リリカルな正義の味方
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7話
彼は今日の予定を聴き、愕然とした。
「試合…だと?」
そう、彼女達の1戦目の試合の後、なのはが俺のところに来て、皆と試合をしようと言い出した。先程の試合の結果は引き分けと聞いたが、実力者が集まっているこの状況で、メンバーを選出し、1体8だと?一体何を言っているのかわからない。しかもメンバーがなのは、フェイト、ランスター、スバル・ナカジマ、モンディアル、ルシエにアインハルトとヴィヴィオを加えた8名。今のオレには…
当然、フェイトの攻撃を止められはせず、砲撃を防ぐ為に投影した盾は1枚の花弁も残さず打ち砕かれ、挙句の果てにはアインハルトに飛ばされる。
「…貴方を過剰評価していたようです。今の貴方では相手になりません」
その言葉とともにオレの意識はブラックアウトした。
ふと気がつくとオレは白い空間にいた。
「…ここは」
「ここは君の心の中だよ」
その声にオレは振り返った。そこに居たのはあの時死んだはずの彼女だった。
「久しぶりだね。白夜くん」
そう言って笑う彼女は記憶にある彼女のままだった。オレは彼女にかける言葉が見つからなかった。
「…何か言ってほしいな?悲しくなっちゃう」
「…すまない」
「最初に言う言葉がそれ?」
彼女は苦笑してそう言った。でも、君らしいね。と。
彼女は時間が無いから率直に言うね、と前置きしてその言葉を言った。
ーーー君は、私に対して罪悪感を感じてるーーー
「…あぁ。その通りだ。」
ーーー私のお願いを自分の夢として、自分を見失ってしまったーーー
「違う!そんなことはない!」
ーーーその結果、君は自分自身の願いを忘れてしまったのーーー
「オレ自身の…願い…だと?」
「やっぱり気づいてなかったんだね」
彼女は相変わらず苦笑のまま、オレに語りかける。
「君はね、私の願いを自分の夢とした。だけどその夢の途中で、君自身の願いを見つけたんだよ。だけど、その願いを私に対する罪悪感で心の奥底にしまってしまったんだよ」
その言葉にオレは驚いた。オレ自身の願いそんなものがあったのか。と。オレ自身の願いとは一体…
「君は気付いてるよ。ただ隠してしまっただけ。だから、私はそれを出す手伝いをしに来たの。」
手伝い?手伝いなんてすることがあるのか?
「うん。君の心を救わなくちゃいけないんだよ。」
オレの…心。
「…ありがとう」
「なんだ、唐突に。」
「君の心が教えてくれたの。君は私を救えなかったのが1番鍵になってるって。」
「…」
「君は私にその夢を誓ったのに、その最初である私を救えなかったことに、自分に対する怒りと悲しみを感じている。」
「…」
「そしてそれを原動力にして、他の人を助け続けたんだ。」
「そうだな。そう…なのだろうな。」
「でも、でもね?君はね。自分を許してあげて。」
「…それは出来ない。オレはオレを許せない。」
「違うの。君は認めないと思うけど、君は確かに私を救ってくれていたんだよ?」
オレは信じられなかった。そんなことがある筈がないと。
「私は、君に救われていたの。1人で死にそうになってる私に約束してくれた。思い出して?君は、私が死ぬ前の日にこう言ったんだよ?」
『君との約束、必ず守ろう。オレは正義の味方になる。必ず戦争のない世界にしてみせる。だから、その時まで生きろ。今度は平和になった世界で、君と話そう。だから、待っていてくれ。正義の味方が必ず君をーーーにさせてやる』
「これが、オレの願いなのか…?」
「これが君が得た答えなんだよ?君は君自身が見つけた答えを自分で隠してしまったの。」
「そうか…これが…」
「でも、もう大丈夫だよね?だって今の君の顔はすごくスッキリしてるもの」
「あぁ。気づかせてくれてありがとう。俺はもう大丈夫だ。」
「もう…間違えちゃダメだよ?そしてこれからは今の君を想ってくれてる子をちゃんと見てあげるんだよ?」
「フ…お前は俺の親かよ」
「んーん。親友だよ。」
「ありがとう。親友。」
「ん。…じゃあ行ってらっしゃい。君はもう立ち上がれるよ。だから私は君をまた見守っているから。」
ここに来た時と同じように俺の意識はブラックアウトする。だが違うものは確かにあった。俺は答えを知った。さぁ、彼奴らに一泡吹かせに行こう。
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