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フェイト・イミテーション ~異世界に集う英雄たち~

作者:零水
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ゼロの使い魔編
三章 王女からの依頼
  架の休日<前編>

 
前書き
士「ん?何だこれ」
セ「シロウッ!どうやらこれからは私たちがこの小説の前説をやることになったようです!」
士「セイバー!?何で急に!?」
セ「どうやら作者が某アプリのぐだぐだ的イベントに触発されたようです。」
士「いいのか零水ぃぃぃ!!」
セ「今回はちょっとしたほのぼの系でいくみたいですよ。」
士「前回までは戦闘だ何だでごちゃごちゃしてたからな。ここらで一息というやつか。」
セ「あ、でも予想以上に書きすぎた所為で二つに分けるそうです。」
士「相変わらず計画性がないなあの作者は!」
セ「二か月ぶり乙!三章スタートです!」


  ※ただやりたくなっただけです。苦情がきたら次からやめます・・・。orz 

 


 ――――――――


 一面真っ白な空間
 右も左も、上も下も、前も後ろも、一体どこまであるのか分からない


 ――――――――


 “誰か、いるのか?”


 何もない空間から何か聞こえる


 ――――――――


 “何が言いたい?”


 問いかけてみるも返ってこない。
 その内意識がぼやけてきてしまう


 ――――――――

 
 “あ、待って――――”








「・・・・はっ!?」

 ガバッとコルベールは跳ね起きた。
 どうやら実験室に籠って夜更かししている内に机に突っ伏して寝てしまったらしい。
 窓の向こうではもう朝日が昇ろうとしていた。

「夢・・・でしたか・・・。」

 目をこすりながらぼやく。あの時聞こえたものは何かこちらに語り掛けていたような気もしたが。
 でもまあ所詮夢だったというわけだ。


 ガチャ


「やっぱりここにいたか、コルベール。」
「!ああヴァロナ君、おはようございます。」

 ノックもせず入ってきたのはもうそこそこ長い付き合いにもなる彼の使い魔。サーヴァントという、異世界の英霊という存在で暗殺を司るアサシンのクラスにいる男だ。ここで暮らすにあたり、仮の名として『ヴァロナ・テクートリ』と名乗っている。
 そんな彼は「またこんなトコで寝やがって・・・」とブツブツ言っている。

「しかしヴァロナ君、親しき中にも礼儀あり、ですぞ。ノックくらいはして下さいね。」

 ん~、と肩をグリグリ回しながら一応忠告しておいた。まあ彼がこれで素直を聞いた試しがあまりないのだが。

「・・・・・。」

 一方忠告されたヴァロナはジト~とコルベールを睨んでいる。そして徐に自分の右頬、続いて口元を指さした。

「ん?」
「本のあと、よだれ。」
「え、あ・・・。」
「説得力がまるでないな・・・。」

 ため息まじりに言われてしまった。確かにこれでは教師として台無しである。
 ゴシゴシとさすっているとこちらに目を向けずにヴァロナが尋ねてきた。

「ところで・・・何かあったか?」
「え?」
「いや、どこかぼーっとしているようだったからな。」

 軽口ばかり叩いているが、しっかりと相手のことは見ている。出会った当初にはなかった彼なりのいいところがここ数年で見えてきた。それだけでも、少し嬉しく感じてしまう。

「何笑ってる、気色悪い。」
「いえ、別に何もありませんよ。」
「ふん、そうか。ならさっさと仕度でもしろ、あんまり時間に余裕がねぇぞ。」

 そう言ってヴァロナは出て行った。
 とりあえず机の上を片付けながらさっき彼に言われたことを考えてみる。

「やはり、さっきの夢の所為、でしょうか・・・。」

 たかだか夢なのだから気にすることはないのだが、何故か胸の淵に引っかかっているのをコルベールは感じていた。

「何も・・・気にすることはない、ですよね。」

 窓の外を見やりながら呟いた。



 そんな彼の気持ちを他所に今日も一日が始まる。








 アルビオンの件から数日が経った。任務に行った面々も落ち着きを取り戻し、普段通りの学院生活に戻っていった。
 そんな中、架は――――

「暇を与える?」
「ええ、そうよ。」

 主から休暇を貰っていた。



「え、え~とルイズ?それはどういうことで・・・」
「ほ、ほら!貴方ってこの間アルビオンで、その・・・よ、よく働いてくれたじゃない!?そお礼・・・じゃなくて!ご褒美をまだあげていないと思ったのよ!」
「はあ・・・?」

 何だか煮え切らない答えに架の返事も曖昧なものとなる。
 そもそも架がやったことと言えば主であるルイズを守るためにワルドやランサーと戦ったくらいであり、本人からすれば「使い魔としてやって当然のこと」という認識である。
 故に、その事に対して礼を言われるのは兎も角、褒美まで貰う道理はないはずである。

「第一なルイズ。休みなんて貰ったところで俺には別段やることは・・・」
「うるさいうるさいうるさい!ご主人様があげるって言ってんだからありがたく貰って起きなさーい!!」

 そんな訳で、架は半ば強引な形で休日を得たのであった。








 午後の男子寮寮長室。
 この部屋の主であるヴァロナは一人紅茶の入ったカップを片手に黙考していた。
 紅茶は勿論、彼が淹れたものだった。元々雑な性格の彼がやったため、「少し味が薄かったか?」と感じたが結局無視した。料理等にも関心がない彼にとってすれば、今この一時の口の寂しさを紛らわせればどうでも良かった。

 彼が考えていること、それは架が先日アルビオンで得た情報についてだった。

「残るは一人、か・・・」

 既に限界が確認されているのはセイバー、ランサー、そして自身のアサシンのクラス。一つのクラスを残した状態ということは、残り三つのクラスがこの世界にいるということになる。

「情報集めはやってることはやってるんだがな・・・」

 ヴァロナがこの世界にきて十数年、恐らく自分より先に来たサーヴァントがいるだろうと、情報を集めることは早々に着手した。が、それはかなり難航している。
 何せ、舞台はハルケギニア大陸全土にまで渡っている。表の世界で名をあげているならばいざしらず、この広さでサーヴァント探し当てろというにはいくら隠密行動を得意とする彼でさえ至難の技といえよう。
 少なくとも今分かっていることは、このトリステインにいるサーヴァントは恐らく自分たるアサシンとセイバーの二人だけということぐらいだ。

「残ったクラスはアーチャー、ライダー、キャスター、バーサーカー・・・。召喚されていないのが後一人として、さてそれが誰なのやら・・・」

 セイバーといえば、あれも相当変わっているな。と、思考を切り替えた。

 影沢架
 英霊でもなくしかも生きた状況でサーヴァントとして召喚された一見(・・)普通の少年。
 だがその実、彼を『普通』と呼ぶには異常であった。

 彼は戦い慣れ過ぎている。

 その身のこなし、剣筋、状況判断、サーヴァントになったことで得た身体強化を差し引いても一朝一夕でどうこうなるレベルではない。
 現にランサーと打ち合って生還している。まあ向こうも本気ではなかっただろうが。
 さり気なく聞き出してみようか、と思ったが止めた。逆に詮索されるのを恐れたのであった。自分の過去なんてマスターであるコルベールにすら話してないのだから。

「いずれ時が来て向こうから話すのを待つしかないか。っと」

 噂をすればなんとやら、近づいてくる気配にヴァロナはドアの方へ目を向ける。

 コンコン

 ノックの後部屋に入ってきたのは先ほど考えていた人物に最も関係する人だった。

「珍しいな、お前が一人なんて。しかも萎れた顔なんぞしおって。」
「・・・ちょっと、相談いいかしら。」

 入ってきたのはルイズだった。






「で、何があったんだよ?」
「それがね・・・」

 適当な椅子に座らせ、ヴァロナが問うた。
 
 因みに、表向きの二人の関係は「教師の助手と生徒」であるため、普段は互いに敬語で話しているが、周りに誰もいない時はこうして普通の口調で話す。「気軽に話せる奴は一人でも多い方がいい」というヴァロナ自身の希望だった。
 
 今、二人の手元にはヴァロナが淹れ直した紅茶の入ったカップがある。彼が雑に淹れ直した紅茶はやはりお世辞にも美味いとは言えなかったが、それでも心を落ち着かせるためルイズは上品に飲んだ。
 ふぅ、と一息ついてからルイズは事情を話し始める。

「カケルのことなんだけど・・・。」
「何だ、また喧嘩でもしたのか。」
「そうじゃないわ。そうじゃないんだけど・・・。」

 煮え切らない答えにヴァロナはルイズに目を向ける。こんなに落ち込んだ彼女を見たのは、彼女がまだ一人だった時クラスの皆にバカにされている時以来だった。
 と、ルイズが年相応の乙女だということに気付き、さらに架がらみとなるともしかしてと思い一応聞いてみた。

「お前、アイツに惚れたか?」
「!!??」

 椅子の上で飛び跳ねそうな勢いでビクッとなった。

「・・・正直分からないのよ。さっきから何だかずっとモヤモヤした気持ちだし。」
「さっき?」
「あのね、授業の合間でのことなんだけど・・・」






~~~~~~~~~~~~




「ねえねえ見た見た?」
「え~何~?」
「それがね・・・」
「え?ホントー!?」

「・・・?」

 午前の授業の合間。たまたま通りかかった時、数人の女子が話し込んでた。年頃の学生なら何ら珍しくもない光景。当然私も最初は気にも留めなかったが、ふとピタリと足を止めた。会話の中に、自分の名前が聞こえてきたから。

「ねえ、何の話?」
「わっ、る、ルイズ!?」

 会話の中に無理やり割り込むと、皆当人が近くにいたことに気付かなかったのか、突然オロオロし始めた。
 またいつもの陰口か、とため息まじりに忠告しておく。

「人の悪口を言うなら、周りに気を付けた方がいいわよ。」
「ち、違う違う!そもそも悪口でもないんだけど、貴女じゃなくて貴女の使い魔の話よ!」
「え、カケル?」

 突然出てきた名前にキョトンとしてしまう。

「さっき廊下を歩いていたらね、庭の方で剣の素振りをしてる彼を見かけてね。」
「(もうカケルったら、休めって言ったのにそんなことして・・・)」
「ホントカッコ良かった~!」
「・・・へ?」

 生真面目な彼に呆れていたから反応が遅れた。

「汗を流しながら真摯に剣を振る彼!思わず立ち止って見とれちゃった~!」
「キャー!」
「いいな~、教えてくれたっていいのにー。」
「・・・・・。」

 な、何この感じは。両手を赤く染まった頬に当ててクネクネと体を動かしている。
 その様子はまるで・・・

「あらルイズ、知らなかったの?」
「キュ、キュルケ!?」

 呆然としていると、私の胸の内を読み取ったのかキュルケがそう言いながら後ろから声をかけてきた。その横にはタバサもいる。

「ダーリンってばそこそこ女子にモテてるのよ。」
「なっ!?」
「そうそう!」
「だって使い魔とはいえ男よ!それも剣を携えた騎士!」
「ルックスもなかなかだしね~!」
「何といっても、あの時のあの誓いの言葉!堪らないわ~~!!」

 『あの時の誓いの言葉』というのは間違いなく以前フリッグの舞踏会での架の言う誓約のことだろう。あの時は大衆の面前でやったがやっぱり皆聞いていたのね。

「『我が運命は貴女と共に在る』だなんて!」
「言われてみた~い!」
「「「キャーー!」」」

 何でそこまで覚えているのよ!?というかいつの間にか女子の集まりが増えてるし!
 というかキュルケ!どさくさに紛れて「ダーリンは私のモノ」って言わないで!


「(ぐ、ぐぬぬぬぬぬ~~~~~~!!)」






~~~~~~~~~~~~




「・・・というわけなのよ。」
「いや全然分からん。」

 ヴァロナは真顔で首を横に振った。
 
「なんでよ!何が分からないってのよ!?」
「いや分かったことと言えば架が実はモテてたってことだけなんだが?」
「そこよそこ!!」
「はあ?」

 ヴァロナはまた首を傾げる。
 実際はルイズの言いたいことは何となくだが理解している。が、それをなぜ自分に相談するのか分からなかった。

「仕方ないじゃない。その、こんな気持ちになるの初めてなんだから。他の女子に相談するわけにもいかないし、そのほかによく話せる相手って言ったらアンタくらいなのよ。よく他の生徒の話も聞いてるみたいだし。」
「・・・・・。」

 可愛らしくうなだれるルイズ。それをヴァロナはやや冷めた目で見ていた。
 彼女の言う通り、生徒からの人気が高い方にある彼はよく生徒から相談ごとが持ち込まれる。その中でも、特に女子は今のルイズのような態度になることが多い。故にルイズの言うこんな気持ちが所謂『恋心』と『嫉妬』から来るものだとは容易に理解できた。
 だがヴァロナからしたらそんなくだらない(・・・・・)感情は頭では分かっても精神的(こころ)では分からなかった。何せ生前でさえ、そんなものは無縁だったのだから。
 なので正直、この手の話にはウンザリしてしまっていた。そんな思いが顔に出ていたのか、それに気づいたルイズが噛みついてきた。

「何よ!自分はミス・ロングビルとイチャイチャしていたクセに!」
「それに関しては完全にデマなんだがな・・・。」

 ヴァロナは深いため息をつく。
 ロングビルがまだ学院にいたころ、この二人が付き合っているという噂が流れていたのだ。ただし、両者は否定している。(片方は赤面で慌てながら、もう片方は淡々と)
 
とにかく、と切り替えるようにヴァロナが諭すように言った。

「俺じゃあ、的確な意見は出来ん。というか、そういうのは他人の意見はあまりアテにならん。自分で考えて、答えを見つけろ。」
「どうして?」
「他でもないお前だけの問題だからだ。自分の気持ちと向き合ってみろ。どれだけ時間がかかってもいい、じっくりとな。」
「そう、ね。」

 言ってからヴァロナは後悔した。聖杯戦争が始まればそれどころではなくなるのに時間がある、と答えてしまったことに。
 そうあって欲しいのかと、この緩い時間に馴染んでしまっている自分を思うとつくづく自分が嫌になる。
 だがルイズはある程度満足したようだった。

「ありがとうヴァロナ、ちょっと焦ってたみたい。」
「全くだ。こんな話は金輪際止めてくれ。」

 しかめっ面でしっしと追い払うように手を振るヴァロナであったが、少しいたずら心を働かせると退室しようとしたルイズを呼び止めた。

「自分の気持ちを確かめるんだったらな、いい方法があるぞ。」
「え、何?」
「そうだな・・・。」











「あ、出てきたわ。」

 男子寮から出てきたルイズは離れた木陰で見ていたのはキュルケとタバサである。授業が終わるや否や物凄い勢いで教室を出ていく彼女が気になってこっそり後をつけてきたのだった。

「どうせ昼間のことだろうと思ったんだけど、ヴァロナさんに相談するなんてねぇ、意外だわ。タバサはどう思う?」
「知らない。」

 本を読んだままのタバサの対応はそっけない。が、キュルケも気にした様子はない。
 そもそも、今まであの二人は挨拶程度の接点しかなかったはずである。しかしここ最近ではコルベールや架を含めてよく会って話しているのは目撃されている。
 そもそもあのヴァロナという人物はキュルケの目から見ても掴みどころのなかった。『男たらし』の異名を(密かに)つけられている彼女は、ビジュアル自体は決して悪くないヴァロナには当然アタックしたことがあった。
 しかし、彼は一見愛想が良い様に見えてその実周囲にはある程度の壁を作っていた。まるで『それ以上は近づくな』と警告するみたいに。
 その結果悉くを躱されてしまい、ついには彼女も諦めたのであった。

「(って、今は問題はそっちじゃなくて!)」

 頭をブンブン振って思考を切り替える。そうだった、今はルイズのことだった。
 ルイズはヴァロナに語っていなかったが、実はあの時キュルケはルイズにカケルのことをどう思っているのか尋ねたのであった。
 で、返ってきた答えがこれ。

『はあっ!?べ、べべべべ別にな、何にも思ってないわよ!?ア、アイツはそう!唯の使い魔!それ以外なんでもな、ないんだから!!』

 ・・・何というか、見事なまでのツンデレっぷりである。本人にまだ自覚がないようなのが、キュルケにとっての幸いだが。
 
 ともあれ、ルイズに召喚されたばかりの時に比べ周りの架への印象はかなり良くなっている。
 勿論、皆が皆良いように思っているわけではない。

―――平民のクセに
―――使い魔のクセに
―――男のクセに

 と、彼のことを快く思っていない連中も少なからずいる。尤も、架自身はそんな奴らのことなど気にしている様子は全くないのであったが。

 閑話休題

 とにかく、キュルケにとって今の状態は油断ならないものだ。
 彼と最も近い関係のルイズはまだ自身の気持ちに気が付いていないが、それも時間の問題である。

「これはちょっと強引な手に出るしかないようね。覚悟しててよね、ダーリンんンンンン・・・!!」

 怪しい目をギラつかせながらキュルケは静かにされど激しく闘志を燃やすのであった。


              後半に続く
 
 

 
後書き
前半後半で分けたら前半部分に架がほとんど出てないっていう・・・。
 後半は彼中心なので大丈夫ですよ(笑) 
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