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虚空を照らす数多の光

作者:Ax_Izae
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彼と彼女の三角関係?

 
前書き
昼休み。私は図書室で気になっている本を手に取り、読んでいた。そこに、ルームメイトの館坂歩乃が私に耳打ちをする。
 「ねぇ。あんた、掲示委員でしょ?昼休み印刷室前に来るように言われているでしょ?みんな探してたよ」
 「だから今ここにいるんでしょ」
 「逃げてきたってわけね」
 「当然。だってあんな場所にいたら唯斗と目を合わせちゃうじゃない。あいつも掲示委員だから」
 「なんで好きなのに避けるの?」
 「はぁ。どうせあいつ。私が好きなことに気づくどころか、その真逆と思ってるんでしょうね」
 「あんたの態度のせいだよ」
 私の名前は星観沙織。どうやらひねくれた性格のようでいつも自分の想いと真逆の行動をとってしまう。
 「沙織。さっきあいつ嘆いてたよ。話しかけようとするとあさっての方向を向いてどっか行くし、視線向けると隠れられるとか」
 「…そう。私の心配よりもまず自分のことからやればいいじゃん。歩乃結構モテるでしょ?」
 「この話、図書館じゃなくてもいいよね」
 「わかった。みんなが消えたあとに私は印刷室に行く」 

 
私は印刷室に向かうと、掲示委員の先輩の土崎佳奈さんにすれ違った。
 「星観さん。どうしてさっき来なかったの?委員会もう終わりましたよ」
 「すみません。ちょっとどうしてもやらなければならない事があって、それにとりかかったら時間を忘れてしまいました」
 「そう。わかったわ。好きって気持ちを素直に表すのは難しいものだからね」
 私は佳奈さんから距離を取り赤らめた顔を必死で隠すように土下座をする。
 「何?もしかして図星?適当に言ったんだけど」
 おしとやかで優しい口調の佳奈さん。怒りを露わにはしないものの、そのゆっくりとした口調から出る言葉は私の心を串刺しにする。
 「もしもそうならその相手は高樹唯斗くんでしょ?」
 私は佳奈さんから走って逃げた。
 そして印刷室に訪れると唯斗がいた。
 最悪。私の脳裏には言葉が自然と浮かびまじまじ中に入る。
 「よっ。沙織」
 「っち!」
 舌打ちが自然と漏れた。
 「なんで目をそらすんだよ!」
 「ちょっと!」
 唯斗は私の肩を掴み壁に叩きつけるように迫る。
 「あ、えっと!」
 「わ、悪い!」
 私から慌てて離れる。
 卑怯だ。誰に対してもそういう態度を取る。
 
 下校中。私は歩乃と並んで歩いていると、さっきの印刷室前のことを聞かれてしまった。
 「ねぇ沙織。どうだった?」
 「唯斗に壁ドンされた」
 「え!?進展あり?」
 歩乃は顔を私に寄せてきた。
 「進展って問題じゃない。私のこのひねくれた性格のせいで変に迫られた」
 いつ頃からだろうか?私はあいつを男として意識して、普通に会話をするのもままならなくなった。それから見ての通り、目を合わせるだけでも逃げたくなるくらい。
 「でもすごいと思うよ、沙織は。だってあいつモテるんだよ」
 「知ってる」
 「掲示委員の佳奈さんも気があるようなこと言っていたし」
 「歩乃は?」
 「純粋に格好いいと思うよ。でも八方美人と言うか、誰にでも愛想振りまいている感じがしてちょっと近寄りがたい」
 「そう。私も、その1人でしかないのかな?」
 「意外とそうかもね。いくら幼なじみと言っても、ここまで嫌われたような態度を取ると鈍い彼は絶対勘違いするし」
 「どう転んでも私は無理だよ」
 佳奈さんが相手だから勝てっこない。佳奈さんは学校のアイドル的存在。それに好かれるとかどんなことをやったのか気になるばかりだ。
 「歩乃。あんた好きな人だれ?」
 「私の好きな人は地味で、目立たなくて、それなのにクラスの活動になると、裏方を見つからないようにこなすやつ」
 「分かった。篠崎だ」
 「あたり」
 「でも篠崎って誰かと付き合ってなかったっけ?」
 「それ誤解なの」
 「へぇ」
 彼女の目を見ると少し悲しげだった。
 「実は。現実を見ない性格でね。あいつ。彼女ができたって噂された理由はいつもより早くに帰宅したからって言ってた」
 「つまり?」
 「どうやらその短時間で秋葉原に向かったみたいなの」
 「そいつの方に大丈夫か?私だったら絶対に付き合いたくないわ」
 「でもかっこいいじゃん。顔は」
 「そっか。歩乃めんくいだったっけ」
 忘れるところだった。
 篠崎は実は唯斗と仲がいい。それを知ったのはつい最近。自分から篠崎が唯斗に話しかけに行ってすぐに気がついた。
 「で、あんたはそのひねくれた性格をどうやって治すの?」
 「ひねくれたって。治すと思うよ。いずれ」
 「いずれじゃ駄目でしょ!多分沙織このままのペースだとふられるよ」
 「結構です」
 「誰かに取られるよ?」
 「それは嫌だ!」
 「だったら自分のものにしないと」
 「うん」
 
 翌朝。学校の下駄箱にこういうものが入っていた。
 「え?」
 『体育館裏に来い』
 これって?果たし状?それともラブレターのつもり?
 それを歩乃に見せると高笑いをして、
 「これ絶対唯斗の字だよ」
 と答えられた。
 ラブレターであればものすごく嬉しい。答えはもちろんイエス。でもどうしてこんな天邪鬼の私に告白をしようと考えたのだろう。
 そして私は歩乃を連れて体育館裏に行った。
 「やあ」
 そこには唯斗が立っていた。
 「ね?言ったとおりでしょ?」
 「なんで字で唯斗だって分かったの?」
 「実はこれ渡される前私にLINEが来たの。私だけじゃないと思うよ」
 「え?」
 すると後ろから篠崎と、佳奈さん。それに私の知らない女の子が1人やってきた。
 「これだけか。もっと来るかと思ったんだけど?」
 唯斗は言葉を漏らす。
 「何人にLINEを送ったんだ?」
 篠崎は低く太い声で唯斗に聞く。
 「ざっと16人」
 「え?そんなに誘ってこれだけか」
 「LINEで誘ったのは3人しかいないから13人に裏切られたな。これしか来ないとか俺って人望ないんだな。しかも男子は全滅だった。既読無視だ」
 何を今更。
 「3人?ここに俺とお前を含めて6人いるぞ。少なくとも4人にならないか?」
 「俺。沙織に嫌われているみたいだから、ラブレター方式で誘ってみた」
 「お前最低だな」
 「まぁな。なんとでも言ってくれ」
 私は歩乃に耳打ちをする。これから何をするのかを聞くようにいう。
 「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」
 「歩乃の意地悪」
 「沙織の意気地なし」
 「どうでもいいですが、自己紹介しません?私、佳奈先輩以外の人の名前知りませんから」
 名前を知らない女の子は答えた。
 「ああ、羽七は初対面だっけ?みんな紹介するよ。俺の部活仲間の唐瓜羽七」
 「俺は篠崎太輔」
 「星観沙織」
 「館坂歩乃でーす。沙織とはルームメートです」
 「以上がうちのメンバーとなります」
 突然唯斗は進行を始めた。
 「みんな」
 結とは突然空に指を指す。
 「突然で悪いんだが、このメンバーで今夜星を見に行こう!」
 
 私の部屋にて。
 ルームメートである歩乃と、初対面の羽七が部屋にいる。
 「ねえ。せっかく女子3人いるんだし恋話しない?」
 歩乃は手を上げた。
 唐突すぎる。
 「で、羽七は誰が好きなの?」
 「私?私は…やっぱり高樹君かな」
 「高樹?高樹ってだれ?」
 私は表情を変えずに聞く。
 「はっはは!恋は盲目って言うけど、好きな人の名前まで忘れるとか笑いもんよ」
 歩乃は高笑いをする。これで何が何なのか分かった。
 「ちょ、笑いすぎだよ!」
 私は枕を歩乃にたたきつけた。
 「ぐはぁ!」
 「ねぇ。もしかして星野さんも高樹君が好きなの?」
 「星観だって!」
 名前を間違えられた。
 「そうなの!この子唯斗のことが好きすぎて彼とまともに話せないの」
 私は口を塞がれ身動きがとれなくなっていた。
 「っぷ!違う!」
 「ちなみに、私は篠崎がすき!あの肝の座ったところとか、太い声とかかっこいい顔とか。でも…それは本当に裏付け。私はそこに惚れたわけじゃない。気づいたら好きになっていただけ」
 よくわからないが、一瞬歩乃がものすごく綺麗に見えた。なんていうか、正しい恋をすればここまで変るものなのか?
 「私。歪んでるな」
 「今更何言ってんの?」
 「否定してくれないのね!?」
 「だって歪みきってるじゃん」
 「ひどいわ!」
 「負けないから!」
 「まさかのライバル登場だね!」
 羽七は私を睨む。
 「わ、私だって!」
 私達はしばらくして部屋を出た。

 夜道。男子2人、女子4人の黄金比率で私達は茂みを歩く。
 夏の夜には心地良くらい風が気持ち良い。
 「ここ、一番見やすいんだよ」
 唯斗はシートを敷いた。長くて10人は寝そべっても平気なくらいの大きさ。
 「俺も手伝うよ」
 篠崎が反対側を持ち、30秒ほどで終わった。
 「寝っ転がれるくらい大きいね」
 歩乃は耳打ちをする。
 「な、な!待って!」
 私は歩乃の顔を叩く。
 もうすでに唯斗が寝っ転がっていた。
 「もう。なんでヴァイオレンスになるかな!」
 「だって」
 「星野さん」
 「星観だって!」
 羽七は私にしか聞こえないような声で話しかけてきた。
 「私。高樹君に告白する」
 「え?まって!」
 「あなたには負けたくない」
 「わ、私だって!」
 「告白するの?」
 「し、しないけど」
 歩乃は早速たかってきた。
 「何?バトル?楽しみ。どっちが撃沈するのか」
 「少しは応援してよ!」
 「嫌よ!だって沙織付き合うきないじゃん」
 「そんなことないし!」
 「何話しているんだ?」
 唯斗は寝っ転がりながら私達に話しかけてきた。
 「来たくて来たわけじゃないのに」
 佳奈さんはボソっと口に出した。
 「あの」
 歩乃は佳奈さんに話しかけた。
 「佳奈さんって本当に唯斗のこと好きなんですか?」
 「なんでいま聞くの?」
 「羽七が告白するらしいです」
 「え?抜け駆けなんて許さないから!」
 珍しく慌てた口調になる佳奈さん。
 「抜け駆けもなにも、先輩はただ単に度胸がないだけじゃないですか!」
 「だから困っているじゃないの!」
 結構素直だな。
 「おい。いい加減お前らこっちに来いよ。星。綺麗だぜ」
 羽七は息を吸い助走をつけたように
 「高樹君!私。高樹君のこと好きです!付き合ってください!」
 言われてしまったようだ。私は少し目を落とした。
 「ごめん。俺、誰に告られても答えは同じだ」
 「そんな!」
 「相変わらず残酷なやつだ。お前。フッた相手に優しくするな」
 「どうしたらいいんだ?」
 「まずその性格を直せ」
 「え?」
 「いい機会だ。言っておく。興味のない相手に過剰に拘り過ぎなんだよお前は。相手が意識することを知った上での行動だったら性格が悪いぜ」
 篠崎は唯斗を睨みつけた。
 「すまんな。みんな。今日来てもらったのは2つ理由があるんだ。一つはお前らが好いている。高樹唯斗を諦めてもらうために呼び出した」
 耐えられなくなり私はかけ出した。
 そして林の中の木により掛かり、腰を落とした。
 「なんでいつもこうなるんだろ」
 私の目には涙が溜まっていた。
 「おい」
 太い声が聞こえた。
 「なんだ。篠崎か」
 私は声を震わせないように答えた。
 「なんだとはなんだ?」
 「唯斗が追いかけてくれればよかった」
 「そこは素直なのな」
 「知ってたんだ」
 「全員知ってた」
 「全員?」
 「ああ。唯斗が誘った16人、正確には17人。そのうち半分ほどが女子。そしてお前と、唐瓜、それに佳奈先輩は、唯斗に少なからず気があったから来た。それ以外のメンバーは気は有ったものの時間の関係で来られなかった。とまぁ。こんなところだ」
 「ふぅん。それがどうかしたの?」
 「まぁ。もう一つ、呼び出した理由。聞きたい?」
 「聞きたくない」
 「なら無理にとは言わないよ」
 「…やっぱ聞く」
 「そっか。星観沙織。俺はお前のことがずっと前から好きだ。俺と付き合ってください」
 トーンの低い声が聞こえた。
 「え?」
 「ああ」
 「あんた正気?この天邪鬼のどこがいいの?目死んでるよ!」
 私は立ち上がり彼の顔を凝視する。
 「趣味悪い!…」
 私の体は何かに包まれた。
 「趣味が悪いんだったらそれでいい。趣味が悪いやつに好かれたお前が悪いだけだから」
 「…」
 「好きだ」
 「卑怯。フラれた瞬間に告るとか。最低!」
 私は彼の腰に手を回す。
 「でも。ありがとう」
 「返事がまだ聞こえてないな」
 「この惨めな私に告白をしてくれてありがとう。そして妥協してあなたと付き合います」
 「素直でよろしい」
 私は彼に頭を撫でられた。 
 

 
後書き
「起きろよ。沙織」
 「太輔…」
 私は今、どこにいるのだろう?
 「あ?え?」
 「図書室で寝てるんじゃねーよ」
 「ご、ごめん!」
 背中に学生服が駆けられてあった。
 「ありがとね」
 「ん?ああ、気にするな」
 歪な形をした恋は砕け散り、又新たな恋が生まれた。今まで私は何を信じ、何に怯え、何を希望に生きていたのかはもう忘れてしまった。それは綺麗で整った恋を知ってしまったからかも知れない。
 私の性格はどうやらひねくれものや天邪鬼の部類に入るようで、素直になれない。いや、なれなかった。でもそれは病のせいで、私を狂わせていた現況を砕き壊してくれた彼がいるから、こうして落ち着いた学園生活を遅れている。今まで生きた中で、思い通りになった試しが一度もない。それは誰しもそうだ。人は必ず妥協し、骨を削ってようやく自由と平等を手に入れる。それを理解するまでは、人は楽な道を選びたがり、失敗する。でも今は、楽な道でもいいよね?
 「太輔!」
 「なんだ?」
 「呼んでみただけ」
 「図書館ではうるさくするな」
 恋病物語が解決した後私は歩乃にすべてを聞かされた。
 はじめは唯斗に怒鳴った。しかし唯斗はにっこり笑って、まともに話ができるようになってよかったと言われた。
 「お前。いつの間に、本音が口からポロポロ出るようになったんだ?」
 「太輔と付き合ってから」
 「どつくぞ」
 「やーよ」 
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