憎しみは消え
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第二章
ドイツ軍の将兵達は彼等を一瞥もしなかった。ニコルはその彼等を見て自分達が勝ったと思ってだ。こう言ったのだった。
「あいつ等がいなくなったな」
「そうだな、憎い奴等がな」
「あいつ等は収容所で精々苦しめ」
「うんと辛い目に遭わせてやれ」
自分達が収容所を管理している訳でもないがこう言ってだ、そしてだった。
仲間達のうちの一人がだ、こう言ったのだった。
「おい、じゃあな」
「ああ、わかってるさ」
ニコルがすぐに彼に応えた。
「ナチスに尻尾振ってた奴等をだな」
「そうだよ、あいつ等を裁いてやろうぜ」
「そうだな、あいつ等を片っ端から捕まえてな」
「裁いてやろうぜ」
仲間達も口々に言う。
「制裁だ!」
「豚にへつらってた馬鹿共を裁け!」
「一匹も逃がすな!」
「全部捕まえて制裁を浴びせろ!」
「どんどん捕まえるんだ!」
こう叫びながらだ、彼等は。
ドイツに協力していた者達、ビジー政権の者達は言うまでもなくだった。民兵や密告者達にだった。
娼婦達も捕まえた、ニコル達が襲い掛かったのは彼女達だった。
仲間達全員でだ、娼婦達を殴り蹴り罵った。
「売国奴が!」
「ナチスの豚に抱かれたアバズレが!」
「豚に抱かれて嬉しかったか!」
「貰った金で贅沢してただろ!」
散々罵りだ、そして。
ニコルは自らだ、鋏とバリカンを出して仲間達に言った。
「おい、これでな」
「ああ、こいつ等の頭をな」
「刈ってだよな」
「丸刈りにしてやれ」
「そして服なんかひっぺがしちまえ」
「それで街中を歩かせてやれ」
そうして晒しものにしろというのだ。
「身体にはハーケンクロイツ書いてやるか」
「ああ、ナチスに抱かれた豚だからな」
「豚には容赦するな」
「頭も丸刈りにしてやってだ」
「街を歩かせてやれ」
「これまでの罪を俺達が裁いてやるんだ」
こう言ってだ、散々殴り蹴り罵った娼婦達にだった。
彼等はさらに侮辱を与えた、髪の毛を丸刈りにして。
服は剥がし身体には鉤十字を書いてだった。実際にパリを歩かせて街の人々に対して叫んだのだった。
「この連中がナチスの協力者だ!」
「ナチスの豚だぞ!」
「豚に抱かれた奴等だ!」
「豚の行進だ!」
こう口々に叫ぶのだった、そうして市民達に注目させるのだった。
市民達も彼女達を罵る、その有様を見てだった。ニコルは自分達の復讐が適ったことに満足していた。そのうえで。
仲間達とだ、連合軍から貰った酒で乾杯しつつ言うのだった。
「正義だよな」
「俺達のやっていることはな」
「豚を裁いているんだ」
「国の裏切り者をな」
「売国奴をな」
その娼婦達をというのだ。
「裁いているんだからな」
「俺達は正義だ」
「これからも裏切り者をどんどん炙り出してだ」
「制裁を加えてやれ」
「ビジー政府の連中も民兵の奴等もだ」
「あの娼婦共は特にだ」
「豚に抱かれた屑を一匹残らず探し出してやる」
「そして制裁を与えてやる」
こう言ってだ、実際に彼等はドイツに協力していた者達特に娼婦達を摘発しては髪の毛を剃り服を剥ぎ取り身体に鉤十字を書きパリの中を引き回した。
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