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豪傑の傷

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第二章

「戦では頼りにするが気をつけてな」
「有り難きお言葉」 
「その様にな」
 家康は忠勝とこうした話をしていた、家康は彼が傷を負うことがない様に実際に願っていた。だがそれでもだった。
 忠勝は戦の場では傷を負うことがなかった、どれだけ激しい戦の中でも。
 自分から突っ込んでだ、蜻蛉切を手に敵を次から次に倒してもだ。
 傷一つ追わなかった、徳川家の数多くの激しい戦に加わっても。
 それでもだ、彼は傷を負わずにだ。そのうえで。
 関ヶ原でもだ、戦ってだった。
「この度の戦でもか」
「傷一つ負わぬとは」
「流石平八郎」
「徳川きっての武の者よ」
「見事じゃ」
「あれだけの者はおらぬわ」
「まことにな」
 徳川の者達はここでも言った。
「どの様な戦に出ても傷一つ負わぬ」
「全くな」
「そのうえで勝つ」
「あれこそ真の武辺者じゃ」
「まことにな」
 こうしたことを話すのだった、家康もまた彼に言った。
「まことに見事、わしも願った介があったわ」
「戦の場で、ですな」
「うむ、御主が怪我をせぬことをな」
 こう言うのだった。
「願っておったが」
「だからそれがしもですな」
「怪我をしなかった、よかった」
 満面の笑みでの言葉だった。
「これからも戦があってもな」
「願って頂けますか」
「そうさせてもらう」
 家康は破顔して忠勝に言った、実際に彼は戦になったらまた忠勝が怪我をしない様に願うことにしていた。
 そのうえで彼に多くの褒美を与えた、だが普段の忠勝は質素だった。
 楽しみといえば木彫りだ、彼は暇があればそれを楽しんでいた。
 関ヶ原が終わり数年経った時もそれは同じでだ、彼は小刀を使って木彫りを作ることを楽しんでいた。 
 だがここでだ、手元がたまたま狂って。
 指を傷付けてしまった、彼はそれを見て言った。 
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