Steins;Gate 愛別離苦のラグナロク
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
Chapter01
ー0.571046ー
まだ、雨が降っている。
薄暗い。建物の中、身体中にまとわりつく不愉快な感覚。
ラジ館の屋上へと続く階段に俺は立ち尽くしていた。
これで何回目だろう。
ふと、そんな感覚さえ久しぶりに感じてしまう。俺はこれで一体何回目のタイムリープだろう。このα世界線ではまゆりが死んでしまう。そこから回避すべく元いた世界線、β世界線を目指していた。だが、IBN5100を使い、SERNのデータベースを削除し、β世界線に戻ってしまうと紅莉栖がこの世から去ってしまう。
そうだ、こんな結末は俺は、絶対認めない。
階段を下り、外にでてみる。もう雨は降っていなかった。まぁ、いつもこうだったか。
そして、ラボを目指して歩き出した。
夏も半ば、豪雨の後なのにもう日が差し、同時に刺すような暑さを感じる。いつの間にか蝉の鳴く声まで聞こえてくるようになった。空を見上げると通過したであろう、黒い、黒い雲が遠くに居座っている。ここから数キロの距離では天候が全く違うということに何か別の世界のような不思議な感覚を覚える。歩道橋には傘を畳んで持っている人や、いち早くやり過ごしたのだろう、すこしばかり濡れている人達がいた。この様なぐっしょりずぶ濡れになっている人はどこにもいなかった。すれ違う時に少しばかり訝しむ目で見られていた。
そういえば人の顔を見るのも久しぶりだ。タイムリープをしている内に感情が摩耗してしまっている。現に何回かはタイムリープに失敗しかけている。このままどうなってしまうのだろう。いつか「突然岡部倫太郎が廃人となった世界線」になってしまうのだろうか。この話を聞いたのが1時間前だと言うのにもう1年も、2年もたっているようだ。
そう考えてながら到着したラボの階段を昇り、建てつけの悪い扉を開けた。やはり誰もいない。まだ半乾きの服のまま、ソファに腰掛け、タイムリープマシンの下を見つめる。
電話レンジ(仮)
これが全ての始まりであり、元凶とも言える。あの日、メールさえ送らなければ、けど、だって、わかるはずかないだろう? その日、その瞬間、全人類の命運が決まるスイッチを握られていることなんか。
…………よそう。
こんなこと考えている場合ではない。全人類なんか知ったことか。俺は紅莉栖もまゆりも死なない方法を見つけ出すんだ。何の為に生きているのかを、忘れてはならない。だが、もう、分かってはいた。
タイムリープではまゆりは助けられない。
分かってはいた。どこの世界線でもどんな手を尽くしても俺はあいつを救えなかった。
認めたくなかった。だが、事実なのだろう。だが、諦める訳にはいかない。
Dメール
これまで、送り続けたDメールによってまゆりの寿命が1日ずつ減っていった、そしてそのメールを取り消すことで、消えてしまったIBN5100を再び手に入れる事に成功した。数々の想いを犠牲にして。そこで更にDメールを送ってでもしまえば最悪な状況になってしまうかもしれない。いわばブラックボックスだ。
だが、迷っている場合でもない。そこに少しでも可能性が残っているのであれば。
ブラウン管工房に入り込み42型テレビを点灯させる。シャッターも半開きだし鍵もかけていなかった。
タイマーをセットする。送る文章はもう決まっている。過去の俺が行動してくれると確信に近いものが確かにある。放電現象が始まった。後は送るだけ。
一度、失敗した。だが、そこには紅莉栖がいる。彼女がいれば大丈夫だろう。
Dメールを送ればSERNに感づかれる。なら”なくして”しまえばいい。
「SERNの人体実験を通報しろ」
送信ボタンを押した。
ー 0.571046→0.999308ー
ページ上へ戻る