指切りげんまん
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第三章
「あの人は」
「わかったわ、じゃあね」
十和子は良美のその言葉に頷いて答えた。
「私竹内先輩には近寄らないから」
「そうした方がいいわよ」
こう注意してだ、十和子は実際にその先輩への告白は止めた。そして。
今度は良美がだ、十和子に話した。
「最近お金が足りないのよね」
「そうなの」
「何かと物入りで。それでアルバイト考えてるけれど」
「駅前のマジックはどう?」
すぐにだ、十和子は良美にアルバイト先を紹介した。
「あそこ今アルバイトのウェイトレスさん募集してるわよ」
「あっ、そうなの」
「最近部活暇だしね」
「それもあって考えてたの」
「じゃあ丁渡いいわね」
「駅前のマジックね」
良美はあらためてだ、十和子にその店のことを尋ねた。
「あそこね」
「そう、ウェイトレスさん募集中よ」
「わかったわ、それじゃあね」
「すぐにお店に行くのね」
「今日にでもね。行ってみるわ」
こうして実際にだ、良美はその店に行って詳しい話を聞いてだった。書類も出して無事にアルバイト先を確保した。
二人の仲は円満だった、だが。
不意にだ、周りからだった。二人についてよからぬ噂が起こった。
「えっ、私達が!?」
「喧嘩したって?」
「彼氏の取り合い?」
「それで」
「そう聞いたわよ」
二人と同じ美術部の娘が二人に対して話した。
「私もね」
「彼氏ってそもそも」
「私達どっちもそうした相手いないわよ」
驚いた顔でだ、二人は答えた。
「それで取り合いって」
「そんなのある筈ないじゃない」
「ましてや私達が喧嘩って」
「余計にね」
ないというのだ。
「何処でそんなお話が出たかわからないけれど」
「そんなことないわよ」
「今だって普通にね」
「こうして一緒にいるじゃない」
「だからね」
「それはないわよ」
絶対にというのだ、二人は。
しかしだ、この噂は。
何故か収まることはなく広まっていった、それで二人それぞれの噂もそれこそあることないことといった感じでどんどん出ていた。
それは全て悪い噂でだ、二人も戸惑っていた。
「これってね」
「おかしいわよね」
「何でこんなことになったの?」
「ちょっとわからないわよね」
二人は良美の家でだ、お茶を飲みながら難しい顔で話した。
「私達が男の子取り合ったとか」
「万引きしたとかね」
「あと援助交際?」
「色々噂出てるわね」
「若しかして」
ここでだ、十和子は。
怪訝な顔になってだ、良美の目を見て囁いた。
「前私サッカー部の竹内先輩好きだったじゃない」
「その竹内先輩を好きな三年の先輩ね」
「その人が噂広めてるのかしら」
「その可能性はあるわね」
良美も十和子のその言葉を否定しなかった。
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