見よう見真似で
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4部分:第四章
第四章
「まさに怪物だよ」
「かもな。あれはな」
「甲子園だけじゃないのか」
「とことん凄い奴みたいだな」
こう話すのだった。そしてだ。
彼のピッチングはだ。アメリカではこう呼ばれたのだった。
「第二の野茂だな」
「ああ、トルネードの再来だな」
「日本から来た第二のトルネード」
「まさにそれだよ」
これが彼のアメリカでの評価だった。その彼はだ。
メジャーで活躍し続けそこで二百勝も達成した。野茂の記録である二〇三勝にも届いた。だが彼はその時にこう言うのだった。
「俺は野茂さんがいたからです」
「野茂が?」
「野茂がいたからだっていうのか」
「はい、野茂さんがいたからです」
彼がいたからこそだと。アメリカの記者達に話すのだった。
「こうして野球をやってピッチャーになって」
「そしてアメリカにいてだな」
「ここまでなれたっていうんだな」
「野茂さんは憧れです」
彼にとってはだ。まさにそれだというのだ。
「その野茂さんがいなかったら」
「そうか。そう言うんだな」
「彼がいたからか」
「野茂がいてこそなんだな」
「そうです。俺は飲もさんがいてこそなんです」
そしてだった。彼の言葉は。
「俺は見よう見真似でここまで来られました」
「じゃあ野茂より劣る?」
「そう言うのかい?」
「勝っているとか超えたとかは思えません」
それはだ。決してだというのだ。
「ですがそれでもです」
「それでも?」
「それでもっていうと?」
「野茂さんに限りなく近付くことはできると思います」
それはできるかも知れないというのである。
「ですからこれからもです」
「投げていく」
「そうするのかい」
「記録の問題じゃないです」
野茂の通産勝利数に並んだことについても話すのだった。
「俺にとって野茂さんはです」
「ああ、わかったぞ」
記者の一人がここで言った。顎鬚の記者だ。
「永遠の目標なんだな」
「その通りです。永遠の目標です」
まさにそれだと話すのだった。そうしてだ。
彼はそれからも投げ続けた。常に野茂を目標にしてだ。その彼が引退したその時にはだ。こう言った。
「野茂さんがです。大リーグに挑戦してくれたからこそ俺はここまで来られました」
彼は最後まで野茂を見て目指していたのだった。それが矢吹大次郎であった。彼にとって野茂英雄はだ。永遠の存在だったのだ。
見よう見真似で 完
2011・3・27
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