あの太陽のように
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
15話
あれから二週間が経過した。
脱走計画を練り始め、毎日実践してはいるものの、未だに成功しない。
「風間さん、いつまでやるんですか…もうすぐ消灯時間ですよ?」
「は?ならお前さっさと戻れよ。俺は一人でやる」
「そ、そんなことできないですよ!!」
俺の記憶は、本当に少しずつ、少しずつ、消えているようだった。
毎日の検査でも異常な数値が出るようになって、免疫力も低下しているらしい。
その前に、外に行かないとな。
サッカーのためにも。
「風間さん、あまり無理しないでくださいね?」
「はぁ?無理してねーよお前俺を誰だと思ってんだよ。……風間さんだぞ?」
「…それツッコんだほうがいいですか風間さん」
脱走計画を本格的に考えたり、屋上でこっそりサッカーしたり、いろいろと自由にやっているからなのか、以前よりも明るくなったなどと言われるようになった。
優一さんに。
まぁ、優一さんだし、いいけど。
何か、明るいとか言われるのは違和感がある。
「よし、今日のとこはこれで終わりだな。なかなか凝った作りになってるだろ。明日はこれを実践する」
「頑張ってくださいね、風間さん」
「おう」
太陽が病室から去っていく。
いつのまにか俺の病室は脱走計画の書かれた紙が混在していた。
…まぁ、没収されたら困るし、検査の時は隠すけど…。
「…………」
この二週間で、だいぶ変わったもんだな。
前までの俺じゃ、絶対こんなことしなかった。一回くらいは抜け出すかもしんないけど…いや、抜け出しもしないか。
…そういえば、何で俺、脱走するのを諦めたんだろ。
昔は未遂を犯しすぎて警戒態勢すごかったのに。
この記憶も忘れたのかな、俺。
…ま、そんなこと思い出しても何にもならないだろ。消えたなら消えたで、いいか。
…いい、よな…?
コンコン
ノックの音が響いた。
律儀にノックする奴なんて1人しかいない。
「入っていいぞ、神童」
「……すまない、急に来てしまって。…相変わらずこの部屋は紙だらけだな…」
「まぁな。意外とあちこちにルートがあるから、全部書いてるんだ」
「そうか。……今日はちょっと、聞きたい事があって来たんだが…」
真面目なトーンで話し出した神童。
…一体、何なんだ?
「俺とお前が初めてあった時、俺が言ったこと覚えてるか?」
「……前に、会ったことがないか、ってやつなら、覚えてるけど…」
「そう、それだ。今日、一度家に戻って、その時に部屋で一枚の紙を見つけてな。…これなんだが…」
神童が差し出してきた紙を受け取り、中を見る。
この病院の見取り図が書かれ、時折メモ書きのようなものもしてある。
…俺の書く、脱走計画書と似たような書き方。いや、全く同じ書き方…。
「……!!」
途端、脳裏に流れ込む、いつかどこかの風景。
屋上で俺が、紙に見取り図を書いていて、それを興味深そうに眺める一人の少年。
その、少年は…。
「昔、俺達は一度だけあったことがあるんだ。脱走しようとして走っていたお前に俺がぶつかって」
「…そう、か。…それで俺が、失敗したからお前も手伝えって言って、一緒に考えさせたんだよな」
やっぱり、どこかどうかで記憶がないな…。
早いとこ外行って、サッカーしないと。
「その、脱走計画の結果は、覚えているか?」
「…いや、でも、抜け出すことは出来てないだろ?」
「それより、酷かった。……俺も、爺やにさっき聞いて、思い出したんだ」
「……何が起きたんだ…?」
いつも見る神童とは違う雰囲気。
悲しそうな顔。
神童は、話し出した。
後書き
…こんなシリアスになる予定じゃありませんでした…。
次は神童君が語るくらいなので、それなりに短いんじゃないでしょうか。
ページ上へ戻る