明日も爽やかに
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4部分:第四章
第四章
「あそこまで速いとね」
「まるで馬だったじゃない」
「あんなえげつない相手だと」
「少なくとも勝ちたかった」
友人達の言葉に今度はこう言う彼女だった。
「絶対にだ」
「勝敗は常だからね」
「二位でもかなり凄かったし」
「落ち込まないことよ」
「優勝は逃したけれど」
「優勝か」
晴美はその言葉を聞いてだ。一旦顔をあげた。
そしてそのうえでだ。溜息と共に言うのであった。
「今回はそれを手に入れたかったな」
「まあまあ」
「今日は残念会で忘れよう」
「そうしようね」
「それしかないか」
晴美は苦い顔で頷くしかできなかった。
「今は」
「まあまあ」
「忘れよう」
「もうね」
こうしただ。彼女も自分自身にとって満足いくものではない、晴れない結果に終わった。その晴れない心のままだ。駅で会ったのだった。
「二位か」
「そうだ、二位だ」
晴美が健斗に対して答える。二人は今は制服姿でお互いその駅にいた。
「残念なことにな」
「俺もだ」
そしてだった。健斗も言った。
「俺も二位だった」
「そうか、同じか」
「残念なことにな」
「それでなのだが」
晴美から彼に言ってきた。
「一旦着替えてから何処かで飲むか」
「酒か?」
「忘れるのもいいと言われたからな」
だからだというのである。
「それでどうだ」
「そうだな」
健斗は一呼吸置いてから彼女の言葉に応えた。
「忘れるにはいいな」
「そういうことだ。周りから忘れてしまえばいいと言われたしな」
「それで酒か」
「さっきまでミスタードーナツにいたがな」
つまりそこでドーナツを食べて憂さ晴らしをしていたというのだ。
そしてだ。それは健斗も同じだった。彼も言う。
「俺もさっきまでな」
「憂さ晴らしをしていたんだな」
「喫茶店でケーキを食べてな」
彼はそうしていたというのである。
「それで少しな」
「ははは、本当に同じだな」
「全くだな」
「それじゃあ一旦別れてだ」
「飲むか」
「そうしよう」
こう話してだった。一旦二人は別れてそこから私服になってだ。また駅のところに来た。その時の二人の服装はというとだ。
健斗はダークブルーのジャケットに白いズボンだった。晴美はスカーレッドのシャツに黒のズボンだ。健斗がその晴美の赤と黒の服を見て言う。
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