DQ5~友と絆と男と女 (リュカ伝その1)
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20.ごめんで済めば警察はいらない。いや、そうでもないだろ!
<ラインハット城>
デールSIDE
昨日の一件は、瞬く間に人々の知る所となった。
今までの悪政は全て偽太后が行ったいた事、そして行方不明だったヘンリー王子が戻り偽太后を倒した事は、国民を喜ばせ安堵させる事となった。
そして一晩明けた今日!僕を悩ませる事態が発生した。
「リュカさんからも言って下さい!王位を継ぐようにと!」
「デール君、こいつに何を言っても無駄だよ。分かっているだろ?君の義兄さんなんだから」
「そうです陛下。子分は親分の言う事に従うべきです」
「義兄さん…」
「それにヘンリーが王様なんて何かムカつくから、僕は説得はしないよ」
本人や家族の目の前で言う事じゃ…
「お前なぁ~…まぁ、いい。そんな訳で王位はこのままと言う事に」
「僕は国王の器では無いのです。今回の一件で、その不甲斐なさを実感しました!」
「陛下、この兄は陛下を見捨てるつもりはございません。微力ながら陛下を全力でサポート致します。陛下はまだお若い。この国を立て直し、この国と一緒に成長して行きましょう」
僕は黙って頷く事しか出来なかった。
義兄の優しさが嬉しすぎて…
「そんな訳だリュカ!すまんが俺はラインハットに残らなければならない」
「正直助かる。何時も僕のナンパを邪魔していたヘンリーは、ここで置いて行こうと思っていたから」
「てめぇー…」
義兄さんとリュカさんは、お互い笑顔で言い合っている。
ちょっと羨ましいな。
「リュカさんには感謝に絶えません。何か僕に出来る事はありませんか?」
「無論あります」
リュカさんは真剣な面持ちで要求してきた。
「まず、父パパスの名誉の回復。そしてサンタローズの…いや、サンタローズに限らず君の不甲斐なさで滅んだ村への復興の援助。この2点!」
リュカさんの辛辣な一言に胸が痛む。
「何で貴様は、そう言う言い方するんだ!」
「ピエールさん、構いません。真実ですから」
僕はリュカさんに負けない様、真剣な面持ちでリュカさんに告げた。
「言われるまでもありません。その2点は僕が真の王になる為に必要な案件です。必ず実行致します」
「ん、なら僕はラインハットには…この国には、何も要求は無い」
そう笑顔で言うと、そのまま母へ向き直った。
「太后様。僕は貴女にこそ要求があります」
みんなの視線が母とリュカさんに向く。
「リュカさん!それは「黙っていろデール!」
義兄さんが僕の訴えを遮った。
「貴女は僕に、どのような謝罪賠償を支払って頂けますか?」
「わ、妾の愚かな考えで、そなたに多大な迷惑をかけた事、誠に済まなかったと深く反省をしている」
母はリュカさんの無表情で感情の無い瞳に怯えながら言葉を続ける。
「もう、妾は出しゃばらずデールとヘンリーを静かに見守って「ふざけるな!!!」
空気を揺るがす程のリュカさんの怒鳴り声に皆が言葉を失った。
「父の死の原因は、あんたが作った!サンタローズや他の村々を滅ぼしたのは偽太后だろう。その罪は命を持って償わせた!だが、父のパパスの死の原因だけは、あんたのせいだ!」
母は顔面蒼白で立ち竦んでいる。
「僕は父さんが嬲り殺される様を、この目で見ていた。あの光景は一生忘れない!」
「わ、妾は…そなたの父の殺害を命じてはおらぬ」
「ヘンリーを誘拐した犯人が、救出に来た者へ危害を加えないと思っていたのか?大人しくヘンリーを返し、降伏するとでも思っていたのか?そう指示をしてたのか?」
「それは…」
「あんたは僕に何をしてくれる?目の前で最愛の父を嬲り殺された僕に、どう償ってくれる?」
リュカさんは母を責める権利がある。
でも僕には…
「…妾も、命を持って償おう!」
「そんな!母上!どうか「そんなんでは僕の気はすまない!」
そんな!リュカさん…
「…では、どうすれば…妾に出来る事は、その程度…」
「僕は最愛の家族を目の前で失った」
そう言うとリュカさんはピエールさんの腰から剣を抜き、僕の方へ向き直った。
「貴女にも同じ苦しみを味わってもらう。家族を目の前で殺される苦しみを!」
「そ、そんな!デールは関係ない!妾を…私を殺せ!どうかデールだけは…デールだけは許してほしい」
母は泣き崩れリュカさんの足に縋り付く。
だが、僕の心は決まっていた。
「母上!貴女はリュカさんに償わなければいけない。それは死して一瞬で終わる様な償い方ではいけない。息子の死を心の重石にして生きていかなければいけない。リュカさん、どうぞ。これで母を許してあげて下さい」
「いい覚悟だ。その覚悟に敬意を表し、一思いにやってやる」
リュカさんの口調はむしろ優しい…それが一層の恐怖になる。
「やめてー!!お願いします!!どんな苦痛も…どんな苦しみも私は受けます!だから…デールだけは!!どんな事でもしますから…デールだけは…」
その瞬間リュカさんとヘンリー義兄さんに、人の悪い笑みが戻った!
してやられた!
この二人にしてやられた!
「どんな事でもって、言ったよな!?ヘンリー?」
「あぁ!確かに言ってた!この場にいる、みんなが証人だ!」
「え!?」
母は涙や鼻水でグチャグチャな顔で二人を見上げキョトンとしている。
「マリアさーん!」
奥から美しいシスターが二人の子供を連れてきた。
「太后様、あんたには直接は関係ないのだが、この二人マリソルとデルコは偽太后のせいで両親を失った。この二人の親代わりになってもらう」
「私が…!?」
「ただ親代わりになればいい訳じゃ無い。デールを見れば分かるが、あんたの子育てレベルは低そうだ。」
何か酷い事言われてます。
「ただ甘やかすだけではなく、時には叱り、時には褒め、立派な大人にする事が、この罪に対する償いだ!」
「おっと!言っておくが、この二人だけじゃないぞ!この国には数多くの孤児がいる。それを全部とは言わないが、他の人達と共に力を尽くしてもらいますよ。義母上」
母は孤児二人を抱きしめ泣きながら呟く「私が育てます…償いだからではなく…私の子供達だから…」何度も、何度も呟き泣いていた。
デールSIDE END
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