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魔界転生(幕末編)

作者:焼肉定食
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第31話 開戦・戊辰戦争

天皇より幕府討伐の命令が下された時からの薩摩藩の行動は早かった。徳川慶喜及びその幹部たちは二条城から大阪城へと拠点を移し、いまだに将軍不在の江戸で暴動を繰り返させた。明らかに幕府に対しての挑発だった。
そこに来て、庄内藩江戸屋敷が襲われ、その報復として薩摩藩邸も焼き討ちされた。
これに喜んだは西郷隆盛。
この事件には一人の男の影があった。
魔人・坂本龍馬。
「よくやってくれもうした。坂本さぁ」
西郷は高笑いするのであった。

そう、魔界転生にて蘇り天草四朗の手より脱走した坂本龍馬は江戸に潜伏していたのだった。
龍馬は天草の元を去った後、すぐさま江戸に向かった。そして、生涯の師である勝海舟を訪れた。
「先生、お久しぶりです」
目の前にひれ伏して座っている男を勝は言葉を失い見つめていた。
小姓が坂本龍馬様という方が訪ねてきておりますと言われた時も驚いたが、そこにいる男は紛れもなく坂本龍馬その人だったのだ。
「おい、お前さん、本当にりょうさんかい?」
坂本龍馬は死んだはずなのだ。生きているはずがない。
勝は目の前の男に恐る恐る問いかけた。
「はい、先生の一番弟子の坂本です」
男は顔をあげ、にこりと微笑んだ。その顔は紛れもなく坂本龍馬その人だった。
「りょうさん、お前さん、生きてたのかい?」
勝の目はうるんでいた。死んだはずと思っていたのに生きていたのだから。
「いや、死んでるぜよ」
龍馬はぽりぽりと頭をかいて笑った。
「え?」
勝はその言葉に鳩が豆鉄砲をくらったかのように龍馬を見つめた。
「じゃあ、なにか?お前さんはりょうさんじゃないと?」
咳をひとつして龍馬に問い返した。
「いや、先生。わしゃ、先生が知ってる坂本龍馬ぜよ」
屈託のない笑顔で龍馬は答えた。
「お前さん、冗談言っては困るよ。じゃあ、聞くが。お前さんは坂本龍馬の亡霊かい?」
勝はまじまじと龍馬を見つめて言った。
「先生こそ、冗談言っては困るぜよ。幽霊に足があって自由に歩き回れるとでも?」
龍馬は大声で笑い声をあげた。その時、勝は素早く刀を抜き龍馬の首すれすれで止めた。
「じゃぁ、お前さんはなんだっていうんだい?」
龍馬は頭をがぎがぎと掻いた。
「うーん?なんといえばいいんかのぉ。強制的に転生させられたと言えばいんかのぉ」
今度は恥ずかしそうに頬を軽く掻いた。
「転生だと?そんな馬鹿なことが」
龍馬の昔ながらの仕草に嘘はないと感じ勝は刀を収めた。
「信じてくれたがよ、先生。おそらくわし以外にも転生とやらをさせられている人間はなんにかいると思う」
龍馬は真剣な眼差しで勝を見つめた。
「そんな。で、そいつの狙いはなんだい?そんなにポンポン転生させられるものなのか?」
勝にはいまだ理解できてなかった。
「わしの知るところだと。わし、含めて3人」
「馬鹿な!!」
口を挟みそうになった勝を龍馬は手で制した。
「岡田以蔵、わし、そして、武市瑞山。その首謀者の名前は天草四朗」
「なんだって!!天草四朗!!」
常軌を逸している話に勝は唇をわなわなとふるわせているだけだった。
「先生は天草四朗を知っているのですか?」
「いや、詳しくはしらねぇが、キリシタンを率いて一揆をおこした首謀者ってことくらいだ。でも、もぅ、今の時代から数えると150年以上前の話だぜ。そんな奴がなんでまたこの時代に現れたっていうんだい」
勝はクラクラする頭を振ってこたえた。
「なるほど、あの術はバテレンの術ってわけか」
龍馬は顎をさすっていった。
「なんだい?その術っていうのは?」
「魔界転生っていうちょりました」
「それはりょうさんを生き変えさせらせた技の名かい?」
勝も顎に手をやりさすっていた。
「はい」
龍馬はそれだけいうと立ち上がり部屋を出て行こうとした。
「ちょ、ちょっと待ちなよ、りょうさん。で、これから、りょうさんはどうするんだい?」
勝は興味深そうににやりと微笑んだ。
「先生、わしゃ、とりあえず、天草の目論見に乗っかって動いてみようとおもちょります。ありがとうございました」
そういうと龍馬はいつのもように走り出して行ってしまった。
(死ぬなよ、りょうさん。あっと、もう死んでるんだったな)
勝はにこりと微笑んで空を見上げた。

焼き討ち事件後に旧幕府軍と朝廷軍が鳥羽・伏見で激突することになる。
そして、その戦いにもう一人の魔人が絡んでいるとは誰ひとり知る由もなかった。
 
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