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真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌

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幽州編
  第18話 并州からの旅立ち


晋陽の街でのライブでの翌日、バサラは晋陽の街の城門の前に立っていた。
その傍には赤兎が居る。
そしてバサラの目の前には、董卓こと月、賈詡、華雄、呂布こと恋が並んでいた。
「本当に行くのですか?まだ居てくれてもいいんですよ?」
「月もこう言ってるんだし、まだ居てもいいんじゃない?わ、私はどうでもいいけど、月があんたに居て欲しいからこう言ってるんであって、べ、別に私自身はあんたなんてどうでもいいんだからね!!本当なんだから!!」
なにやら慌てたり、顔が赤くなったりしながら何かを叫ぶ賈詡。
それを微笑みながら見守る女性陣と住民、警邏中の兵や門番の兵たち。
特に兵たちには、普段はきつい賈詡の新しい一面が見られ、
(ツンデレ軍師様、かわいいいい!!!)
などと思われる程である。
「しかし、本当に行くのか?私もお前の歌の虜になってしまったというのに。」
華雄がバサラに名残惜しそうに言う。
それにバサラは
「ああ。他のところも見てみてえからな。それに、新曲も完成したからな。この機会に旅に出るのがいいと思ったからな。」
そう返す。
「・・・新曲?」
首を傾げながら聞いたのは恋である。
「ああ。そいつが昨日完成したからな。聴いてくか?」
「・・・うん。」
「聴かせてください。」
「是非、聴かせてくれ。」
「ふ、ふん。ど、どうしてもって言うなら、聴いてあげないこともないわよ。」
女性陣から新曲のリクエストがくる。
住民たちもバサラの歌を聴く最後の機会であり、それが新曲ときたからには是非とも聴きたい。
そう声がする。
兵たちも同じようである。
バサラは
「よっしゃあ!なら聴いていけ!出来たてほやほやの新曲だあ!行くぜ!」
そう答える。
そしてバサラの歌が響く。

この男が新しく作ったという歌を聴いていた。
そして、この歌を聴いて、ものすごい衝撃を受けた。
初めて会った時、赤兎に歌った時、晋陽の街中を巻き込んで歌った時、それらで歌った歌をこの歌ほど衝撃を受けたことは無い。
そう言ってもいい。
この歌は誰かを探しているところから始まり、その途中でさまざまな困難が待ち受けている。
そして世界の大きさに時間が止まっているかのような錯覚を覚えるほどの絶望を味わう。
だが、それでも、それでも立ち上がれ。
小さなわずかな希望のかけらを頼りに。
そして、探していた誰かをその腕で抱きしめる。
要約するとこんな歌だ。
だが、この歌は荒れた今の世の人間には眩しすぎる。
現にこの歌を聴いていた者は最初はただただ聴いていたが、曲調が変わり歌にも力が込められると聴いていた者たちの表情が変わる。
ある者は湧き上がる感情を必死で抑え込み、またある者は感動のあまり泣き出している。
華雄将軍や呂布なんかも湧き上がる何かを抑え込むのに必死になりながらもこの男の歌を目を輝かせて聴いている。
そして月や僕も・・・
(この男になら、いいかな・・・)



そして、新曲を歌い終わり、バサラは
「じゃあ、行くぜ。またな!」
そう言い残し、晋陽の街を赤兎と共に去ろうとする。
そこへ
「待って!」
「ん?」
呼び止められ、バサラが振り向く。
どうやら呼び止めたのは賈詡のようだ。
どうしたというのか。
「・・・詠よ。」
「あん?」
「もう!その、あんたに私の真名の詠を預けるわ!こ、これはその、せ、赤兎のこととかを解決したからあんたのことを認めてあげたのよ!だ、だから、ありがたく預かりなさい!」
そう顔を赤らめながらバサラに指を指しながら言う賈詡。
その姿は普段の様子とはかけ離れたものである。
思わず女性陣や住民、兵たちがみな
『かわいい・・・』
そう呟く程であった。
当のバサラはというと
「いいぜ。おれは真名は無えから好きに呼びな。」
そう言いながら前を向き再び歩き出す。

「行っちゃったね・・・」
そう呟く月。
「ええ。まったく清々するわ。」
そう返すのは賈詡こと詠。
「ふふ。そうは言っても顔は正直だよ?詠ちゃん、なんだか残念そうだよ?」
「なっ?!そ、そんなことあるわけ無いじゃない!?」
「なら、なんで真名を交換したの?居なくなってもいい人に真名を預けることなんて普通しないよ?」
「そ、それは、その・・・」
友人に追求され、言い淀む詠。
月の追求はまだ続きそうである。
その傍で、
「真名を預けられていいなあ・・・」
そう呟くのは華雄である。
彼女は空を遠い物を見るような目で見上げながら、
「私なんて、華雄なのに、華葉なんて名前で覚えられてたのに・・・」
どうやらバサラは華雄の名前を間違えて覚えていたようである。
「・・・ご飯」
そして恋は、街の定食屋に入り、食事をしようとするなど、自由奔放であった・・・






そして、バサラが晋陽の街を出て1月半が経った。
バサラは并州の北を目指していた。
その途中で寄った村や町で歌ったりしながら旅をしていた。
そんな中、今日も立ち寄った村を歩いていた。
そこで村人に話しかける。
「なあ、ちょっといいかい?」
「ん?あたしになんか用かい?」
「おれは今旅をしてるんだが、ここはどこなんだ?」
「あんた、ここは幽州の啄郡だよ。これ以上北に行くのは危ないから辞めといた方がいいよお。」
「ん?どうしてだよ?」
「それはねえ、ここからさらに北に行くと、北平ってところに着くんだけど、そのすぐ北側には、五胡っていう恐ろしいやつらが居るんだよお。
「五胡お?」
「あんた、五胡を知らないのかい?五胡ってのはねえ、恐ろしく馬の扱いに長けたやつらでねえ、この国の軍隊だって守るのが精一杯なんだから。
今は公孫瓚ってのが太守について白馬将軍なんて恐れられてるって話だけどね。
だから悪いことは言わないから、辞めときな。」
「ふうん。」
そんな会話をバサラが村人としていたが、なにやら遠くから声が聞こえてくる。
それが段々と近づいてくると次第に何を言っているか分かるようになってきた。
「どけどけ〜!!鈴々山賊団のお通りなのだ〜!!」
『いえ〜』
そう叫びながら通るのは大きな猪に跨りながら駆ける赤髪の小さな女の子と周りにいるこれまた小さな子供たち。
それを見たバサラは
「・・・なんだ、ありゃあ?」
そう、小さく呟きながら首を傾げていた。
 
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