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宿に泊まる
馬車にそれからしばらく乗って、夕暮れ時になった頃にフレクスの町についた。
何階建てにもなった建物が多く点在し、人通りも多い。
「主要な街道が4つほどここに繋がっているので、それで発展した街なのです」
レイアが総説明してくれた。
ただ大きな街とはいっても僕達がこの前いった町もそこそこ大きかったのと、平日のすく時間帯の馬車だったので僕達以外がこの馬車にはいなかったらしい。
馬車の御者のおじさんが、運がいいなと笑っていた。
そして夕暮れ時についたので宿屋を探そうといった話になる。
「どこで宿を決めようか?」
僕がレイアに聞くと、レイアは鞄からガイドブックのような地図を取り出して、
「どうやらこちらの方が、宿が安くていいようです」
「このガイドブック、宿の料金までのっているんだ。しかもこのページに付箋が貼ってある」
「事前に何処に行くかを全部決めていましたから」
レイアは準備がいいらしい。
じゃあそちらに行こうかなと思っているとそこでリリアが、
「レイア、そこよりももっと安くていい宿を知っているわよ?」
「そうなのですか?」
「うん、いつも私が利用している所があるの。そこに行きましょう」
「ですが治安の悪い場所もこの町にはあるんですよね?」
「私がそんな危険そうな所に行くわけがないじゃない」
至極当然のようにリリアが真顔で言う。
レイアはうっと小さく呟いてから、
「私、一生懸命調べたのに……どうしてここよりも安い宿が」
「本に出る広告費が宿代に上乗せされているんじゃない? さてと、行きましょう。ここからそこそこ歩くし」
リリアがそう言っていたので僕が、
「どれくらい歩くんですか?」
「30分位。町外れの場所よ。といっても住宅街が広がっていて隣が図書館だったりする場所だから治安はそんなに悪く無いわよ」
「そうなのですか。その宿はもう少し遅くても空いていますか?」
「うん、そうだけれどどうしたの?」
「住宅街の宿屋なので夕食を食べに行くのにまた戻らないといけないので」
「そうね……宿に行く前に夕食を食べてしまったほうが効率は良いか。皆はどうする?」
リリアがエイダとレイアに聞くと二人共、宿に付く前に食事をと答えた。
そしてリリアが、
「何か食べたいものがある?」
「そうですね、この地方の特産キノコである、マミシュルーム等の菌が食べられる場所がいいです」
レイアがガイドブックをじっと見ながらそう答え、次にエイダが、
「お肉! お肉が食べたい!」
「確かこの地方の特産で、“ミラの実”を使って育てた牛があったわね。……よし、あそこの串焼きにしよう。お酒のでないお店だから私達でも入りやすいし」
リリアが言うので周りを見渡すと、確かに他のお店はセットでビールやワインなどがついてくるといったような内容の看板ばかりが立ち並んでいる。
その串焼きのお店は、食堂であるらしく一応お酒はあるもののそれがメインではないらしい。
そうして僕達はそのお店にはいったのだった。
出された串焼きは、ほんのりと果実の香りがして、外にはスパイスなどがかけられてカリッと焼かれており、中は程よい火加減で柔らかくジューシーだ。
しかもお代わりのお値段は半額らしい。
「こんなに美味しいなんて……」
レイアがキノコを食べながらプルプルと震えていた。
レイアが食べたいと言っていたミマシュルームも、添えられた一品だった。
ただレイアが感動している所、申し訳ないのだが……僕はちょっと違和感を感じてしまった。
確かに合わせると意外に合うというのは分かっているが、やはりステーキというとスパイス塩コショウレモンわさび醤油と言った塩気のものや酸っぱい柑橘系のもの、もしくは玉ねぎを使ったソースのイメージが僕には強かったのだ。
なのでこの焼かれた白いマシュルームのようなこれが、口に含んだ瞬間、僕が元の世界で食べていたチョコレートの味がするのだ。
それもあのスーパーで時々安売りしている板チョコのような味がする。
この絶妙な甘さと苦さもお肉に会うような気がしなくもないが、食べ慣れていないのも会って僕は何となく受け入れられない。
しかたがないので肉だけ食べてからデザート代わりに食べることにした。
とはいえこのお肉はとても美味しいので他の人達と一緒に僕は二回おかわりをしてしまう。
おかわり前提のお店なのか一皿のお値段は安い。
そして最後に出てきたデザートはクリームの添えられたケーキだった。
赤いいちごのような果実が添えられている。
それらはとても美味しい。
そして僕達が料理に舌鼓を打っていると側に座っていた人達が、
「おい、聞いたか? 森の赤い光について」
「ああ、最近夜に遺跡が赤く光ったりするらしいぞ」
「秘蹟だか何だかあるっていう、メントールの森……夜は近付かないでおこう」
そんな話を聞いてしまった。
メントール……爽やかそうな森だなと僕が思っているとレイアが、
「次の目的地は決まりました。運がいいかも」
「そうだね、まさかこんな所で聞くことになるとは……」
僕はレイアにそう答えながら、デザートの最後の一口を食べる。
リリアがそこで僕達にいってきた。
「でもメントールの森は結構広いはわよ? 場所の特定をしてからいったほうがいいかも」
「ではガイドブックで……」
レイアがいそいそとガイドブックを取り出したのでリリアが小さく吹き出し、
「丁度夜遅くまでやっている図書館が宿の近くにあるからそこを見に行きましょう。地元だから地元の情報が結構あるかもだし」
「そうですね……図書館で調べましょう」
レイアがしょんぼりしながらガイドブックをしまった。
そこでようやくケーキを飲み込んだらしいエイダが、
「よし、これでその問題という名の試練がどの程度のものか参考にさせてもらうわ」
「巻き込まれても構わないということでしょうか」
「もちろんよ、その程度」
楽しそうにエイダが笑う。
そこでリリアが俺を見て、
「そういえばあの怪物を倒した素材と、あの洞窟の奥で手に入れた魔法結晶石で、簡易的な“杖”を作ってみる?」
「“杖”ですか?」
「ええ、多分あの感じだとストックできるのは、三つぐらいの魔法だけだけれど、あると都合がいいでしょう?」
「それはまあ、“魔法結晶石”よりは選ばなくて言い分時間が短縮できる?」
「その程度しか効果はないけれど、とっさに使い時にすぐ使えるのはいいかもしれないという程度ね」
「それではよろしくお願いします。いつ頃できそうですか?」
「宿にいって一時間くらい?」
結構短時間で魔法の杖は出来るらしい。
簡易的なものであるらしいが。
こうして僕達はご飯を食べてからまずは宿に向かったのだった。
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