自作即興・短編小説まとめ
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現実が不要になる日まで
この学校に入って二年。僕がここずっと続けている開発をしている。バーチャル・リアリティ(VR)に関する開発だ。最初の一年で視覚とVRのマップを制作する簡略化ソフトを作り、その後は少しずつ画質や聴覚に対するアクセスも増やし、少しずつ仮想範囲を広げている。
そして毎回、文化祭のようなイベントの時に公開してる。割と反響は良く、意見を貰って改善を繰り返している。学校内で公開することもある。
仮想世界は様々な形が作られている。自分が作ったのは宇宙の中とか、真っ白な部屋とか、廃墟の中、美術館の一室などなど、あまり現実的でない場所だ。これらは3DCGのソフトで作成し、専用のゴーグルで見れるようにしている。また、あまり遠くまでは出来ないが、オンライン上でそれを楽しむことも出来るようにした、その場合は場所を制限ない分、怪我のリスクが高い事を最初に表示させている。
その画面を利用して特殊な演出を作ったりするので、とても面白い。
死後の世界とかも、何処かの家とかも様々で、僕だけではなく他の関わっていない生徒も作れるようにしている分、とてつもない量を楽しむことが出来る。これは学校内だけだが、一つの巨大なコンテンツとなっている。だからと言って、僕はそこまで有名ではない。これはサークル活動の一環として行っているので、サークルとして有名になっている。色んな学科があったおかげで実現した一つの形なのだ。
聴覚について増やした成果。それは没入感だ。一つの空間に適した一つの音楽を追加した事で、仮想世界に存在するという事が、なおも増したのだ。視覚だけだったのが聴覚にまで達することによって、現実とは別の場所に居る錯覚を起こしやすくなった。
これは一つのこだわりのようなものだが、仮想に居るという実感から、別世界に居るという実感を与えるために現在は触覚にも影響を与えられないか考えている。これは最終的に、ヘルメット型から全身を埋める様な物に形を変化するだろう。その内ヘルメットだけでも水槽脳の様に出来るかもしれない。
現実とは違う。解放された空間に意識を解き放てるようにすれば、五感が風を感じる様な、そういうモノを作りたいと僕は思っている。
そして僕はそこに立ち、走り回り、飛んだり、現実じゃできない様な事をしまくる予定なのだ。
海に沈む。
草原を走る。
宇宙を飛ぶ。
空間に立つ。
真っ白な空間で、孤独で自由を得る。
僕の足を仮想で作ったら、もはや現実は要らないのかもしれない。
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