色気がない
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第二章
「最近夜はね」
「全然なのね」
「そうなのよ」
こう電話の向こうの彼女に答えた。
「ご無沙汰」
「やっぱりそうなのね」
「とはいってもね」
「いってもって?」
「浮気は嫌いだから」
夫の大助と同じことをだ、美紀も言った。
「それは論外よ」
「出会い系とかは」
「そんなのしてもね」
「後がね」
「離婚訴訟とか親権とかね」
「泥沼になるからね」
「そんなの絶対に嫌よ」
美紀ははっきりと言い切った。
「私そんな馬鹿な話お断りよ」
「そうよね、けれどね」
「ええ、はっきり言ってね」
夜はというと。
「もうさっぱりよ」
「そうよね」
「私が誘ってきても」
「旦那が乗ってくれないのね」
「その理由はわかったわ」
「そう、あんたにね」
友人は電話の向こうから美紀に言った。
「色気がないのよ」
「それも全然」
「そう言ってたらしいのよ、あんたの旦那さんがね」
「そうなのね」
「それでも浮気はしないっていうから」
「そのことは安心していいわね」
「そうよ、けれど安心しても」
最悪の事態はない、だがというのだ。
「あんたに色気がないせいで夜の生活がないのはね」
「変わらないわね」
「ええ、だからあんたこのままだとね」
友人は咎める様にして美紀に言った。
「ずっと夜は何もないままよ」
「そうなるのね」
「それじゃあ夫婦じゃないでしょ」
「ええ、やっぱり夫婦はね」
「昼も夜もだからね」
どちらの生活もというのだ。
「あってこそだから」
「そうよね」
「じゃあ何とかしなさい、つまりね」
「色気をっていうのね」
「それを出してみたら?私から見てもあんたはね」
「色気がないのね」
「化粧っ気はゼロ、いつもくたびれた服」
ジャージやジーンズにエプロンで、というのだ。
「そうした格好じゃね」
「色気も何もなのね」
「何処があるのよ」
「言われてみれば」
「確かに結婚して子供が出来たら」
そして主婦の生活をしていればだ。
「生活臭ばかり出て色気はなくなるわ、けれど今のあんたは」
「あんまりにもなのね」
「色気がなさ過ぎるわよ」
「ううん、そうなのね」
「そう、だから」
それで、というのだ。
「努力しなさい」
「夜をどうにかしたいなら」
「わかったわね」
こう美紀に言うのだった、そして。
美紀もだ、その言葉を受けてだった。
色々と勉強をはじめた、そのうえで同じ年代であだっぽい外見で結婚していないが遊びの激しい友人に直接話を聞いた。
するとだ、友人は美紀に言った。
「まずメイクよ」
「お化粧ね」
「そう、それでまずはお顔を飾って」
友人は美紀に言う。
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