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真田十勇士

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巻ノ二十四 鎌倉その十一

「だからな」
「殿にですか」
「申し上げらましたか」
「風魔の棟梁として」
「そうした、この風魔は北条家にお仕えしておる」
 男はこのことも言った。
「それもな」
「はい、それも代々」
「代々お仕えしています」
「早雲様の頃より」
「この風魔小太郎も何代かになる」
 男は自身の名も名乗った。
「わしは父上の跡を継いだばかりじゃがな」
「しかし棟梁もまた、です」
「生まれられた時から北条家にお仕えしています」
「その頃から」
「そう言われるとな」
 小太郎も否定せずに返す。
「そうなるな」
「そしてその立場からですな」
「殿に言われましたか」
「西国も、と」
「そうじゃ、今のうちに我等が行ってな」
 彼等風魔衆がというのだ。
「見ておいてはと。しかし殿がそう仰るのなら」
「我等は殿に従うのみ」
「それだけですな」
「そうじゃ、しかも徳川、上杉、伊達に関東の諸大名に加えじゃ」
 さらにというのだ。
「真田家にもな」
「我等が向かい」
「そして、ですな」
「調べそのうえで」
「殿に」
「お話しようぞ、真田家は小さいが」
 しかし、というのだ。
「真田幸村、そして十人の豪傑が入った」
「それだけにですな」
「侮れる状況ではなくなっている」
「主の真田昌幸殿、後継の信之殿も傑物ですし」
「人がいるからこそ」
「用心をして、ですな」
「そういうことじゃ、小さい家でも侮れぬ」
 人がいるからだというのだ。
「それ故にな」
「では」
 影の者達は風魔小太郎の言葉に頷いてだった、皆気配を消した。そして風魔も何処かへと姿を消して、だった。 
 小田原城の主の間にだ、高い鼻と切れ長の目、それに口髭を生やした白い服の男がいたがだ。その男に何処からか言って来た。
「殿」
「小太郎か」
「はい、真田家のことですが」
「人を送ったか」
「先程」
 風魔は何処からか彼が仕えている北条氏政に答えた。
「そうしました」
「それは何よりじゃ」
「まだ忍はいますが」
「ならば伊達に送れ」
「伊達家にですか」
「うむ、あの家のことも気になる」 
 氏政はこう彼に言った。
「だからな」
「前にも申し上げましたが」
「羽柴家か」
「あの家には送りませぬか」
「いいであろう」
 氏政は何でもないといった声で答えた。 
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