで言うと踵を返した。そうして彼女は敬太郎達の前から姿を消した。後には憮然とした顔で地団駄を踏む啓太郎達がいるだけであった。
「やっぱり無理だったか」
「相変わらずだよな、由比ちゃんは」
本人がいなくなったのを確認してこの愛称で呼ぶ。
「何でああも堅苦しいんだかね」
「美人だしスタイルもいいのにな」
「しかも成績優秀スポーツ万能」
つまり完璧美少女というわけだ。そんな女の子も滅多にいない。
「あれでなあ。性格があんなに生真面目でなかったら」
「おかげでこっちは苦労するよ」
「そうだよな。まあ今回は仕方ないな」
啓太郎は溜息混じりに言うのだった。
「今回はな。公園で練習するか」
「そうだな。仕方ないけれど」
「公園の管理人さんに許可もらってな」
こういうことにはしっかりとした彼等であった。だがそれでもどうにも気が晴れない。気が晴れないがそれでも彼等はダンスの練習には打ち込む。その休みで公園での練習が終わってからある程度はすっきりしたがそれでも気は完全には晴れてはいないのであった。
この日彼等はジーンズやシャツといったラフな格好でダンスの練習に興じていた。見物人も来て彼等に明るく応対しながら練習をしていた。それが終わってその見物人達の話をふと耳に入れるのだった。
「そういえばさ今度のコスプレでも彼女来るらしいぜ」
「ああ、あそこでだな」
「あそこ!?ああ」
啓太郎はあそこと聞いてそこが何処なのかわかった。彼はダンスの他にもコスプレ会場に行くことを趣味としているのだ。彼がするわけではなくそれをしている女の子達を見るのが好きなのだ。あそこと聞いて何処かわかる程にまで入れ込んでいる趣味であるのだ。
「あの会場か」
「あの娘また出るかな」
「ああ、あの娘か」
「あの娘!?」
彼等の話を仲間達と休憩しながら耳だけで聞く。彼がマークしていない美人がいるのかと思って何でもないふうを装って真剣に聞いていた。
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