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真田十勇士

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巻ノ二十四 鎌倉その九

「悪事をしておらぬのならな」
「ですか、では」
「動きは常に見ていても」
「今は、ですか」
「こちらは何もですか」
「手出ししませぬか」
「殿もよいと言っておられる」
 彼もというのだ。
「だからな」
「はい、ではです」
「我等はあの方々には何もしませぬ」
「ただ見ているだけで」
「それに徹します」
「そうせよ、わしも動かぬ」
 男もというのだ。
「ここでな、ただ」
「ただ?」
「ただといいますと」
「おそらくこの小田原にも来るな」
 男は腕を組んでこの読みも言った。
「その時に会いたい」
「真田幸村殿と」
「そうされますか」
「十人の家臣がいるというが」 
 その彼等のことも話すのだった。
「その者達も見たい」
「だからですか」
「十人ともですか」
「会いたい」
「左様ですか」
「そうも思う」
 こうも言うのだった。
「あくまで小田原に来た時じゃがな」
「二十もの鮫達を海の中で倒したといいますと」
「相当な猛者達なのは間違いないですな」
「そして真田家のご次男殿ですが」
「あの御仁は特に」
「智勇と文武を備えたな」
 男も言う。
「まだ元服して間もないがだ」
「相当な方ですな」
「間違いなく」
「そうじゃな、だからこそじゃ」
 幸村が傑物であるが故にというのだ。
「わしはあの方を見たい」
「では」
「あの御仁が小田原に来られた時に」
「その時にですな」
「こちらから来てもいいが」
 それでもというのだった。
「あちらから来るのならな」
「では、ですな」
「あの御仁達がこの小田原に来た時に」
「その時にですな」
「お会いしようぞ、しかし」
 会うには会ってもというのだ。
「この姿のままでは話さぬ」
「ですな、素性を明かすことはです」
「これも忍の務め」
「だからですな」
「ここは」
「うむ、化ける」
 その姿はというのだ。
「そうする」
「そうされますか」
「ではその様にされて」
「そして、ですな」
「あの御仁達を見ますか」
「その時が楽しみでもある」 
 是非にとだ、こう言ってだった。
 男は周囲にだ、こうしたことも言った。
「そしてじゃが」
「はい、あの御仁の家もですな」
「真田家も調べますか」
「徳川、上杉だけでなく」
「あの家も」
「うむ、殿が言っておられる」
 彼等が仕えているその者がというのだ。 
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