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女の子らしさ

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4部分:第四章


第四章

「動かなくてどうするのよ」
「そう言って人一倍動くのがね」
「御前らしいよな」
「私らしい?」
 その言葉に反応する茉莉也だった。
「私らしいっていうの」
「っていうかよ。動かないとよ」
「見ていて怖いよな」
「時任が風邪なんかひいてたらそれだけでな」
「一回それだけで地震になったしな」
 これは偶然重なっただけであるが今だに言われていることなのだ。
「だからよ。動かなかったり元気のない御前なんてな」
「時任じゃねえよ」
「別の生き物だよ」
 彼等はこう言うのであった。
「そんなのな」
「全くだよ」
「別の生き物って」
 この言葉には当の茉莉也も微妙な顔になった。そうして目をしばたかせて言うのだった。
「そうなの?」
「だってな。時任っていったらな」
「もう元気でいつもハツラツだからな」
「本当に男の子みたいにな」
 こう彼女自身に対して話すのであった。
「それが元気ないっていったらな」
「何なんだよ」
「そうなんだ」
 言われてみてはじめてわかったことだった。
「いつも動いてこそ私なの」
「だから風邪とかひくなよ」
「今度は大火事が起こるかも知れないからな」
 天災が起こるとまで言われる始末だった。だがこのことは彼女の心に残った。それで帰り道にまた優に対して話すのであった。
「その通りね」
「男の子達の言う通りなんですか」
「私もそう思うわ」
 にこりと笑って夕暮れの中に彼女に顔を向ける優であった。
「やっぱりね。茉莉也はね」
「明るく元気よくですか」
「それに動き回ってね」
 それだというのであった。
「実際に茉莉也っていつも部活で熱心に動き回ってるじゃない」
「はあ」
「練習だけじゃなくてお掃除とかも」
 頑張っているというのである。優はそこまで見ているのだった。
「それがいいのよ。とてもね」
「いいんですか。それで」
「悪くない筈ないじゃない。バスケにしてもお掃除にしても動いてこそじゃない」
「それはそうですけれど」
「だからいいのよ」
 また茉莉也に対して話した。
「それでね。それで」
 さらに言葉を続けてきた優であった。
「そこから考えてみたら」
「そこからですか」
「そうよ。そこからね」
 自分のすぐ後ろにいる茉莉也を振り向くようにして見ている。そうして赤い夕暮れの世界で彼女に対して声をかけているのである。
「そこからよ。考えてみて」
「そうなんですか」
「そうすればわかるから」
 また言うのであった。
「ゆっくりと考えてね」
「けれど先輩」
 しかしここで茉莉也は優に対して言うのであった。
「女らしくですよね」
「それはそうよ」
 このことは否定しない優であった。
「茉莉也がそれを心掛けているのはいいことよ」
「けれど明るく元気よくって」
 彼女自身は明るく元気がいいのとその女らしくというものに全く違うものを感じてしまっていた。はっきりと言ってしまえば対称的なものをである。
 
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