DQ5~友と絆と男と女 (リュカ伝その1)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
14.天国と地獄の違い。それは天国には美女がいて、地獄には悪友がいる事。
<海辺の修道院>
気が付くと視界には、白く清潔な天井が映った。
視界の隅には若く優しそうな美しい女性がこちらを見ている。
「ここは…天国ですか?」
「いえ、ここは「何、寝ぼけた事言ってんだ!」
視線を声のする方へ向けると、ヘンリーが人の悪そうな笑みを浮かべて立っている。
「はぁ~、何だ…地獄か…」
俺は身体を起こしふて腐れる。
「美しい女神様が佇んでるから天国かと思ったのに。ヘンリーがいたよ!天国の訳無いね!死んでるのなら、ここは地獄だ。間違いないね!」
「お前なぁ…」
・
・
・
どうやら俺は三日間も意識を失っていた。
その間シスター・アンジェラが付きっきりで看病をしてくれたらしい。
俺、マリアさん、ヨシュアさん、ついでにヘンリーも無事助かり、この海辺の修道院にご厄介になっている。
「アンジェラさん!僕の為にありがとうございます!ついでと言ちゃぁなんだけど、まだ少し気分が優れないんです」
俺はアンジェラさんの両手を握り締めアンジェラさんに迫る。
「まぁ…大丈夫ですか?」
「アンジェラさんが添い寝をしてくれれば(ゲシ!)あた!」
ヘンリーの踵が後頭部にヒットする。
「シスターを口説くな!馬鹿者!」
「ど、どうやら元気になられた様で…」
アンジェラさんが顔を赤らめ去っていく。ああ~ん…待ってー!
「何で人の恋路を邪魔するの?だいたい、命の恩人に対して酷くねぇ?」
そう俺はあの水路で四人の命を救った。
ヨシュアさんのヤリを投じて、10メートル程奥にあるスイッチを押したのだ!
すごくね!?
俺、すごくねぇ!?
「お前のそれは恋路じゃない!…まぁいい、それより来いよ。これからマリアさんのシスターとしての洗礼式があるんだ」
ほぅ…シスターとは益々俺好み。
洗礼式は厳かに行われた。
さすがに場の空気を読んだね俺、歌わなかったもん。
はぁ~シスターかぁ~…いいのぅ…
はっ!俺にはフレアさんっと言うシスターがいるではないか!
サンタローズに帰らないと!
あの胸に抱き付かないと!
「リュカ!目が覚めたか。心配したぞ」
フレアさんのオッパイを想像していたら、いつの間にか儀式は終わり、ヨシュアさんが俺に話し掛けてきた。
「私まで救って貰い感謝に絶えない。これからどうするのだ?私はここの留まり、マリアを守る為この修道院で働こうと思っている」
「僕は、サンタローズに帰らないと」
そう!あのオッパイに顔を埋めないと!!
「そうだ!リュカは一旦サンタローズへ帰り、パパスさんの遺言を実行するんだ!」
遺言!?
何だそれ?
…何だったけ?
「俺も付き合うぜリュカ!お前の母親を魔族の手から救い出す旅に!」
あー…言ってた…確かに、言ってた!
忘れてないよ。
本当だよ。
「そうか…こんな事しか出来ないが、これを受け取ってくれ!」
そう言って差し出した袋を、ヘンリーが受け取る。
何でお前が受け取るんだよ!俺にくれたんだろ!
「2000G!こんなにいいんですか!?」
「いや、少ないくらいだ!お前達がしてくれた事に比べれば…」
お前達って…殆ど俺じゃん!
頑張ってたの、俺じゃん!
何でお前が金受け取んだよ!
「ヘンリー様、リュカ様。本当にありがとうございます」
マリアさんが瞳を潤ませて謝意を伝えてきた。
「私には、お二人の旅の無事を祈る事しか出来ませんが、どうか御自愛を」
そんな事無い!俺の童貞を奪うって任務があるよ…って言おうとしたら、
「ヘンリー、リュカ。往くのですか?」
と修道長が話し掛けてきた。
昔は美人でした…って感じのおばさん。萎えちゃった…
「はい。修道長」
ヘンリーが勝手に話を進める。
「リュカ。あなたはもう立派な大人です」
まだ未経験だけど…はっ!『私が男にしてア・ゲ・ル♥』とか言うなよ!
「自分の往く道は自分で見つけなくてはなりません。どうか神の御慈悲があります様に」
修道院のみんなから快く送り出されて、俺とヘンリーは旅に出る。
あぁ、もう少しゆっくりしてたかったなぁ…
<オラクルベリー>
ヘンリーSIDE
修道院を出て半日。
何とか日暮れ前にはオラクルベリーに辿り着いた。
ここまで数度モンスターと戦闘をしたが、武器を持たぬ俺はまるで役に立たなかった。
殆どリュカのバギで乗り切った…
ただ、リュカはあまり戦いたくない様で、俺も素手を…メラを使い戦った。
本来ならば俺はかなりの傷を負っているのだが、リュカのホイミでほぼ無傷状態だ。
リュカは優しすぎる。
俺がもっと強くならないと…
俺達は町に着くと装備を調える為、武器屋や防具屋を回る。
俺は鎖鎌などを買い装備を調える。
しかしリュカは自分好みの装備が無いらしく、何も買わずに町を眺めている。
確かにリュカは強い。
ここら辺のモンスターなら武器等いらないだろう。
しかしこの金は、殆どリュカのおかげで手に入れた金だ。
俺一人が使っていい物ではない。
「リュカ、お前も何か買っておいた方がいいんじゃないか?」
既に暗くなった町を歩きながら、俺はリュカに問いかける。
「う~ん…じゃぁ、アレ買ってくる」
既に目当ての物はあったらしく明確な足取りで目的の場所まで足を進める。
少し開けた所に、一人の女性が佇んでいる。
リュカはその女性に話し掛けた。
え?
「ねぇ?君いくら?…200!?」
え!?
「うーん…一晩好き放題で200?…よし!あっ、お金持ってくるから待ってて」
そう言って俺の所へやって来た。
「ヘンリーはもう十分買い物したでしょ?残りのお金ちょうだい」
俺は力任せにリュカの胸ぐらを掴み、その場から移動する。
「痛い、痛いよ!何!?何なの?あっ、ちょっと…彼女待たせてるから…ヘンリー、ちょっと、ヘンリー!?」
人気のない路地へ来ると、リュカを壁際に押しつけ俺は怒鳴りだした。
「この金はお前の旅の無事を祈るヨシュアさんが、無理してくれた大切な金だ!一時の快楽の為に無駄に使う事は絶対に許さん!」
「分かったよ、分かった!じゃぁ別に欲しいもん無いからいいよ」
リュカの目を見れば分かる。
本当に欲しい物が他に無いのだろう。
こいつは何時も本気だから厄介だ。
「女以外欲しい物が無いってどういう事だよ!もっとこう、旅に必要な物とかあるだろ」
「?、例えば?」
…そう言われても、俺は旅なんてした事がないから答えられないでいる。
ふと見ると、リュカの横の壁に『馬車有りマス』の張り紙に気付いた。
「馬車だよ…馬車があれば旅が楽になる!」
「馬車って…今いくら残ってるの?」
半笑いで尋ねるリュカに俺は答える。
「800Gくらい」
「いくら安い馬車でも、その倍はするよ。ないない!800の馬車なんて。200で女買った方が現実的だよ」
「うるさい!頭金ぐらいにはなるかもしれないだろ!もう決めた!馬車買う、絶対買う!この旅で財布は俺が預かる。お前は碌な使い方しない!」
コイツの言い分の方が現実的って言うのがムカつく!
絶対…何としても馬車を買ってやる!!
「馬車売ってるの…ここ?」
怪しげな店の前でリュカが呟く。
「『オラクル屋』って書いてあるし…ここだろう…」
俺とリュカは、そっと店内に入った。
「いらっしゃい!お客さん、旅人だね!だったら馬車が必要不可欠!さぁ、買った、買った!毎度ありぃ!」
すると店主らしきドワーフが気さくに話しかけ、勝手に話を進める。
「いや、買うにしても値段次第です」
リュカの問いに喜んだ店主は、
「今なら、立派な馬付きで3000Gだよ!」
さ、3000G…馬付きで3000Gは確かに安い…しかし今の俺達には…
「高いなぁ…まけてよ」
「兄さん綺麗な目をしているなぁ!いいだろ!まけてやる!」
「ほんとう!?嬉しいな。あっ、でも僕そっちの気は無いからね!」
「がっはっはっは!兄さんは面白い。よっしゃ!300Gでどうだ!」
3000が300!?これは買うしかない。
「買っ「う~ん…まだ高い!この、鉄の杖もおまけに付けてよ!」
なっ!この馬鹿!300で十分だろ!
「兄さんは買い物も上手いなぁ!よし!鉄の杖付きで500G!どうだ!」
「よし!買った!」
「ほれ、鉄の杖は持って行きな。馬車は明日の朝には用意しておくから、朝になったら町の外へ取りに来てくれ」
翌朝、俺達はかなり立派な馬車を手に入れた。
リュカ曰く
「あの時点で馬車がどんな物かは分からない。もしかしたら騙されるかもしれない。だから、鉄の杖も買う事にした。馬車が騙されても、鉄の杖が500Gならお釣りが来る」
なるほど…ちゃんと考えてたんだ…なんか、すげぇーなこいつ。
そのリュカは、馬車馬とじゃれている。
「やぁ、随分と美人なお馬さんだねぇ。お名前は何て言うの?」
「ヒヒン!」
「パトリシアって言うの!綺麗な名前だ。よろしく、パティ!」
なんで馬と会話が成立してるんだ?やっぱ、すげぇーなこいつ。
ヘンリーSIDE END
ページ上へ戻る