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戦国異伝

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第二百三十四話 燃え落ちる寺その七

「城の中の火薬にね」
「よし、では一気にいくぞ」
「わかり申した、では」
 ヨハネスも身構える、そしてだった。
 一行は一気にだ、二条城の正門に向けて。
 駆けた、そしてそこにいる者達をだった。
 薙ぎ払い踏み潰してだ、そのうえで。
 門を出て敵中を一気に駆け抜ける、敵が左右から殺到して来るが。
 一行はその手にある得物を縦横に振るいだった。彼等を倒していく。それを見て明智軍の旗本達は色を失って言った。
「これはいかん!」
「あの者達を捕えよ!」
「捕らえられぬのなら止むを得ぬ」
「とにかくかかれ!」
「よせ、御主達は同じ織田家の者じゃ」
 その彼等にだ、慶次は言った。
「手にかけたくはない」
「くっ、しかし」
「我等は」
「来るのなら容赦はせぬぞ」
 彼等の横を駆けながらの言葉だった、襲い来るのは闇の具足の者達だけで青い具足の者達は見ているだけだ。
「その時はな」
「さあ、来たい者は来るのじゃ」
 可児も言う。
「相手をしてやるぞ」
「さあ、死合うか」
 慶次も言う。
「我等と」
「さ、斎藤様はどちらじゃ」
「秀満様は」
「一体どちらじゃ」
「どちらにおられる」
 彼等の判断を仰ごうというのだ、だが。
 慶次達はその間に駆け抜けた、彼等が怯んでいる間に。
 そして後には誰もいなくなった二条城だけが残りだった。城の中の火薬に火が点き派手な爆発を起こした。
 それを見てだ、闇の者達は言った。
「前田慶次達は逃げたが」
「問題は織田信忠だ」
「あの者は逃げていない」
「あの中にいなかった」
 逃げた慶次達の中にというのだ。
「女子供は既におらぬ」
「このことはもう確かめている」
「ではじゃ」
「織田信忠はどうなった」
「死んだか」
「それとも何処からか逃げたか」
 こう口々に言うのだった。
「それとも城の中で腹を切ったか」
「とにかく身元を探すのじゃ」
「逃げたか死んだか」
「それを確かめよ」
「屍を探せ」
「あの者の屍を」
 城が燃え盛っていたが周りの建物を壊し火が燃え移りそこから燃え続けるのを防いでだった。そのうえで。
 彼等は城が完全に焼け落ち炭になるのを待った。今は慶次達のことは捨て置き信忠の行方を探すのだった。
 本能寺でもだ、幸村と兼続が。
 馬に乗り戦っていた、二人の周りには十勇士達がいる。
 十勇士は手裏剣に煙玉、それぞれの得物を使って戦っている。
 そうしつつだ、兼続が幸村に言った。
「幸村殿、間もなく」
「寺の中のじゃな」
「うむ、火薬に火が点いてな」
「爆発するか」
「だからな」
 それでというのだ。
「我等も去るとしよう」
「そうするか、しかしな」
「このまま逃げてはか」
「追いつかれる、ここは仕掛けをしようぞ」
 こう兼続に言うのだった。 
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