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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第1章:平穏にさよなら
  第22話「負けられない」

 
前書き
19話で25話には終わると言いましたが...無理ですねこれ。(おい

今回はかやのひめ視点から始まります。
 

 


       =かやのひめside=



  司の術により、私と奴はどこか違う場所へと移動する。

「ちっ、俺を仲間から引き離す魂胆だったか...。」

「...まぁ、その通りだね。」

「だが、無意味だ。てめえらを倒してそのまま合流すれば済む話だからな。」

  相変わらず腹の立つ下卑た笑みを浮かべながらそう言うクルーアル。

「...お生憎様、アンタはここで倒れてもらうわ。」

「....ほう?まさか、二人掛かりで倒せるとでも?」

「二人掛かり...ねぇ。」

  唐突に矢を放ち、不意打ちをする。疾く、鋭い攻撃だったため、クルーアルの頬を掠めて飛んでいく。さすがに速さを求めた一撃だから、反応が遅れたみたいね。

「言ったはずよ。アンタなんか私一人で十分ってね。」

「てめぇ.....!」

「...かやのひめさん、後は任せたよ。」

  一発触発になった私達を置いて、司は優輝の下へと戻る。
  ...これで心置きなく戦える。

「魔力の欠片も持ってねぇ癖に、俺を一人で倒すだぁ?調子に乗ってんじゃねぇぞおらぁ!!」

「調子に乗ってる...ねぇ....。」

  クルーアルの言葉に、私は少し笑みが浮かぶ。



   ―――本当に調子に乗ってるのは、どっちかしらね?



「っ....!?」

「本来の私らしくない性格だけどね....。分霊の一端とは言え、草の神を舐めるんじゃないわよ!親友を目の前で殺した罪、この場で償いなさい!!」

  優輝から供給されたおかげでだいぶ回復した霊力を開放する。
  さすがに未知の力とは言え、雰囲気で察したみたいでクルーアルは怯む。

「“弓技・旋風の矢”!」

「ぐっ...!?」

  怯んだ隙を逃さず、旋風を纏った矢を射る。クルーアルはそれを回避できず、障壁で防ぐが、込められた霊力の威力に顔を歪ませる。

「“戦技・強突”!」

  さらに追撃として、強力な矢の一撃を放つ。

「なめんじゃ...ねぇ!!」

     ギィイイン!

「(弾いてきた...!だけど、このくらい...。)」

  しかし、その一撃は斧に弾かれ、無効化される。

「おらおらぁ!避けれるもんなら避けてみやがれ!」

「っ....!」

  魔力による弾が私に襲い掛かってくる。

「“速鳥”!」

  一枚の御札を取り出し、術を発動させる。
  鳥のような形の光に包まれ、私は飛躍的に速度が速くなり、攻撃を全て躱す。

「お返しよ!“弓技・矢の雨”!!」

  術式を込めた霊力の矢を上空に放ち、それが炸裂し、小さな矢が雨あられと降り注ぐ。

「しゃらくせぇ!」

「(威力が弱い!今のじゃ、弾かれるだけ!)」

  矢の雨が斧に弾かれ、無効化される。そのままクルーアルは私へと接近し、斧を振ってくる。多分、私が弓しか使わないから近接戦闘に弱いと思ったのだろう。....けど。

「甘いわ!」

「ぬっ!?ぐっ....!?」

  最小限の動きで斧を受け流し、後ろ回し蹴りを叩き込む。

「呪術....“死者の手”!」

「なっ...!?」

  どす黒い手のような物が地面から現れ、クルーアルの足に絡みつく。

「(今の内に....!)」

  間合いを離し、弓を構える。ここで強烈な一撃を...!

「...邪魔だおらぁ!!」

「っ!?まず....!?」

  しかし、クルーアルは魔力を放出させる事で無理矢理術を破壊する。

「そんな小手先の技で、この俺を倒せるとでも思ってのかぁ!!?」

「くっ....!」

  魔力の込められた斧が連続で振るわれる。私も短刀に霊力を込めて対抗するけど、一撃一撃が重いため、受け流すのが精一杯だ。

「術式...“火炎”!!」

「ぬぅっ!?」

  受け流しながら後退する際に、足元に御札を仕込んで術を発動させる。

「この程度...!」

「まだよ!術式混合...“火焔旋風”!!」

「がぁあっ!?」

  あっさりと術を破ってくるが、その一瞬の間にさらに強力な術式を組み、発動させる。
  巻き起こる竜巻の如き業火。障壁で防ごうとしたが、その上から容赦なく燃やす。
  今度のは、ちゃんと効いたようだ。

「...それでも...私は、負けられないのよ....!!!」

  様子見の戦いはもう終わり。ここからは、私の全てを賭して勝つ!!









       =優輝side=



「っ.....くそ....!」

  迫りくる刃を受け流す。すぐさまその場を飛び退き、仕掛けられたバインドを躱す。さらに魔力を足場に地面に向かって跳ぶ。すると、直前までいた場所に複数の魔力弾が通り過ぎる。

「(予想はしてたけど...連携が上手すぎる....!)」

  転移魔法の使い手を洞窟内から堕としたのはよかった。しかし、その後転移して攻撃を仕掛けてみれば、いつの間にか緋雪と司さんから分断され、複数で僕を潰そうと襲い掛かってきた。

「っ...!やばっ....!?」

  地面に向かう途中で、魔力の足場を創り、無理矢理飛び上がる。なぜ飛び上がったかというと、その足場のすぐ下にはバインドが設置されていたからだ。

「(格上の魔導師にも連携で上手くやりあっている....ここまで手強いとは....!)」

  司さんや緋雪だけでなく、他の仲間も苦戦していた。
  神社での戦いはお遊びだった訳か...!

「おらぁっ!」

「っ!くっ.....!」

     ギィイン!

  思考する暇もなく、剣が振るわれる。それをなんとか受け流す。

「はっ!」

「っ!」

     ―――キィン!

「....フォイア!」

  隙ができたので斬りかかるも、防御魔法で防がれる。留まっていたらバインドの餌食なので、その場から飛び退きつつ、魔力弾を連射する。

「甘い!」

「(ちっ、防御役か...!)」

  すかさず割込まれ、強固な防御魔法に防がれる。

「(本当に連携が上手いな...。管理局で有名な割に、捕まらない訳だ...。)」

  バインドや魔力弾を回避しつつ、そんな事を考える。

「(幸い、魔力は敵の攻撃や大気から吸収して回復できる。...問題は、どうやって相手の布陣を崩すかだな...。)」

  僕が今相手にしているのは、射撃型魔導師一人、捕縛系魔導師一人、近接型魔導師二人に防御型魔導師一人だ。...過剰戦力とは思うが、まずは一人潰しておきたいのだろう。

「ほらよぉっ!!」

     ギィン!

「っ...。(近接型は剣使いと槍使い。...上手いこと、近接型二人で連携を取られないようにしてるけど、時間の問題だな...。)」

  魔力弾を回避している時に近接戦を仕掛けてくるため、攻勢に出れない。上手く連携を取れないように動き回ってるだけマシだけど。

「(洞窟内で戦った奴らは全員不意打ちと動揺の隙があったからか....。転移使いを倒せたのは本当に良かったな...。)」

  もし転移使いが残っていたら、既にこちらが負けていたかもしれない。

「(このまま凌ぎ続けてもジリ貧だ。その内負ける。だから、何とかして戦況を変えないと...。)」

  かやのひめさんのためにも、この戦いは負けられない...!

「(そのためにも....!)」

  一気に加速し、剣使いに斬りかかる。

「おっと!」

「はぁっ!」

     ギィン、キィイン!

  鍔迫り合いになったのを剣を巻き込むように横にずらし、力の集中する方向を逸らした瞬間に大きく弾きあげる。

「せぁっ!」

「....ふっ...!」

  その大きな隙を逃さず攻撃しようとして、その相手が不敵な笑みを浮かべる。

「っ、バインド...!」

「ようやく引っかかったなぁ。」

  二重...いや、三重になったバインドに掛けられ、僕は拘束される。

『お兄ちゃん!っ、この...!』

『優輝君!?くっ....!』

  緋雪と司さんは他の仲間よりも比較的近くにいたからか、僕を助けに行こうとする。
  しかし、あっちはあっちで妨害されてしまっているようだ。

「『...大丈夫。僕の事よりも、自分の事に集中して。』」

『...信じてるからね。お兄ちゃん。』

『...頑張って。』

  僕がそう言うと、一応任せてくれるみたいだ。...その方が、助かる。

「戦いを急ごうとしてミスったみたいだなぁ?だが、これで終わりだ!」

「っ...!」

     ―――キィイイン!!

  目の前の剣使いが僕に剣を振り下ろしてくる。それを、集中させた防御魔法で逸らすように受け流す事で凌ぐ。

「ほう...まだ足掻くか...。だが、いつまで持つかな?」

「...そっちこそ、いつまでも油断してない方がいいよ。」

  再度振り下ろされた剣を、今度は“浮遊している剣”が防ぐ。

「なにっ!?」

「ほら、トドメを刺さないの?」

「っ....舐めやがって!」

  何度も振り下ろされる剣を、二つの浮遊する剣で受け流し続ける。
  タネは簡単だ。ただ単に創造のレアスキルで創りだした剣を操っているだけ。剣を二つ用意したのは実際に振るうのよりも難しいから保険ってとこだな。

「なんだ?....なんだと!?」

「あ、術者本人が気付いたのか。でも、もう遅い!」

  バインドもあっさりと解く。バインドの術者が念話で目の前の男に伝えた時にはだいぶ解析が終わっていたからね。近くにいた槍使いも驚いているな。

「リヒト!」

〈カートリッジ、ロードします。〉

  今回は弾としてではなく、正式にブーストとして使う。
  増強された魔力をほぼ全て身体強化に回し、目の前の男に斬りかかる。

「なっ!?がぁっ!?」

「まず一人!今ここで叩く!」

  吹き飛ばされた男を追いかけ、追撃を試みる。

「させねぇよ!」

「っ!」

  防御使いと槍使いが妨害してくる。...が。

「邪魔!」

「なっ!?」

「ぐぅっ...!?」

  防御魔法を蹴り、槍に剣をぶつけ吹き飛ばし、無視する。

「っ!?バインドか....無駄だ!」

  バインドでさらに足止めされるも、すぐに解析して吸収、さらに身体強化に回す。

「“アォフブリッツェン”!!」

「ごっ.....!?」

  剣使いについに辿り着き、魔力を込めた一閃を放つ。
  空気の漏れるような声を出し、剣使いは地面に叩き付けられ、気絶した。

  ....これで、一人!

「(たかが一人。されど一人だ。...これで、攻勢に回れる!)リヒト!」

〈はい!〉

  動揺している間に、リヒトからグリモワールを取り出す。

「戦場を駆けし一筋の光よ!彗星となりて敵を打ち砕け!」

〈“ブレイジングスター”〉

  魔力を纏い、まさに彗星の如く勢いで槍使いと防御使いに迫る。

「ぐっ....な...!?なんだと....!?」

  防御使いが強固な防御魔法を使うが、無理矢理それを突破する。

「ぶちぬけぇええええええ!!!」

  防御魔法を突き破り、防御使いに直撃させる。

「がぁああああっ!!?」

「これで....二人目!」

  気絶した事を確認して、魔法を止める。

「(厄介な部分は潰せた。これでジリ貧にならずに済む...。)」

  だけど、気は緩めない。それでも十分に勝ちづらい相手だからな。

「っ...。(バインドか...。)」

  ブレイジングスターでできた隙を狙い、バインドで捕らえてくる。
  ...なら、次の手は...。

「砲撃魔法...か。」

  魔力が集束しているのを感じ取る。
  ...バインドは少し硬い。できるだけ逃さないように抵抗しているのだろう。

「『リヒト。』」

〈『分かっています。』〉

  砲撃魔法が飛んできた。それを僕は、バインドを解除すると同時に避ける。

「喰らえやおらぁっ!!」

〈『マスター!!』〉

「.....みーつっけた!“ロイヒテンファルケン”!!」

  槍使いの男を無視して、とある方向に魔法を放つ。

「どこを狙ってやがる!!」

「っ....!」

  槍使いの男を無視していたため、槍の穂先が目の前まで迫ってくる。

  ....まぁ、大丈夫だけどさ。

     ―――ギィイン!!

「なにっ...!?」

「想定済み。対策もバッチリってね。」

  槍の穂先は横から高速で飛んできた剣に弾かれ、逸らされる。
  もちろん、この剣は予めこの事を予想して創りだしておいたものだ。

「ふっ....!創造開始(シェプフング・アンファング)....!」

  槍を掴み、魔法を発動させる。槍であるデバイスと纏っている魔力を解析し、妨害用の術式を打ちこむ。
  すると、デバイスが機能しなくなり、目の前の男が隙だらけになる。

「てめっ...!」

「はぁっ!!」

  魔力をありったけ手に込め、掌底を槍使いの腹に決める。

「がはっ....!?」

「これで....四人!」

  掌底で気絶させたのを確認し、残りは一人となる。
  ....え?二人じゃないかって?...バインド使いは、さっきの魔法で堕としてるんだよね。
  バインドされた時に術者の位置特定をリヒトに頼んでおき、砲撃魔法を回避した時に居場所が分かったためそこに魔法を撃ちこんだ。ただそれだけで倒せたからな。脆くて助かった。

「...っと!」

  飛んでくる魔力弾をリヒトで斬る。どうやら、まだ諦めていないみたいだ。

「できるだけ時間稼ぎをするって事か。...で、仲間が他の奴を倒して合流すればいい。...そう考えてるんだろうな。」

  事実、他の皆も苦戦している。連携が上手いため、全員が孤立するように分断され、あの司さんでさえ苦戦している。だから誰かが負けるとでも考えてるんだろう。

「だけど、そうはさせないよ。」

  僕だって皆が負けるとは思ってない。だけど、万が一と言う事もあるし、なによりかやのひめさんが頑張っているのに僕一人時間稼ぎに付き合ってる訳にはいかない。

「リヒト、魔力の割合を身体強化7、魔力付与3で。」

〈分かりました。〉

  リヒトに魔力を纏わせる事で、魔力弾どころか砲撃魔法もその気になれば切り裂けるようになる。...まぁ、強力なのはさすがに無理だけど。

「はっ!せぁっ!」

  射撃型の魔導師がいる方向へ宙を駆けながら魔力弾を切り裂きつつ迫る。
  切り裂いた魔力弾の魔力の一部は当然吸収して魔力回復に回している。

「“アォフブリッツェン”!」

  砲撃魔法も魔力を込めた一閃に切り裂かれる。
  術者も慌ててるだろうな。仕掛けていたらしいバインドも躱して、射撃魔法どころか砲撃魔法も切り裂いて迫ってきてるんだから。

「(実を言うとこれ、結構無理してるんだよな。)」

  本来なら、魔力弾はともかく砲撃魔法は切り裂けない。僕がそれをやってのけているのは、剣で切り裂く直前に高速で砲撃魔法を解析、術式を理解することでそれに適した魔力の斬撃を放っているからだ。当然、マルチタスクを多用するので頭痛がひどい。

「でも、これで終わりだ!」

  射撃型魔導師の懐まで接近し、デバイスを弾き飛ばし、地面に向けて吹き飛ばす。
  地面に激突する前に仕掛けておいたバインドで拘束し、砲撃魔法を放ってトドメ。
  これで、僕が相手をしていた魔導師は全滅だ。

『よくやった優輝。できれば、他の援護に行ってほしいが...。』

「『大丈夫です。気絶させた奴らは任せましたよ。』」

『ああ。頑張ってくれ。』

  クロノからの通信にそう答え、とりあえず緋雪の援護に向かう。

〈.....マスター。〉

「なに?リヒ...ト.....。」

  リヒトに話しかけられ、意識を向けた途端、言葉が詰まる。
  なぜなら、デバイスであるはずのリヒトから異様な圧力があったからだ。

〈....また、無茶をしましたね?〉

「そ、そんな事は......すいません。」

  誤魔化すのを咄嗟に諦め、素直に反省する。

〈..はぁ、まったく、言ってもやはり聞きませんね...。〉

「....勝つためには、これぐらいしないとな...。」

  元々、ただでさえ魔力も数も上回っているのに、さらに連携も上手いんだ。それに勝つためにはこれぐらいの代償は付き物だろう。

〈...それもそうですが...。〉

「とにかく、緋雪の援護に向かうぞ。」

〈......分かりました。〉

  緋雪の方へ向かおうとして、ふと動きを止める。

「.......?」

〈...マスター?どうかしましたか?〉

「....嫌な予感がする。」

  僕や皆が戦闘してる場所から遠く離れた場所の魔力反応、おそらくかやのひめさんが戦闘している方向を見ながら、僕はそう言った。

「....先にあっちに行こう。」

〈ですが、他の方は...?〉

「緋雪は進路上の先で戦闘してる。向かいがてら、援護でもすれば大丈夫だよ。」

  今は、嫌な予感を拭う方が先だと思い、すぐさまそちらへ向かった。

「(向かう先の途中は激戦の渦中だ。早々通してもらえないだろうけどな...。)」

  一人か二人堕とせば後は他の皆がやってくれそうだけど。









       =かやのひめside=





「はっ!」

「おらぁっ!!」

  矢を放つ、あっさり弾かれ、そのまま斧が振るわれる。

「くっ....!」

「逃がすかぁ!」

「“弓技・双竜撃ち”!!」

「ちぃっ!」

  なんとかそれを回避し、二連続で矢を放つ。それをクルーアルは舌打ちしながら回避する。

「術式、“風車”!」

「くそがっ!」

  すかさず、回避した方向に風の刃を放つ。しかし、それは障壁に阻まれる。

「“弓技・旋風の矢”!」

  今度はクルーアルにではなく、地面に向けて風を纏った矢を放つ。
  地面に当たると同時に風が炸裂し、砂煙を巻き起こす。

「(“戦技・隠れ身”...!)」

  気配を殺し、近くにある林に隠れる。隠蔽性の高い術式を組み、それでさらに認識を阻害する。...これで見つからないはず...。

「(...だけど、攻撃する際に気付かれる可能性が高い。)」

  だとすれば、“あの技”は使えない...か。

「(幸い、しっかりと見つからずに済んでいるわね。だったら、一番発動の早い....。)」

  術式を組み、矢を番える。そして...。

「....“弓技・瞬矢”!」

  早く、速く、疾く、ただ速さを求めた矢がクルーアルに迫る。

「っ!?ぐぅっ....!?」

  直前で気づき、身を捻ったが、肩に掠る。これで、ようやく傷が入った...!

「(本来なら速い矢を連続で放つ攻撃だけど、一発だけにして正解だったわね。)」

  連続攻撃の方だと、速さも威力も幾分か落ちる。だったら、確実に当てられそうなこっちの方が良いと判断したけど、間違いじゃなかったわね。

「いつまでもちまちま攻撃してきてんじゃねぇぞぉ!!」

「っ....!?まず...!?」

  クルーアルが魔力を斧に込め、地面に振り下ろす。
  まずい...!早く、距離を取らないと...!

     ―――カッ!!

「っ、ぁあああああああ!!?」

  斧を中心に辺りが光に包まれる。...いや、これは魔力の爆発だ。
  その爆発から逃れようと、私は動いていたけど、少し巻き込まれてしまった。

「っ....術式、“息吹”....!」

  淡い光に私は包まれる。悠長に回復の術式を組んでいる暇はないから、せめて自然治癒力を高めなきゃ...!

「そこかぁ!!」

「っ....!」

  砲撃魔法とやらが飛んでくる。それをすんでの所で回避し、お返しに矢を放つ。

「邪魔だ!」

「(まだまだ...!)“弓技・螺旋”!」

  斧に弾かれるのにも構わず、もう一発、今度は障壁も削れるように霊力を込めて射る。

「当たらねぇんだよ!」

  しかし、それも躱される。

「死ねぇ!!」

「っ....!」

  斧が大振りに振るわれる。それを、紙一重で躱し、短刀を繰り出す。

「“戦技・三竜斬”!!」

「ぐっ...ぁああっ!?」

  三連続の斬撃をクルーアルに向けて放つ。障壁に阻まれるけど、二撃目でそれを切り裂き、見事に三撃目が命中した。

「...今のは、薔薇姫の得意技よ...。これだけで終わりじゃないわ。貴方のしでかした事の報い、しっかりとその身に刻みなさい...!」

  そう。今のはよく薔薇姫が使っていた技。最も使いやすく自分にとって出しやすい技って言ってたっけ。...薔薇姫の敵討ちのため、私も習得しておいたのよ。

「誰が刻むかよ!」

「っ!」

  すぐさまその場から飛び退く。その瞬間、寸前までいた場所を魔力弾が通り過ぎて行く。

「っ...!しまっ....!?」

  飛び退いた所で、私は身動きが取れなくなった。
  手足に輪のような物がついている。確か、バインドとか言う拘束魔法だったはず。

「死ねっ!!」

  身動きができない私に向かって斧が振るわれる。
  回避は不可能。迎撃も不可能。なら....。

「っ、ちぃっ...!小賢しい真似を...!」

「っ.....。」

  霊力で障壁を作り、なんとか受け流す。もちろん、受け流すといっても、無理矢理になので負担は大きい。
  ...扇があれば、もっと強固な障壁が張れたのだけど...贅沢は言ってられないわね。

「(完全に受け流すのはさっきので精一杯...!なら、最小限の被害で...!)」

「おらぁっ!」

「ぐっ....!」

  今度の狙い澄まされた一撃は受け流せない。むしろ、さっき受け流せたのはほぼ偶然だ。
  ...だから、直接斬られなければ耐えられるので、刃引きの状態にするかのように、霊力で斧の刃を包みこむ。当然、そのまま斧は腹に減り込むけど、斬られるよりはマシよ...!

「(優輝は言ってた。霊力は魔力と反発する事はないけど相性自体はいい。だから、霊力による攻撃などは魔力の防御を削りやすい。....なら!)」

  バインドとやらに込められている魔力を削ぐように霊力を注ぎ込む。
  もちろん、斧で斬られないように耐えながら...よ。

「いい加減....死んどけやっ!!」

「(っ...解けた!)」

  魔力が込められ、受け流す事も耐える事もできない攻撃が振るわれる直前に、バインドを解く事に成功する。
  すぐさま振るわれた斧を避け、足払いを掛ける。

「っぁ....“神鳴り”!!」

     ピシャァアン!

「がぁあああっ!?」

  霊力を開放し、無理矢理神鳴り...つまり雷で攻撃する。
  足払いで隙を作っておいたからか、直撃する。

「はぁっ....はぁっ....はぁっ....。」

  ...思ったよりも、さっきのバインド中の攻撃が効いてるみたい。
  早く、決着を付けないと....。

「っ、がぁああああ!!」

「っ!?キャァアッ!?」

  神鳴りによる砂煙の中からクルーアルが飛び出し、魔力を込めた斧で横薙ぎに攻撃してくる。
  ほぼ不意打ちだったため、斬られるという事だけしか防げず、思いっきり吹き飛ばされる。

「ぁ...ぐぅう.....。」

「はぁっ...はぁっ...てめぇ....!よくもやりやがったな...!」

「く.....!」

  クルーアルは息切れをしており、明らかに弱ってきてはいる。
  だけど、私もさっきので吹き飛ばされ、地面を転がったため、立ち上がるだけでも痛みが走る。...正直、さっきまでの激しい動きはできないわね。

     ドンッ!

「死ねぇ!」

「っ!!」

   ―――....だけど...それでも......!

「負けられないのよぉっ!!」

  魔力による身体強化で一気に接近し、振るわれた斧に、短刀をぶつける。

     ガキィイイン!!

「なにっ...!?」

「“神撃”!!」

  私も霊力で身体と短刀を強化していたため、斧を受け流す事に成功する。
  そのまま、空いている右手の掌に霊力を込め、思いっきり掌底を放つ。

「がはっ!?」

「っ....。(やっぱり、体力が低下して威力が....。)」

  だけど、その一撃は戦いの疲労によって致命打とはならない。

「(まだ...まだよ....!)」









   ―――薔薇姫の仇を取るまで、私は死ねない....!









 
 

 
後書き
かやのひめは一応相手を殺さないようにしています。しかもまだ全盛期ではありません。
霊力はまだ半分くらいしか回復していません。仮にも草の神の分霊なので、霊力の容量が大きいため、優輝程度の霊力供給じゃ、いくら頑張ってもこの程度です。
ですので、全盛期かやのひめなら既にクルーアルを殺しています(捕まえるじゃなくて)。

...それはともかく、戦闘描写は苦手です...。変な所ありませんかね?あったらアドバイスしてくれると助かります。(今のままでもいいのならそれはそれで嬉しいです。)

現在のかやのひめのダメージは結構やばいです。イメージとしてはA's序盤のSLBを撃つ直前のなのはぐらいの状態です。場数の差でなのはよりも動けますが。

 
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