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ドリトル先生の水族館

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第十二幕その八

「あの人と」
「日笠さんとかな」
「そうよ、どうしてなのよ」
「サラ怒っていないかい?」
「怒ってるわよ」
 その通りだとです、サラはすぐに言葉を返しました。
「見ればわかるでしょ」
「そうだよね、ステーキが口に合わなかったのかな」
「とても美味しかったわよ」
 むくれたお顔で返したサラでした。
「コースの他のお料理もね」
「うん、日笠さんのアドバイス通りね」
「凄くね。ただ」
「ただ?」
「兄さん私がどうして怒ってるかわかってないでしょ」
「どうしてなんだい?」
 実際にこうしたお返事でした、先生は。
「ステーキが口に合わなかったかっていったら違うし」
「だからよ」
「だから?」
「ここまで言ってもわからないことは」
「だから何がわからないのかな」
「兄さんがね」
 こう注意を入れるのでした。
「全くわかっていないじゃない」
「そうなのかな」
「いい、ヒントをあげるわ」
 怒って呆れながらも言うサラでした。
「ああしたお誘いの時は皆で行かないの」
「一人でかな」
「二人でよ」
 さらに怒ったサラでした。
「二人で行くものよ」
「というと日笠さんと一緒にだね」
「そうよ、いいわね」
「今度からだね」
「絶対にまたお誘いがあるから」
 サラはこのことを読み切っていました、そのうえで先生に言うのです。
「わかったわね」
「うん、じゃあね」
「そういうことでね。けれどね」
「けれど?」
「いや、兄さん深海にも行きたいのね」
「そうだよ」
「じゃあ行ってみたら?」
 この話題については怒らずに言う日笠さんでした。
「それならね」
「いや、そうもいかないんだよ」
「そうなの」
「深海艇に乗らないといけないからね」
 だからだというのです。
「あそこはね」
「そうそう簡単には行けないのね」
「流石にね」
「兄さん地球のあちこちに行って」
 そして、と言うサラでした。
「月にも行ったのに」
「海の底はね」
「まだなのね」
「そうなんだよ」
「それでこれから行くにしても」
「ちょっとね」
 行くことはというのです。
「難しいよ」
「頼んでみたら?誰か」
「それもね」
「だからそこで遠慮するのが駄目なのよ」
 サラは先生が遠慮したのを見て少しむっとして言いました。
「兄さんのよくないところよ」
「無欲っていうんだね」
「無欲は美徳だけれど」
 それでもというのです。 
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