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蚊の毒

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4部分:第四章


第四章

「それになったら死にますからね」
「死ぬのかい」
「その危険は高いですよ」
 こう言うのである。
「マラリアよりも」
「マラリアよりもなんだ」
「ですから、注意して下さい」
 また言うアッディだった。
「かかったら」
「かかったら?」
「その時はある場所に行きます」
「ある場所!?」
「ええ、そこに行きますので」
 怪訝な顔になったサルミネンに対しての言葉だった。
「任せて下さい」
「その時はかい」
「まあ今すぐの方がいいですかね」
 アッディは言いながら話を進めてきた。
「あの病気のことを考えますと」
「えっ、そんなにまずいのかい?」
「その病気って」
 それを聞いて彼だけでなく塚本も問うたのだった。
「何かよくわからないけれど」
「そんなになのかい」
「ですから。下手したら死にますよ」 
 このことをここでまた言ったアッディだった。
「本当にね」
「死ぬからかい」
「じゃあマラリアみたいなものかな」
「マラリアより恐ろしいですね」
 ところがアッディは今度はこう言うのだった。何とマラリアより怖いというのだ。蚊によってかかる病気の中で最も恐ろしいと言われるそれよりもだ。
「あれは」
「何かそれは」
「想像できないね」
 それを聞いて互いに顔を見合わせて言い合う二人だった。
「マラリアよりもって」
「アフリカには独特の風土病が多いけれど」
 それもまた暗黒大陸と呼ばれた由縁の一つである。エボラもそうだしエイズもだ。そうした風土病がかなり多い場所なのは事実である。
「それでもそんな病気があるんだね」
「まずは一晩様子を見ましょう」
 アッディの話が続けられる。
「一晩ですが」
「一晩なのかい」
「はい、そうです」
 またサルミネンに述べるのだった。
「一晩経って起きたら症状が出ますから」
「その症状がかい」
「その時に驚かないで下さいよ」
 くれぐれもといった言葉だった。
「絶対に」
「絶対にっていうのかい」
「そうです。絶対にです」
 言葉も表情も念を押すものだった。かなり真剣な面持ちが夜の火に照らし出されてきていた。
「何があってもですよ」
「マラリアみたいな高熱が出るのか」
「それともエボラみたいな出血熱か」
 サルミネンと塚本はそれぞれ考えた。それがどういったものかどうにも想像ができなかった。しかし一晩と言われたのは事実だった。
 それでその夜はそれで終わった。サルミネンも塚本も休んだ。そうして朝起きるとだった。
 サルミネンは起き上がれなかった。まずは物凄い高熱に襲われたのだ。
「何度あるかな」
「まずいな、これは」
 体温を測ってみた。その体温計が指し示したそれを見てまずは唖然とした塚本だった。
「四十度あるよ」
「そうか。それだけあるのかい」
「ああ、これはまずい」 
 二人は朝のテントの中にいた。サルミネンは毛布の中で寝たままだった。
 
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