FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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セイバーの覚悟
前書き
いまだに最後の結末が決まらない今日この頃。
一時は2つまでは絞ったはずなのにいまさら新しい展開を思い付くというね。
しばらくはストックを更新していこうかな。うん、それでいこう。
『造形魔法対決勝ったのはグレイ・フルバスター!!この大魔闘演舞1日目の競技『隠密』で1位をさらわれた借りを見事に返しました!!』
『うわぁ!!無敗のルーファスが!!』
マトー君はルーファスを応援していたらしく、彼が破れたことに残念そうな顔をしていた。
『いやぁ、際どい勝負でしたね』
『グレイ選手の粘り勝ちといったところかね』
何度やられても諦めずにルーファスに挑んだグレイ。彼の諦めない強い精神力がこの勝利を勝ち取ったのである。
『妖精の尻尾、ここに来て貴重なポイント加算です!!』
ピッと音をたて1ポイント得点が追加され、妖精の尻尾は単独1位に躍り出る。
「よっしゃー!!流石だぜグレイ!!」
「このまま一気にいってほしいもんだ!!」
マカオとワカバが肩を組み、グレイの逆転勝利に酔いしれている。
「見事でした」
「時に想いは計算を越える。初代の言った通りになりましたな」
「絶対に勝つ、という強い想い。それがなければどんな計算も意味を成しません。私はそれに賭けただけです。グレイの精神力がルーファスのそれを凌いだということでしょう」
メイビスの言葉を聞いたマカロフは立ち上がると、腕を組み魔水晶ビジョンを見つめる。
「ここで負けるわけにはいきませんからな。ルーシィ救出に向かったナツたちのために。勝負はまだここからじゃ!!フィオーレ王国最強のギルドは妖精の尻尾、それを証明してやれぃ!!」
ルーシィやナツ、ウェンディやミラのためにも絶対に負けられないシリルたち。彼らのいつにも増して鋭い視線を飛ばしていた。
『さて、ここで得点の状況を見てみましょう』
まず最初に映し出されたのは赤い妖精のギルドマーク。
『1位は妖精の尻尾、52ポイント!!残りは6人、リーダー1、サブリーダー2、ノーマル3!!』
続いて紫の虎のような形のギルドマークが映される。
『剣咬の虎は2位、51ポイントカボ。ルーファスが負けちゃいましたがポイントの変動から行くと残りはリーダーが1、サブリーダーが2、ノーマルが2カボ』
そして2位にもう1つ、蛇と女性の合わさったギルドマークを使うこのギルドがランクインしている。
『同ズく2位に蛇姫の鱗51ポイント。こちらは残りがリーダー1、サブリーダー2、ノーマルが1だね』
この3ギルドから少し離されたところに位置するのは今大会屈指の女剣士を擁するこのギルド。
『4位は人魚の踵、44ポイント!!残りはリーダー1とサブリーダー2となります!!』
最後に残るはかなり厳しい戦いを強いられているこのチーム。
『5位は青い天馬32ポイント!!こちらは残るはサブリーダーただ1人となっています!!
さて、妖精の尻尾が単独トップになりましたね』
『しかも5人とも健在しとるからね』
『妖精の尻尾、かなり有利になりましたねカボ』
チャパティ、ヤジマ、マトー君がそう言う。ルーファスの敗退を受け欠員を出した剣咬の虎はそれぞれ様々な考えを持っていた。
「ふん。やられたのかルーファス。つーことは、その分俺の獲物が増えるってこったな」
オルガは三大竜がやられた時と同様、残念がるということなど一切なく、むしろ嬉しそうな表情をしている。
「やはり強いな妖精の尻尾・・・しかし、ガジル、シリル、お前らを倒すまでは俺は誰にも負けるわけにはいかん」
ローグは以前からずっと倒したかったガジルを、そしてトリプルバトルのリベンジをするべきシリル、2人の滅竜魔導士を意識していた。
「ルーファス・・・」
「そんな・・・」
フロッシュとキセキはルーファスの敗退を受け、目に涙を浮かべて悲しんでいる。そしてこれにはもちろん大きな理由があった。
一方もう1人の剣咬の虎の魔導士、ミネルバはルーファスの脱落を受けてどこか楽しそうに口角を上げる。
「崩れていくのか、この剣咬の虎が。それとも・・・スティング、お前の力で新たな最強の座に登り詰めてみせるか。いずれにせよ、興味深いことだ。それに・・・」
ミネルバはビジョンに映るグラシアンを見て何かを思い出している。
「そなたには策を授けたからな、グラシアン。勝ちたければ迷うことなくやるのだぞ」
「レクター・・・」
クロッカスの建物の間で腰を下ろし、何かを考えている様子のスティング。彼の頭の中は一昨日のことでいっぱいだった。
一昨日の夜・・・
剣咬の虎が泊まる宿、クロッカスガーデンの大広間。ここでは大勢の剣咬の虎の魔導士が見守る中、ソファに腰掛けたジエンマの前に3人の魔導士が立たされていた。
「スティング・・・ローグ・・・グラシアン・・・あの様はなんだ?」
ジエンマの問いに3人は答えず、ただ顔をうつ向かせていた。
「なぁ、おい。うぬらは滅竜魔導士、日頃からずいぶん鼻高々に強ぇだの最強だの、でかい口叩いてたよなぁ?ああ?
それをおめおめと、同じ滅竜魔導士に、しかもあんなガキにぶちのめされるとはよぉ」
「「「・・・・・」」」
「聞いてんのかぁ!?んん!?」
沈黙を保ってきた三大竜。彼のうち、1人がここでようやく口を開く。
「言葉もありません、完敗です」
普段は無口なローグがスティングやグラシアンよりも先に口を開いたのだった。
「シリルは、天空魔法を合わせた水を使わずに俺たちを圧倒した・・・」
よほど悔しかったのか、ローグの手に力が入る。
「想像を遥かに越える強さです。シリル・アデナウアー」
その言葉を聞いたジエンマは自身の前にあったワイングラスを倒し、彼らの目の前に足を踏み出す。あまりに怒っていたがためにジエンマの踏み出した部分の床が凹んでいた。
「それが最強ギルド剣咬の虎の魔導士の言葉か、ああ!?
誰があんなみっともねぇ姿を晒せと言ったよ、誰が敗北してこいと言ったよ。最強ギルドの名を・・・汚しよってからに!!」
「「「うわぁぁ!!」」」
ジエンマが全身から魔力を放出すると、近くにいた3人は耐えることができずに飛ばされてしまう。
「スティング君!!」
「ローグ!!」
「グラシアン!!」
レクターとフロッシュとキセキはそれぞれの滅竜魔導士の元へと心配しすぐに駆け寄る。
「貴様らに剣咬の虎を名乗る資格はないわぁ!!」
ジエンマは怒りに身を任せ、ローグを投げ飛ばし、グラシアンを殴り上げ、スティングを蹴り壁にぶつける。
「消せ、ギルドの紋章を消せ!!我がギルドに弱者はいらぬ!!負け犬はいらぬ!!」
ユキノ同様にギルドから3人を追放しようとしたジエンマ。その様子を見ていたオルガ、ミネルバ、ルーファスは無様にやられる仲間の姿を楽しい余興でも見ているかのように見ている。
「ま・・・まぁまぁマスター、スティング君たちは頑張りましたよ」
「あぁ?」
レクターはジエンマの迫力にビビりながらも、大切な人たちを守るためにジエンマに話しかける。
「今回は負けちゃったけど、僕はスティング君を誇りに思います」
「レクター・・・」
「僕は思うのです。人は敗北を知って強くもなれるって。スティング君は今回のことで多くのことを学びました。ですから今回のことは―――」
レクターが最後の言葉を発するよりも早く、ジエンマが口を挟む。それも誰も予想できていなかったことを。
「誰だうぬは?」
「え!?」
レクターはジエンマが自分のことを忘れていると思い、彼に見えるように服をまくり上げて背中に刻まれたギルドマークを向ける。
「や・・・やだなマスター・・・僕だってここにセイバーの紋章を入れた、れっきとした・・・」
レクターは自分がギルドマークを見せたと同時にジエンマのプレッシャーがはね上がったことに気づき、冷や汗を流す。
「なぜに犬猫風情が我が誇り高き剣咬の虎の紋章を入れておるか」
マスターはレクターに右手を向け、彼に魔法をぶつける。
「消えぇ!!」
魔法が当たった途端、レクターのいた場所が粉々に砕け散る。
「スティング・・・君・・・」
そして直接に攻撃を受けたレクターは、跡形もなく消滅した。
「レクターーーーーーーーー!!!!」
涙を流し消えてしまった仲間の名前を叫ぶスティング。レクターのいた場所にはジエンマの攻撃が当たった跡以外、何も残っていなかった。
「あ・・・ああ・・・レクターが・・・」
「き・・・消えちゃった・・・」
フロッシュとキセキはあまりのことに恐怖し、表情を強張らせる。
「フロッシュ!!」
「キセキ!!」
「ローグ・・・」
「グラシアン・・・」
ローグとグラシアンは矛先が彼らに向かないようにと抱き締め、ジエンマから見えないように背を向ける。
「目障り目障り。猫が我がギルドの紋章など入れてからに」
ジエンマはレクターを消したことにより満足したようにしている。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
大切な相棒を消されたスティングは、ショックのあまり大声で泣き叫んでいた。
「やかましいぞスティング」
「なんてことを・・・あんたはなんてことを・・・」
スティングは顔を覆いながらフラフラと立ち上がる。
「黙れ!!たかが猫1匹!!」
「!!」
その瞬間、スティングの中で何かが弾け飛んだ。
ドゴォン
スティングの鉄拳がジエンマの腹部を貫く。ジエンマは体を貫通されたためにそのまま立っていることができず、床に倒れる。
「マジか」
「マスターやっちまったぞ」
「どうすんだこれ」
剣咬の虎の魔導士たちはスティングがジエンマを攻撃したことに動揺している。
「スティング・・・」
「お前・・・」
ローグとグラシアンはジエンマを見下ろし、呼吸を整えようとしているスティングを見つめる。
フロッシュとキセキは次から次に起こる惨劇に茫然自失である。
「スティング・・・ただで・・・済むと・・・」
「それで良い」
ジエンマがスティングに何らかの処罰を下そうとした時、傍観していたミネルバがスティングの方へと歩み寄る。
「父上の恐怖統制は今ここに終わりを告げよう。父上の力をも越えるスティングこそ、新たなマスター候補にふさわしい」
「スティングが・・・マスター候補?」
ミネルバのいきなりの発言にオルガとルーファスを中心としたメンバーたちは驚愕している。
「お嬢」
「ミネルバ・・・貴様・・・何を言って・・・」
「黙るが良い」
ミネルバは床にへばりついているジエンマを、まるで汚物でも見るかのような目付きで見下ろす。
「負け犬などいらんのだろ?父上の持論に従うなれば」
「くっ・・・」
ミネルバに痛いところを付かれたジエンマは悔しさに歯軋りをさせる。
彼女はジエンマからスティングへと視線を移す。
「スティング、そなたに無く、シリルとナツというものにあるもの。それこそが想いの力だ」
「想いの・・・?」
スティングはミネルバが何を言っているのかわからずに呆けている。
「知らず知らずのうちに父上に感化されていたようだが。仲間などいらぬ、力こそがすべて。だが、そなたの本質は違う。レクターを想う気持ちが力になる」
「想いの力・・・」
「どういうこと?」
2人のやり取りを見ていたローグが呟き、フロッシュが何を言っているのか理解できずにローグを問いかけている。
「スティング、そなたはその力を手に入れたのだ。そなたはシリルを・・・いや、ナツをも越える」
今までのスティングならナツを越えると言われれば純粋に嬉しかったであろう。しかし、今は違う。大切な友を失った今の彼には、そんなものなど意味がなかった。
「お嬢・・・俺はもう・・・」
「案ずるな、レクターは生きておる」
「え・・・?え!?」
スティングはミネルバの言葉に、希望を見出だしたような、そんな表情をする。
「あの瞬間、妾の魔法で別の場所へと飛ばしたのだ。父上の魔法で消滅する直前にな」
「本当か!?お嬢!!」
スティングはそれを聞くと安心し、その場に座り込む。
「レクターが生きてる!!」
「ああ」
「よかったな」
「うん!!」
これにはスティングだけでなく、ローグやグラシアン、フロッシュとキセキも安心している様子だった。
「ありがとう・・・ありがとうお嬢!!早くレクターを戻してくれ!!本当にありがと―――」
「甘えるな」
目を擦りお礼をいうスティングに対し、ミネルバはそう言う。
「え?」
「大魔闘演舞にて優勝するまではレクターは渡さん」
「何言ってんだよお嬢!!頼むよ!!今すぐレクターを!!レクターを返してくれよ!!」
スティングは心の底からミネルバに懇願する。しかし彼女は首を縦に振ることはなかった。
「妾は父上とは違う。しかし剣咬の虎のあるべき姿が天下一のギルドであることに変わりはない。そなたらは確かに負けた。しかし今、レクターを失ったことによりそなたは新しい力を手に入れ、生まれ変わったと言える。
感じたであろう?父上を貫いたそなたの魔力の強さを。だがそれでは足りぬ。そなたは手にいれた力を証明せねばならん。民に力を誇示せねばならん」
スティングはその言葉にただただ聞き入った後、何かを考えるように顔をうつ向ける。
ミネルバは背を向け、部屋の出口へと向かおうとする。
「妾を倒そうなどと愚かな考えを起こすでないぞ。レクターの命は妾が握っていると知れ」
そういい残しその場を去ろうとするミネルバ。それを見たスティングは立ち上がり彼女を呼び止める。
「お嬢、優勝すればレクターは返してくれるんだな?」
「そうだ、勝てば良い。そなたの想いの力を見せてみよ」
「わかったよ」
「俺は必ず、優勝する」
スティングは静かなる闘志を燃やしていた。
「ヤバイな・・・あの1点がジワジワと効いてきている・・・だが・・・」
グラシアンは次々に映し出されるいまだ健在中の魔導士たちを見てなぜか笑みを浮かべている。
「俺は確実に6ポイントを手に入れる術を持っている。そしてシリル、貴様を倒せば計9ポイント手にはいるんだ」
グラシアンは右手に力を込め、無傷のシリルを見据えている。
彼はシリルがザブリーダーだと読んだらしく、大量得点を上げるチャンスを見出だしたようだった。
「待ってろよキセキ、フロッシュ。俺はどんな手段を使っても必ずレクターを助けてみせる。だから・・・」
グラシアンは大好きな親友のことを思い浮かべる。
「俺たちが帰ったら、笑顔で迎えてくれよな」
グラシアンはゆっくりと立ち上がり、ミネルバから授けられたある戦法のために、ある人物の元へと歩き出した。
後書き
いかがだったでしょうか?
作ってから思った。あんまりこの話必要なかったわ(笑)
グラシアンの策はあと2、3話くらいしたら出てくる予定です。
次回もよろしくお願いします。
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