富士山
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3部分:第三章
第三章
「頂上に行けばわかることがあるから」
「頂上に行けばですか」
「そこで、ですか」
「わかることがあるんですか」
「そうだよ。そこでわかるからね」
こう言ってだ。彼はさらに先に進む。そしてだ。
一回生達もだ。その彼、そして他の先輩達を見てだった。
そのうえでだ。顔を見合わせてそしてだった。
「じゃあ今からな」
「行くか」
「そうね」
「そうしよう」
こう言ってなのだった。彼等も前に進む。
そして五合目に来た。そこに来るとだ。
「うわ、下がなあ」
「小さく見えてきたなあ」
「ついさっきまでそこにいたのに」
「もうそれがな。今じゃな」
「あんなに小さく見えるんだな」
「何ていうかな」
「凄く上まで来たな」
こう言うのだった。彼等は声に感慨を込めてだ。
そのうえでだ。上を見る。山はまだ続いていた。空気もさらに薄くなっている。
しかしそれでもだ。今の彼等はだった。
「けれどな」
「ああ、それでもな」
「頂上に行けば何かあるんだよな」
「松本先輩がそう言ってたしな」
「じゃあ頂上に何があるかな」
「見るか」
「絶対にな」
爽やかな笑みで向かい合ってだ。そしてだった。
彼等はさらに先に進む。その中でだ。
薄くなっていく空気、そして険しい山道を登っていく。だがだ。
彼等は今は諦めるつもりはなかった。その心を確かに持ちだ。
そのうえで先に進んでいく。そうして。
七合、八合と進みだ。遂にだった。
目指す頂上が見えてきた。ここで松本が言うのだった。
「もうすぐだよ」
「はい、そうですね」
「もうすぐ頂上ですね」
「この富士山の」
「頂上に着くまでだよ」
ここで終わりではないというのだ。頂上が見えたところでだ。
このことを言ってだ。そしてだった。
松本はここでも前に進みながらだ。一回生達に言った。
「あと一踏ん張りだからね」
「はい、頑張ります」
「最後の最後まで」
一回生達もだ。はっきりした顔になりだ。
そのうえで足を前に出す。そうしてだった。
彼等は頂上に辿り着いた。富士山の頂上にだ。
その頂上に辿り着きほっとした顔になっている一回生達にだった。
松本も他の先輩達もだ。笑顔で声をかけてきた。
「それじゃあね」
「周りを見てみて」
「それに下もね」
「周りですか」
「それに下もですか」
「観るんですか」
「そう、そうするんだよ」
こうだ。彼等に声をかけるのだった。そうしてなのだった。
一回生達もそれを受けてだった。実際に周り、それに下を見た。するとだ。
周りは一面の空だった。青く何処までも広がる空があった。そこには雲は全くなかった。まさに蒼天だった。その青い空を見てだ。一回生達はあることがわかった。
「そうか。雲の上だからなあ」
「富士山の頂上にあるのは」
「だからなんだね」
「こうして満面の青空なのは」
「それでなんだ」
「それに」
さらにだった。彼等はだ。
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