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異世界に呼ばれたら、魔法が使えるようになりました。

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 さて、今更ながら当初の目的を思い出そうと思う。
 “魔法結晶石”の高度な核をどちらが先に手に入れられるかだ。
 というわけで僕達は更に奥まで走っていくとエイダの悲鳴が聞こえた。

 また“白毛玉”も出てきたのかと思っていたが……エイダが立ち止まってプルプルと震えているのが見える。
 そこは石が沢山転がっている場所で、エイダは凍りついた様に動けずにいる。
 しかもいつもの場所よりも明るい気がする。

 何かがあるんだろうかと僕が思って歩いていくと、そのエイダが立ち止まっている先は吹き抜けになっているようだ。
 上の方は切り立った崖を縁取るように木々の緑が鮮やかに輝いている。
 その緑が途切れた場所には青い空が広がっている。

 ここから見上げる範囲では快晴のようだ。
 けれどその崖があるので空からくる光はどことなく薄暗い。
 現にだんだんに僕達のいる高さに向かう度に、崖の部分の色が黒ずんで来てからまた明るくなっているのだ。

 つまりこの一番下の方で光が放たれているのである。
 それもこれまで歩いてきた場所よりも強い光が。
 この山のエネルギーが吹き出してまばゆいばかりの輝きを表していると考えてしまいそうなその場所では、多数の“白光蝶”が集まっていた。
 
 もしかしたならここがその蝶の巣のようなものなのかも知れない。
 蝶の鱗粉が羽ばたくごとに舞い落ちて、白い光をこぼしている。
 蝶自身も光り輝いていて、幻想的な光景が広がっている。

「綺麗だ」

 つい僕は呟いてしまう。
 するとそこでくるりとエイダが振り返る。
 その顔には涙が浮かんでおり、

「綺麗? 綺麗なんて思えないわよ、貴方の目は何処についているの!」
「えっと、ここですかね」
「! そのまま返さないで頂戴! 貴方は全然見えていないのね。いい、見なさい!」

 そこでエイダがある場所を指差した。
 それはすぐ側にある地面でそこには、

「あ、さっきのムラクモ毛虫」
「毛虫って、こんなおぞましい存在がこんな場所にいるなんて、くぅう、これでは近づけないわ」
「何処に?」
「何処にって、“白光蝶”の集まっている所に“魔法結晶石”の高度な核があるんじゃない! は!」

 そこでエイダがしまったという顔をした。
 そして何も知らなかった僕は、なるほどと頷いてから、

「では、早速とりに行かせていただこいます。ご協力ありがとうございました」

 僕はエイダに真顔でお礼を言って、レイアもエイダにお礼をいう。
 エイダは怒ったように震えているが、毛虫の行進に阻まれて動くことが出来ない。
 そして僕達は毛虫を避けるように地面を踏みつけて蝶の集まっている場所に近づく。

 蝶は近づくとフワァと空を跳んでいきその側には、卵らしいものが見て取れる。
 できるだけ卵には触れないような場所でと思ってみるとちょうどいい紫色の透明な大きな石があった。
 それも含めて他にも小さいものをいくつも拾って、

「レイア、これぐらいで足りるかな?」
「十分かと」

 そこそこおおきな袋がいっぱいになるくらいの量を回収してエイダが棒立ちになっている。
 そこで僕は、

「えっとこれで僕の勝ちですね?」
「……認めない」
「……いえ、でも約束です」
「そうね……うう」

 呻いたエイダはしばし何かを考えるような素振りを見せてから、

「いいわ分かったわ。私も貴方に付いて行って何度も挑戦してやる!」

 エイダが僕にそう宣言したのだった。




 
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