真田十勇士
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巻ノ二十二 徳川家康という男その三
「どうであろうな」
「天下の地かといいますと」
「違うやも知れぬ」
「左様ですか」
「関東は治められるであろうが」
この地はというのだ。
「天下はどうであろうな」
「天下を治めるには地も必要ですが」
根津も言う。
「その地は多くはないですな」
「その通りじゃ」
「東国では鎌倉だけでしょうか」
「どうであろうな、近畿には都と大坂、安土にじゃ」
信長はさらに言った。
「奈良もそうであったがな」
「奈良もですな」
「だからそこに都が置かれたのじゃ」
平安の都に移る前はというのだ。
「あの地にな、もっともあの頃はまだ天下は今よりも狭かった」
「そういえばまだ東国は完全に収まっていませんでした」
伊佐が幸村の今の言葉に応えた。
「みちのく等も」
「東国が収まるのは平安の後じゃ」
「坂上田村麻呂公よりでしたな」
「それまでは本朝であって本朝でなかった」
「政が届いていなかった」
「そうであった」
奈良が都であった頃はというのだ。
「あの頃の本朝は奈良で治まったが」
「今は」
由利はあえて幸村にだ、ここで問うた。
「違いまするな」
「うむ、奈良で治めるには天下は広くなった」
「では今の奈良は」
「天下を治められる地ではない」
そうなったというのだ。
「やはり天下を治められる地は少ないな」
「四つしかありませぬか」
少し眉を顰めさせてだ、望月は言った。
「都と大坂、安土、そして鎌倉」
「それだけか」
「やはり少ないですな」
「この駿府は違いますな」
清海は一行が今いる駿府のことをだ、主に尋ねた。
「天下を治められる地では」
「この三国を治めるには最適じゃがな」
「駿河と遠江、三河を」
「最もよい場所であるが」
「天下を治めるにはですか」
「小さいししかも場所がよくない」
「場所もですか」
駿府のその場元聞いてだ、清海は言った。
「よくありませぬか」
「東海道の通り道じゃ、それではな」
「通り道に過ぎぬが故に」
「道をはじめて終わらせられる様な地でなけえれば」
「天下を治める地にはなれない」
「そういうことじゃ」
「そういえば安土は」
猿飛が気付いた、この地について。
「あの場所は琵琶湖に面していて道も開けており」
「便がよいな」
「だからですか」
「四神相応ではないというが」
「天下を治められましたか」
「そうなっておった」
幸村は猿飛にも話した。
「もっとも大坂の方がよいであろうがな」
「道については」
「そうじゃ、そして四神が揃っておるのが都じゃ」
まさにその地だというのだ。
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