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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
  第十四話 接吻の意味

「でっ、この家の隣で新婚生活か」

「あぁ、そう言うことになるな・・・」

「ごめんね、まさかここに住んでるなんて思わなくて・・・」

「隠れ家というのがあだになったね・・・」

ソレイユの言葉に申し訳なさそうに答えるキリトとアスナ。そんな二人を見て、ルナは苦笑いをしながら素直な感想を述べた。

「隠れ家の近所に知り合いが引っ越してくるなんてどんな確立だと思ってるんだよ」

「まぁ、確かにものすごい確率だよね・・・」

ソレイユのボヤキに同意するルナ。さらに居心地を悪くするキリトとアスナだが、ソレイユが首を横に振り口を開いた。

「まぁ、済んだことをぼやいていても仕方ないしな。とりあえず、お隣さんとして、これからよろしくな」

「そうだね。よろしく二人とも」

「あ、あぁ。よろしくな」

「よ、よろしくね、ソレイユ君、ルナ」

挨拶が終えたところで、ティータイムにしゃれ込む四人。そんなとき、ソレイユのウインドウからメールが来たことを示す着信音が響いた。ウインドウを開いてメール内容を確認したソレイユは、ルナに向かって椅子から立ち上がりながら口を開いた。

「鍛冶ギルドからの依頼だ。ちょっくら行ってくるわ」

「そうなんだ。帰りは遅くなりそう?」

「いや、依頼品見たら、たいしたことなかったからすぐ終わるよ」

「わかった。夕飯作って待ってるね」

「おう」

準備を終え、ルナに見送られながら出かけていこうとするソレイユにキリトが待ったをかけた。

「お、おれもついていっていいか?」

「構わないけど・・・、いいのか?新婚なのに?」

「だ、大丈夫だ。アスナの方もルナと積もる話もあるだろうしな」

「ふ~ん、わかった。そういう訳で、予定より早く帰れそうだよ」

「そっか。じゃあ、アスナと一緒に夕食作っとくから」

「おう!んじゃ、いってきま~す」

「いってらっしゃ~い!」

改めて、キリトを連れて出かけて行ったソレイユ。そんな二人のやり取りを見ていたアスナは一言呟いた。

「なんか夫婦みたい・・・」

「・・・いきなりだね、アスナ」

「だ、だって、さっきまでのやり取りを見ていたら・・・」

「まぁ、まだ恋人だけどね」

肩を竦めながらつぶやくルナにアスナが驚いていた。そこで、アスナが何かを思い出したようにルナに詰め寄っていく。

「そ、そういえば、どうしてソレイユ君と付き合ってること教えてくれなかったの!ソレイユ君から聞いてびっくりしたんだから!!」

「いや、どうしても何も・・・、あなた自分のことばかりでこっちの話しなんか聞かなかったでしょ?」

「うっ・・・いや、その・・・」

「それで、なんで教えてくれなかったの、はないと思うんだけど・・・。そのへんをアスナさんはどうお考えで?」

「・・・はい・・・、まったくをもっておっしゃる通りです・・・」

椅子に座り直し、紅茶を飲みながら微笑むルナにアスナは何も言えなくなってしまう。意気消沈するアスナをよそにルナはこれからのことを考える。

「ところで、今日の夕飯どうしよっか?」

「・・・そうだね、この際だからパーッと騒いじゃう?」

「ん~、そうだね、それもいいかも」

「じゃあさ、リズたちにも声かけようか?」

「いいね、みんなで騒いだ方が楽しいし、(アスナの)結婚の報告もしないといけないもんね~」

ルナの言葉に顔を赤くしながら慌てるが、そんなアスナを無視してルナはソレイユにメールを送っていた。今夜はパーティーになるが、人を呼んでも大丈夫か、という内容で送ったところ、大丈夫、という返信を受けてこれからどうするか考え始めた。

「とりあえず、何を作ろうかだよね~」

「そうだね、それ相応の料理を作らないとね」

そういって、買い置いてある食材とにらめっこをしながら何を作るのか考えるアスナとルナであった。今夜のことをシリカとリズベットにメールを送ることは忘れない。当然のように、帰ってきた返事はOKだった。



「なにする?」

「なにしよっか?」

夕食の献立も決まり、足りない食材も買いに出かけた。帰ってきたときに時計を見ると三時を回って今は、三時のティータイムということになっていた。夕食はもう少ししてから作っても間に合うため、現在手持ち無沙汰になってしまった二人。そこで、アスナは気になったことを質問してみることにした。

「そういえばさ、ルナはどうやってソレイユ君と付き合うようになったの?」

「いきなりその話題に持っていきますか・・・」

「だ、だって仕方ないじゃない!気になったんだもん!」

呆れを含んだルナの声に頬を膨らましてアスナはそっぽを向いてしまう。そんなアスナを見てルナは苦笑いをしながらソレイユと付き合うきっかけのことを思い出していた。



二十七層にあるダンジョンの奥深くにそれはあった。ダンジョンの中にある流れの激しくもない川を上流に向かって登っていくと、そこにはアンチクリミナルコード圏内設定された秘湯と呼べる天然(この城のすべては人口のため本当に天然とは言えないが)の温泉があった。
わざわざこんなところにまで来て入る必要はない、街にある温泉街で十分、というプレイヤーもいるだろうが、そうではない物好きなプレイヤーもいる。しかし、実際に浸かってみるとこの天然(くどいようではあるが、この城のすべては人口のため本当に天然とは言えない)の温泉は開放感があるためか、温泉街の温泉よりも心地よく感じるのだ。
そんな秘湯を知る数少ないプレイヤーの一人であるルナは、今まさにその秘湯をめざしていた。分かりづらい場所にあり、モンスターも出るのであまり近づくプレイヤーがいないためのんびりできるのも一つの利点である。
少しすると、温泉特有の硫黄のにおいが漂ってきた。前方を見るとごつごつした岩場に囲まれた場所に温泉があるのが見える。近くまで来ると、岩かげに隠れ、武器や装備をアイテムストレージにしまって入浴準備をしていく。下着を外しタオルを体に巻いて、温泉へと浸かっていく。全身浸かり終えると、あまりの心地よさに一息ついた。

「・・・ふぅ、心地いいなぁ~」

「・・・そうだな」

「っ!?」

誰もいないと思っていたところから突然声をかけれたため、臨戦態勢を取って声のした方を向くルナ。そこには見知った顔があった。

「ソ、ソレイユ!?」

「よっ、ルナ。奇遇だな」

苦笑いしながら挨拶をしてくる知人をはっきりと認識したところで、ルナは温泉に浸かりなおした。

「びっくりしたぁ~、いつからいたの?」

「お前が来るちょっと前から。別に隠れてたわけじゃねぇからな~。気づかないお前が悪い」

「・・・うぅ、言わないで・・・」

己の失態を恥じるルナを苦笑しながら盃に口をつけるソレイユ。近くにはお盆に乗せた徳利が浮かんでいた。

「それより、今日はどうしたんだ?」

「・・・?何が?」

「滅多なことがない限り、ここには来ないんだろ?」

「・・・ばれましたか、さすが・・・」

「お前がわかりやすいだけだよ」

そういって、徳利の酒を盃に注ぎ、再び盃に口をつけるソレイユ。ルナは気の沈んだ表情で口を開いた。

「・・・実はね、結婚を申し込まれたんだ・・・」

「・・・・・それで?」

「・・・うん、何度も断ってるんだけどなかなか引いてくれなくてね」

「・・・・・」

「今日はアスナに助けてもらったんだけど、相手の方はあきらめてなかったっぽいし、これからこんなことが続くとなると、ちょっと鬱だな~と思っちゃってね・・・」

「・・・・・・ふぅ~ん、じゃあさ」

ルナの言葉が終えると、先ほどまでの表情が嘘のように消えていた。それを不思議に思ったルナが何か言おうとしたとき、ソレイユはルナを岩にやさしく押し付けた。いきなりのことに困惑するルナだったが、それに構わずソレイユが口を開いた。

「そういう事実でも、作っとく・・・?」

「・・・な、何を言って・・・」

るの?と言葉は続かなかった。ソレイユの唇がルナの唇をふさいだからである。突然のことで目を白黒させるルナを愛おしそうに見つめるソレイユ。少しの間をおいて、ソレイユは唇を離した。困惑するルナの耳元へ顔を寄せると甘さが混じった声で呟いた。

「Auf die Hande kust die Achtung,
Freundschaft auf die offne Stirn,
Auf die Wange Wohlgefallen,
Sel'ge Liebe auf den Mund;
Aufs geschlosne Aug' die Sehnsucht,
In die hohle Hand Verlangen,
Arm und Nacken die Begierde,
Ubrall sonst die Raserei.
今のおれは、君の唇にしかキスは落とさないよ・・・」

「・・・言ってる意味が・・・」

「・・・あとは自分で考えてみろ」

それだけ言い残すとソレイユは着替えて秘湯を立ち去っていく。残されたのは、困惑するルナだけだった。



秘湯が見えなくなるほど歩いたところでソレイユは口を開いた。

「・・・いるんだろ、出てこいよ」

ソレイユの声に反応して茂み現れたのは膝下まで包む艶消しの黒いポンチョを着たプレイヤーだった。

「Oh、よく気が付いたな、剣聖」

「バレバレなんだよ、PoH」

その正体は、殺人ギルド≪笑う棺桶≫のギルドマスターだった。張りのある艶やかな美声だが、ほのかな異質さがイントネーションに潜んでいた。そんなPoHにソレイユは不機嫌な雰囲気を隠さずに向かい合う。

「で、おれに何の用があるんだよ」

「Nothing much、なに、面白いものが見れたからな」

PoHの言葉に不機嫌さを増すソレイユ。しかし、そんなソレイユに構わすPoHはクツクツと笑っていた。

「自分の惚れた女に言い寄られるのがいや、か。子供だな、剣聖」

「実際の俺は子供だ」

淡々答えるソレイユを興味深そうにみるPoH。そんなPoHの態度が気に入らず不機嫌さがさらに増していった。

「それにしても、なかなかinterestingなものを知ってるな」

その言葉で我慢の限界が来たのか、PoHに向かって抜刀するソレイユ。それをPoHは笑みを浮かべながら避け、茂みのほうへ消えて行った。無防備な背中をむけるPoHだが、ソレイユがそれ以上何もすることはなかった。
不機嫌に舌打ちをして、歩いては帰らず転移結晶を使ってその場から消えた。

 
 

 
後書き
はい、という訳でソレイユがルナに告白?した回でした。
しかし、いきなり女性の唇を奪うなんて何たる事かっ!!だいたいこんな告り方あるかっ!?もっと女性心理を学びなさい!!
わかったら、土下座、お座り!!

ソレイユ「あぁ?」

か、かるいウィットにとんだジョークじゃないか。そ、そんなに睨まなくてもいいだろ

ソレイユ「ふんっ」

おーい、どこに行くんだい、ソレイユ~。
あらら、帰っちゃったよ。

とりあえずみなさん、ソレイユの告白の内容は次回をお楽しみに!!
あと、感想などお待ちしております!!
 
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