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エイダの悲鳴で僕は我に返る。
それと同時に金色の触手が氷を叩き割るのが見えて、僕は即座に“魔法結晶石”を取り出し、魔力を込める。
多分これくらいなら大丈夫、そう思って水色の“魔法結晶石”に力を込めるイメージを頭に浮かべる。
鈍い音がして魔法陣が浮かび上がり、取り出した“魔法結晶石”が小さく震えるが……それ以上は大きな変化はない。
同時に風がうずまき、前方へと放出される。
突風が吹き荒れてそれの影響で僕たちはめを薄くしか開けていられない。
けれど離れた場所に何かがぶつかる音がして、そこで僕は魔法を止めるよう心の中で強く思う。
そうすると、ぱちんと音がして魔法陣が消え、小さく震えていた“魔法結晶石”がころんと僕の手の中に落ちる。
今のような感じでいいらしい。
そしてその魔法を止めると瞬時に風が止まり、打ち付けられて動きの鈍った“白毛玉”がいる。
手加減したとしてもあの壁にたたきつけられて動きを止めず、今もこちらを狙うようには這おうとしているように見える。
あの蝶と間違えて食べられるなんてたまったものではないので、どうしようかと思って先ほど読んでいた本の魔法を思い出す。
そしてちょうど拾ったもののなから茶色いものを取り出して、先ほどの本を開く。
加えて直ぐに他の人達に、
「ちょっとの間、あの“白毛玉”は足止めできないかな」
「では、私が……」
レイアが杖を振りかざそうとした所で、それをリリアが止めた。
「その杖の魔力の結晶、だいぶ減っているんじゃない? 後で、彼氏に補充してもらえばいいんじゃない? レイア」
「……そうですね」
レイアが少し黙ったから頷いた。
でも彼氏って言って僕の方を指差すのはどうかと思う。
一瞬、ドキリとしてしまった。
しかもリリアはなんとなく楽しそうに笑っているし、こう、確信犯というか……というか気にしてしまう。
だってレイアは可愛いし、僕に優しいし気にかけてくれているというか……いやいや、今はそういったことを考えている場合ではなくと思っていた所で、
「よーし、それにそうしないと私の出番が無くなりそうだしね。ナイフに仕込んだタイプの魔法を試してみたかったのよね」
「リリア、今は非常に危険な所なので、実験とか遊びのようなものは控えて欲しいです」
レイアがリリアにそう言うが、リリアは肩をすくめて、
「大丈夫でしょ? だって貴方が選んだ子がそこにいるわけだし、いざとなったらまるっとお任せするわ」
と言った無責任な発言をリリアがして片目を瞑る。
無責任なその発言だが僕へのプレッシャーが更に大きくなって襲いかかってきた気がするのはいいとしてそこで、リリアが駆け出し、
「“氷の鎖は、数多のものを縛り、眠らせる”“凍てつく鎖”」
そう告げると共に彼女はナイフを三本投げる。
それが地面に着弾すると同時にその場で青白い光の魔法陣が浮かび上がって、氷の鎖が現れてその“白毛玉”の行く手をさえ切り捕らえようと動く。
とりあえずは少しの時間は稼げそうだった。
だから僕は魔道書を取り出し、茶色い核となるそれを握りながら、それをつくりあげようとしたのだった。
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