幽霊と姉とシスコン説?
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義理姉の実の母の霊?
前書き
妹好きで空想シスコンの俺、斎藍氏に姉が出来てしまった。
過去の話をしよう。
俺の家は母子家庭だ。実の父は俺が小さいころに亡くなった。
この16年の人生で2人程の父親と、1人の母親の彼氏が出来たが、妹ができることがなかった。俺は妹もののギャルゲー。アニメなどを物色している。
そして今度は3人目の旦那が出来たようだ。しかも連れ子の娘が居ると聞いて俺はとてもウキウキしていた。しかし。
“妹じゃない!”
姉だ。姉だった。妹が欲しいのに!
無理な相談だとはわかっている。その姉に会ったのはつい昨日。身長が低くてフィーバーしていたら何と俺の一つ上の高校3年。しかも俺は今までいた底辺高校からメチャメチャ偏差値の高い所へ編入しなくていけない為、ものすごく勉強した。母曰く。姉はその偏差値の高い高校の生徒会長だそうだ。しかも!弟が欲しかったらしい。
引っ越しで相当疲れている。今日から学校だというのに俺は朝。6時という最悪な時間に起きてしまった。いつもは5時に起きて俺と母の弁当と朝食を作らなくてはならないのに。この一時間はでかい。俺は焦って目を覚まし、なれない台所にワープすると、エプロン姿で巨乳が目立つお姉さまが居た。
「あらおはよう」
そういえば俺。一週間ほど前から苗字が川下に変わったんだった。
「お、おはようございます。お姉さま」
「何かよそよそしいわね。別に敬語じゃなくてもいいし、それからお姉さまってやめて」
「じゃ、じゃあ何とお呼びすればいいで・・・いい?」
「もう。普通にお姉ちゃんとか姉貴とか、もしくわ、呼び捨てでいいのに」
名前わからねえ!内心叫んだ。
「ええっと。じゃあ姉さんで」
「却下」
「え!?」
「やっぱり呼び捨てがいいわね。私一人っ子だったから姉として呼ばれるの何かと好かないのよね」
「そ、そうですか」
「敬語禁止!」
「ご、ごめん」
「分かればいいの」
「ていうか、呼び捨てっていきなり恋人みたいでハードル高い」
「からかわないで?」
やばい!姉っていい。
でもやはり。俺は妹のほうがいい。妹として愛でたいとか思ったりしている。
身長は俺のほうが高いのだし別に問題ないよねとか思ったりする。
「あ、そうだ。俺料理できるからやるよ」
転校先の学校にて、
「えっと。とき・・・川下藍氏です。今まで偏差値の低い高校で過ごしていたので、この学校に付いて行けるかわかりませんがよろしくお願いします」
拍手が流れる。
「はい!」
男子生徒が挙手をした。
「編入試験ってどんな問題が出ました?」
「入試の問題を少し難しくしたような感じでした」
「開示請求行きました?」
「いきましたよ?」
なんかグイグイ質問来るな。しかも1人から。
「点数は?」
「6教科合計で490点ぐらい?」
「それくらい取れればついていけますよ!」
根拠の無い励ましどうも。
「はい!」
別の男子。
「川下会長と同居しているって本当ですか?」
「どっから湧いたその噂!」
芸人風に突っ込む。
「今朝通学路で見たそうです!」
確かに姉さんの家通学路から丸見えだな!
「はぁ。全く」
「どういう関係ですか?」
「姉弟です」
「川下会長は一人っ子だって!」
「そうだぞ!お前何者だ!」
「連れ子だよ!家庭事情にあまり踏み込まないでくれ」
皆黙る。
俺は教師が示した席に座る。
「ごめんね」
隣の席の少女がいきなり謝ってきた。
「なにが?」
「生徒会長って皆から純潔姫って呼ばれているの。だから皆生徒会長のことが大好きで君に当たったのだと思う」
純潔姫?初耳だ。
「呼ばれた切欠って?」
「ここ、中高一貫なんだ。この6年間でことごとく男子の告白を打ち破ったそうなの」
「へ、へえ」
まあ。彼氏がいるところに乗り込まなくてよかったと安堵している。
「あのさあ。川下って苗字もしかして最近付いたものでしょ?」
「そうだけど?」
「下の名前で読んでいい?」
「い、いいけど」
まだあなたの名前わからないのですけど?
「藍氏君。よろしくね」
「君の名前は?」
「待ってました」
普通先に名乗るだろ。
「若宮茉奈。よろしくね?」
「は、はい」
午前の授業が終わると、純潔姫がやってきた。
「ねえ。藍氏君いる?」
クラスは一瞬騒がしくなる。
「あ、どうしたの?」
「ねえ。ちょっと生徒会室に来て。突然で悪いのだけど、書記をやってもらえないかしら?」
「え?」
「順を追って説明させていただくと、どうやら転校していったらしいの」
「書記が?」
「ええ」
「何と無責任な」
半笑いで俺は応える。
「藍氏君。いいから来て。ピンチなの!」
俺は弁当を持って連れて行かれた。
「他の候補には頼まないの?」
「だって他の男の人嫌だし」
「さいですか」
「弟だったらいいかなって?」
「からかわないでよ?」
立場が逆になった。
「あの、純潔姫って呼ばれているのご存知で?」
「敬語禁止!まあビッチよりはマシかな?」
「彼氏が出来たことって有りますか?」
「敬語禁止!無いわよ?」
「そ、そう」
「あなたは?」
「彼女いない歴=年齢です」
「仲間ね」
「ええ」
「私も弟が純潔で良かったと思ってる。あなたの貞操は私の物。私の貞操はあなたのものいいわね?」
「下ネタがお好きで?」
「ち・・・違うわ!」
と言って手帳を取り出し、彼女はページを捲った。
どうやらインターネットの引用の様で“年下の男の子を落とす方法”と書かれてあった。
「あのさあ。年下の男の子って下ネタを言えば落ちるものなの?」
「いや、落ちるわけ無いじゃん。なに隠さずに聞いているのさ?」
ドアの前で会話する。
そしてドアを開けると、何かと厳格そうな女性が居た。
「会長遅いです。もう少し早くしていただけないでしょうか」
「ごめんね」
「では早速。今日の生徒会の資料を作ってください」
すると姉さんは俺に耳打ちをする。
「彼女はうちの生徒会の副会長の水島亜豆。可愛いでしょ?」
「会長!で、そっちの彼は?」
「この子は藍氏君。私の弟」
「へえ。君。仕事出来る?」
「え、ええ。教えていただければ」
「ここに箇条書されたものをこのパソコンに打ち込んでくれ」
俺は言われた通りの動作を繰り返した。
昼休みが終わり、5、6時間目の授業を終え、放課後再び仕事に戻った。
「にしても、仕事速いですね姉さんは」
「敬語禁止!ありがと」
「それと、今の技って何ですか?」
「敬語禁止!技?」
「うん。なにかとすごいことしてなかった?」
「なにもすごいことなんてしてないよ?」
「さっきドラックしないでコピーとペーストしていませんでした?」
「敬語禁止!シフトキーを押しながら十字キー押して、まずドラックして」
「はい」
「そしてコントロールキーとCボタンを同時に押す」
「はい」
「これでコピー完了。それからコントロールとVボタンでペースト」
「出来ました」
「敬語禁止!」
水島先輩は俺らを睨む。
「恋人同士の会話に聞こえてならないのは私だけか?」
「いえ、俺も一瞬感じました!」
「マジで!?」
姉さんは見事に騒ぐ。
「心明先輩」
女の子の声が聞こえ、ドアが開く。
「あら?」
初めて知った。うちのお姉さんが心明という名前だと言うことを。
「あれ?何で生徒会室に男子が居るの?」
女の子は俺の事を見るなりよくわからない質問をした。
「どういう意味?」
俺は姉に聞いた。
「私。男の子って基本的にあまり好きじゃないから生徒会室に入れる事がないの」
「何で俺は?」
「弟の特権」
この姉駄目だ!空想ブラコンだ!
「それと、彼女は?」
「私は相沢環です」
「あなたと同じ1年生よ」
「へえ。よろしく。俺は斎・・・じゃなかった、川下藍氏」
「よろしくね。藍氏君」
彼女も下で呼ぶのか。まあいいや。
「俺は君のことを何と及びしたらいい?」
「じゃあ環で!」
「よろしく環」
「私のことは下の名前で読んでくれないのに?」
お姉さんは口をとがらせる。拗ねているのだろうか?
「やはりこいつは!」
副会長の水島先輩が声を荒らげて怒っている。
「お前。例のアレ。売ったか?」
「売ったよ」
「例のアレとは?」
「あなたには言えないわね」
水島先輩は言葉を濁らす。
どうやら後から聞いた話ではこれは弟ものの乙女ゲーらしい。
2ヶ月が経った。
俺が姉について理解した事を話そう。
姉の名前は川下心明。彼女は生徒会に所属していながらもバレー部に所属している。引退試合は今後に控えている。その練習に生を出している最中だ。と言うか、もう生徒会を引退している。
そして俺は彼女のお陰でバレーのルールを理解した。
姉はバレーの時は長い髪を束ねる。日によって髪質が変化するため結び方が変わる。
それを見るのがすごく楽しみでも有る。
俺は姉のためにパワフルなお弁当を作っていた。
「ありがと藍氏くん」
「どういたしました」
「この戦いが終わったら私がお弁当作ってあげるね」
「ありがたいです」
死亡フラグを立てた姉。
「敬語禁止!」
近年。姉と言うものを良いと感じてきている。しかし!
「妹が欲しい」
俺がつぶやくと姉はいつも悲しそうな表情を見せる。無意識とはいえ、熟申し訳ない。
俺はバレー部のマネージャーしていた。
「藍氏。ありがとう」
まだ名前も覚えていない女子にも声を掛けられる。すると姉はいつも決まって悲しい顔を見せる。
どんだけ嫉妬深いんだよ!
「どう?調子は?」
「まあ悪くは無いかな?」
俺は心明姉さんに聞く。彼女は呼吸と同時に吐き出す。
正直。マネージャーの仕事は対して多いわけじゃない。俺はマネジメント終了までこの高校に追いつける程度の勉強をしていた。
帰り道俺は疲れきった姉貴を送っていた。
「藍氏くんのお陰でバレー部の全員が楽できているの」
「そう?」
「今までポールの片付けってつかれている状態だと面倒だったの」
「そうなんだ」
「今度期末試験でしょう?その時バレー部は練習するんだ。だけど藍氏くんはしっかり勉強してね」
「なんか信用されてないな」
「鶏口牛後。意味わかる?」
「…牛の下尻に付くより、鶏の嘴に付け。大国の役人になるより小国の王になれって意味?」
「そう。強ち間違いではありませんが、私は何を言いたいのだと思う?」
「さあ?」
「昔の藍氏くんは鶏の口にすら付いていなかったのに、今は牛に居る。だから牛の下尻になりかねないの」
「まあ。偏差値が低い高校で、クラス順位も中の上位だったからね」
「しかも藍氏くんは極端に英語と数学の点数が悪い。だから勉強を強化させるわ!」
「う…」
水島先輩に言われた事がある。
『会長は…あの子は一旦注意を始めると相手が折れるまで騒ぎ立てるから。もし勉強に付いて注意されたらこう言えばいい』
その通りの言葉を云う。
「ありがと姉さん。この期間を利用して水島先輩にある程度教わっておくよ」
「な!」
彼女は身を引いた。
『彼女の反応はパターン化されていて、その中の少しばかし知っているから。きっと心明は弟に関しては嫉妬深いから煩く言わなくなる。でもこれはあくまで予想だから過度な期待はしないでね』
水島先輩は心明姉さんの幼馴染で、姉の事を知り尽くしている。ある程度は把握できてもおかしくはない。
予想通りの行動を見せて来てくれたお陰で俺はその後勉強に関して何も言われなくなった。
暫く姉さんは黙りこみ口を開く。
「藍氏君。私のお母さんの話し一度でもしたっけ?」
「聞いたこと無いです」
「敬語禁止」
「でも言いたくなければ言わなくていいよ?」
「そうね。でも言いたい。聞いて欲しい。これは私があなたより幸福でありたいとか、そういう下心でしかないからその後好きなだけ罵倒すればいいわ」
「今言っておく。罵倒はしない。俺だって昔自分の不幸を呪って偶にストレス発散のために友達に吐き出した事もあった。だから心明の不幸自慢。聞いておくよ」
「本当。私の望んだ答え以上の事が帰ってくるわね。私のお母さんが亡くなったのは中学3年の時。つい最近よ。でもね。私は寂しくなかった。なぜなら私の母は最低な悪女だったから」
「これは罵倒に入らない。“親を蔑むのは”良くない」
「それを聞いて欲しいの。私の母親はいつもお父さんに会う時は常に借金を押し付けるときだけ」
「そうなんだ」
彼女の母親が死んだことは聞いていたが、それは初耳だ。しかし。これで実母が“視えなかった”事とつながった。
娘に未練がなかったからなのだ。
土日を利用して俺は墓の有る地元に1人で戻った。
「父さん。これはあんたの仕組んだ罠か?」
墓の前で首を振る父親。
「確かに春休み。俺は妹が欲しいなって愚痴った。どうして母性本能むき出しの姉を寄越した!」
墓に向かって俺は軽く怒鳴る。
(別に嫌味じゃないさ。彼女に纏わりついている母親への嫌悪を解いてやれ)
「視えなかったぞ!?」
俺は父親に問う。
(別に本物を見ろって言っているわけじゃない。彼女の脳裏に焼き付いた母親像を打ち消せって言っているのさ)
「父さんは心明の事を知っていたのか?」
(知っていた。彼女の父親は俺の元同級生だ)
「何だ?出来過ぎているな?」
(頑張れよ。我が息子)
そう言って父さんは墓の前から消え失せた。
俺。斎藍氏は霊能力者と呼ばれるものだ。
今は川下だったな。
そうして片道4時間掛かる電車に乗り川下ハウスに帰る。
「只今」
「お帰り藍氏君。お墓参りお疲れ」
「どうしたの?どうして家にいるの?」
今日は部活がバリバリ存在する日だ。
しかし彼女は家にいた。
「何で家にいるの?」
「怪我しちゃった」
彼女の声は掠れていて、頬が赤い。泣いた痕だ。
「ねえ。心明。今から墓参りに行くよ」
「さっき行ったのに又?」
「今度は姉さんのお母さんのだよ!」
俺は怒鳴る。すると彼女は驚いた表情を見せた。
「どうして!?」
「どうしてもこうしても有るか!」
彼女は足に包帯がぐるぐる巻きにされてあった。
骨折までは行かないだろう。しかし打撲症だったためこれは大会に出るまでに完治は難しい。姉さんなら無理して出ると言いかねない。
「姉さん。試合に出たい?」
「出たいわよ」
「そうだけど。今回の試合は諦めたほうが…」
「うん。怪我をした私が試合に出たら皆に迷惑掛けちゃうから」
浅はかだった。愚かだった。
「ごめん。姉さん」
「…何が」
「俺を一発打ってくれ!」
「何でいきなり?」
「俺。姉さんに対して向き合ってなかった」
「ごめんね。私も」
姉さんは軽く俺の脳天に手を載せた。
「はい。一発」
「…全く。姉さんは。それと。墓参りの件は続行だ。このまま墓に行くよ」
「え?」
「川下家のでもなんでもいいから」
「何でもいいって?」
俺は彼女とタクシーで墓まで向かう。
「ここが私の父方のお墓」
「あの!教えていただけませんか?」
「敬語…って私に言ったわけじゃないの?」
「彼女の母親の場所」
(最後の場所だ。わかるか?)
「教えていただきありがとうございます」
そして先のタクシーを又利用し、俺は心明と彼女の母親が事故死した場所に向かう。
車の中で殆ど無言。そして彼女の母親の事故場所に着いた。
「ここか」
「何で急に?」
「あなたのせいですか?」
俺はここに居る霊全体に問いかけた。
(厳密には違う。でもそうなのかもね)
「どういう意味で?」
(私のせいで彼女は無意識に私に囚われてしまった)
「なるほど。心明にはあなたの怨念が憑いていた」
「もしかして?お母さん?」
「どうせ。怪我をした時に姉さんの目には死んだはずの母が視えたわけだ」
(私は死んでから彼女に合っていない!)
「そんな事はどうでもいい!あんたの生前の行いのせいで心明はずっとあんたの影に憑かれているんだよ!謝罪の一言を聞いておこうと思ったがあんたは知らん顔!何様だボケ!」
そして俺の父親は知ってて隠していたのか。腹立つ。
「はぁ。怒りすぎた。つか、首突っ込みすぎた。姉さん。母親に何か言ってみ?」
「え?そうだね。産んでくれてありがとう」
彼女はいつも優しい。それはたとえ憎んでいた相手に対してもだ。
(心明…)
そして肝心の母親は泣いている。
(ごめんね!私のせいで!)
「お母さん?」
嘘だ!視えるはずがない!?
彼女の目にはここにいる実母の顔が見えている?
「前例がない!いや。母の思念が強かったのか?」
「わからないけど視えたの…」
後書き
俺は彼女の母性本能を削ぎ落とした気がしてならない。
母に会いに行った後。もう完全に妹ルートになってしまった。
「姉さん。お弁当」
「もう!心明って呼んで」
「はぁ。うぜぇ」
本音を小声で叫ぶ。
俺は墓参りの一週間後。霊視の師匠に会いに行った。
師匠と呼んでいるのは俺の勝手。向こうは霊が視える俺のために、力の制御の仕方を教えてくれたのだ。
師匠曰く。霊が霊能者以外の目に視えるのは稀だがあり得ることらしい。それは霊が対象者に強い思いと未練が残っている状態で、成仏寸前の場合に起こるそうだ。
そして俺は今日も彼女の弁当を作る。
俺達の平凡は他人からしてみたらそれは非凡で、他人の平凡は俺達の非凡なのだ。
誰の言葉だったろう?師匠でないのは確かだが、俺は今日も新たな霊と関わり勝手に成仏させてやっている。
それは趣味ではなく、向こうから寄ってくるだけの話。
心のなかで俺は霊に困った妹が降ってこないかなと望んでいたもののいざ持ってしまったら対して喜びを得ることはないだろう。
いつの間にかこの話が怪異譚になってしまったが、元々は。妹を欲する俺に姉が出来る物語。
余談に付き合ってくれてありがとう。
再び俺が霊に関わるまでこの話はおしまいだ。
本心二度と関わりたくない。
「藍氏くーん!今日の晩御飯は私が作るわ」
「き、期待してます」
「敬語禁止!」
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