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死んだ目

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第八章

「そうした考えもね」
「そうはいかない」
「そういうものだね」
「実際のところは」
「経済にしても」
「経済学について専門でなくてもね」
 それでもと言うグラッグスだった。
「それ位はわかるつもりだよ」
「そう、これはね」
「人の世を知っているかどうかだね」
「経済以前の問題だね」
「それはもう」
「そうだね、とにかくね」
 また言ったグラッグスだった。
「計画経済も違う、そして共産主義を絶対としているから」
「それに意を唱えようとしたら」
「ソ連で言うと政府、共産党にそうしたら」
「アメリカとは違ってね」
「異端審問みたいなことになるね」
「そう、だから秘密警察があるんだ」
 その異端審問官がいるというのだ、ソ連においては。
「そして彼等に目をつけられたら最後だよ」
「令状なしの逮捕、裁判も碌にしないで有罪」
「後は強制収容所送り」
「そうなるって言われているね」
「それが現実だったんだ」
 グラッグスは沈んだ目で言った。
「ソ連ではね」
「ナチスと変わらないね、それじゃあ」
「あの国もファシズムだってことだね」
「その実態は」
「情け容赦のない弾圧をする国だったんだね」
「そしてヒトラーもいる」
 苦々しい顔でだ、グラッグスはこうも言った。
「ソ連にはね」
「それがスターリンだね」
「あの書記長だね」
「偉大な指導者というけれど」
「その偉大な指導者は」
「独裁者だよ」
 まさにそれだというのだ。
「ヒトラーと変わらないね」
「それがスターリンでありソ連だね」
「そして共産主義だね」
「実態は楽園じゃなかった」
「人を幸せにも平和にもしない」
「平等でもないんだね」
「僕はそれが全くわかっていなかった」 
 まただった、グラッグスは後悔の言葉を出した。
「もう共産主義は信じないよ」
「ではこれからどうするんだい?」
「共産主義を信じないというのなら」
「一体どうするつもりだい?」
「学者ではあり続けるんだろう?」
「学者ではあるよ、ただね」
 ここでだ、彼は友人達にこう言った。
「学びなおすよ、あらためてね」
「政治をだね」
「そして世の中を」
「そうするよ、それから答えを出すよ」
 こう答えてだ、彼はあらためて政治学を学びなおし他の学問の書も読んでそれこそ一から学び直したのだった。 
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