成長
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5部分:第五章
第五章
どれもだ。かなり酷いものだった。周囲が見てもだった。
「アバンギャルドなのは変わらないわね」
「相変わらずの画伯よね」
「そうよね。何ていうか」
「センスが違うみたいな」
こう言うのだった。
「やっぱりあの娘って華道に向いてないんじゃ」
「頑張ってるけれどね」
「あれじゃあちょっと」
「そうよね」
「正座はクリアーしたけれど」
「肝心のお花がねえ」
それが駄目ならばだというのだ。
「結局ね。どうしようもないわよね」
「そうよね」
こう話してだ。光子はやはり駄目ではないかというのだ。
しかしだ。光子はだ。
本を見ながら必死に作っていく。家でも造花を使って練習していく。そうしていってだ。
少しずつだが次第にだ。その花飾りがだ。
違ってきていた。奇麗になってきたのだ。華道になってきていた。
それを見てだ。先生もだった。
驚きを隠せずにだ。こう光子に話した。
「えっ、それって宮原さんの?」
「はい、そうです」
その通りだとだ。光子も答える。
「私が飾りました」
「そうなの。まさかって思ったけれど」
「どうでしょうか」
「信じられないわ」
実際にきょとんとしながら話す先生だった。
「そんなに整ってるなんて。やっぱりこれって」
「やっぱりっていいますと?」
「練習。したわよね」
こうだ。光子に話すのだった。
「それもかなり」
「あの、それは」
「謙遜はいいことよ」
それは美徳だとだ。先生は微笑んで認めた。
それを認めたうえでだ。光子にこう話すのだった。
「けれど謙遜してもね」
「謙遜してもですか」
「見えるものは見えるのよ」
そうだというのだ。光子の目を見ての言葉だ。
「ちゃんとね」
「見えるんですか」
「お花に出てるから」
光子が飾っただ。花それ自体に出ているというのである。
「だからね。わかるのよ」
「お花に」
「勉強して。練習して」
その基本的なことが強く話される。
「そうしてそうしたものを飾れる様になったのね」
「私はただ」
「ただ?」
「先生が貸してくれたあの本みたいなお花にしたいって」
それだけだというのだ。
「それでなんですけれど」
「そうよね。それでよね」
「はい」
「それだけだけれど。それでもね」
「それでも?」
「宮原さんはちゃんと努力したから」
その結果だ。こうした花を飾ることができたというのだ。光子の前にあるだ。奇麗に整って飾られているその花をである。
それにだ。全てが出ていると。先生は彼女自身に話すのである。
「そうしたお花が飾れたのよ」
「ですか」
「じゃあこれからもね」
先生は微笑みだ。光子にこうも言った。
「頑張って。努力していってね」
「わかりました、それなら」
こうしてだ。光子は奇麗な花を飾ることができるようになった。それからも精進を重ね遂にはだ。彼女は華道部で最も奇麗な花を飾れるまでになった。
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