仲直り
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6部分:第六章
第六章
「全く。昨日ね」
「喧嘩のことか?」
「違うわよ。夢に見たのよ」
「夢かよ」
「あんたと言い争って仲直りして」
そうした夢だったというのだ。
「おかしな夢よね。全く」
「そうだな。俺もだよ」
彼もだとだ。隼は自分の夢のことを話した。
「御前と言い争う夢みたよ」
「あんたもなの」
「全く。不思議な話だよな」
隼は箸でハンバーグを切って口の中に入れながら述べる。姿勢は肘こそついていないがかなりくだけたものになっている。リラックスしてきているのは明らかだった。
「どうしたものだよ」
「不思議ね。お互いになんてね」
「そうだな。それにしてもな」
「ええ、ハンバーグにケチャップって」
「ハンバーグにマヨネーズもな」
二人でそれぞれ言う。そのことをだ。
そしてだ。それを食べてだった。彼等は仲直りを果たしてだ。そのハンバーグを食べるのだった。
そして日曜日デートをした。しかしだ。
その翌日の部活の朝練で隼は不機嫌な顔だった。その彼にだ。
仲間達はだ。こう尋ねたのである。
「仲直りしたんじゃないのか?」
「それで何で不機嫌な顔なんだ?」
「何があったんだよ」
「あいつ何なんだよ」
またしても不機嫌な顔で言う隼だった。
「全くな。ところてんに何だと思う?」
「ところてん?黒蜜だろ」
「それだろ」
仲間達はすぐに答える。それではないかとだ。彼等の通う八条学園は関西にある。だから言うのだった。
「それだよな」
「他に食い方あるか?」
「ないだろ」
「あいつ酢で食ってたんだよ」
こう言うのだった。
「デートでマクド行ってその帰りに甘味処入ったらな。それ頼んで美味そうに食ったんだよ」
「で、御前は黒蜜でか」
「それで喧嘩か」
「またやったんだな」
「あいつの婆ちゃんの実家が佐賀らしくてな」
「で、それでは」
「その佐賀の食い方で酢か」
仲間達は言う。
「何か違うな」
「そうだよな。かなりな」
「けれどそれでまたか」
「また喧嘩したんだな」
「絶対に違うだろ」
隼はそのところてんの食べ方を否定するのだった。
「だから言ってやったんだよ。今日の昼な」
「昼飯の時か」
「何するんだよ」
「あいつは黒蜜で、俺は酢で」
それぞれだというのだ。
「ところてん食ってみる。それで美味いかどうか確めようってな」
「じゃあ今回の喧嘩は昼までか」
「それで終わりか」
「馬鹿言え、ところてんに酢なんて美味い筈がないだろ」
隼はムキになってそれを否定する。
「それを確めてやるんだよ」
「やれやれ、またか」
「またこの流れか」
「じゃあ今日の昼のデザートはそれか」
「ところてんだな」
「美味い筈がないがな」
隼は何としてもだ。ところてんに酢という組み合わせは否定したかった。そして実際にそうしていた。
そのうえでだ。彼は言うのだった。
「向こうも向こうで黒蜜のところてんなんかまずいに決まってるって言ってるしな」
「まあ頑張れ」
「応援はしてやるさ」
こう返す仲間達だった。かくして後は同じ展開になるのだった。ハンバーグの時と同じく。
仲直り 完
2011・12・23
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