幸せゲット
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第一章
幸せゲット
一重のアーモンド型の目に斜めに吊り上がった黒いきりっとした眉、白い顔はやや長く鼻の形は程よい。細い黒髪をショートにしていて口は広く薄いピンクだ。
背は一六八程で均整の取れたスタイルだ。奈良信彦は普通にしていればそこそこの容姿だった。
だが彼は浮かない顔でだ、通っている高校の自分のクラスで友人達にぼやいていた。913
「まただよ」
「ああ、またか」
「最近ずっとだな」
「朝の新聞読んだら阪神負けててな」
彼の贔屓のチームがだ。
「遂に首位転落だよ」
「今年阪神今一つだな」
「三連覇難しいか?」
「クライマックスがあってもやっぱり胴上げしたいよな」
「そうだよな」
クラスメイト達も彼に合わせて言う、とはいっても彼等にも阪神ファンが多い。
「で、セレッソも負けたな」
「サッカーの方も」
「京都パープルサンガも負けて」
「関西勢調子悪いな」
「それで朝飯食ってたら家の猫に足を噛まれたんだよ」
信彦はこのことも話した。
「うちの猫悪ガキでさ」
「いきなり噛まれたんだな、足」
「それは災難だな」
「猫は悪い子多いけれどな」
「御前の家の猫もなんだな」
「しかも電車の中でな」
信彦はさらに言った。
「横がヤーさんでな」
「おいおい、朝からヤーさんかよ」
「それはまたきついな」
「横の席で怖い顔していたんだよ」
そのいかがわしい仕事に就いている人がというのだ。
「怖くて怖くてな」
「普通朝の電車にヤーさんいないだろ」
「何でいたんだ?」
「しかも御前の隣にか」
「ずっといたんだな」
「乗ってから降りるまでな」
まさにその時までだ。
「いてな、しかも学校に来たら朝練中のサッカー部のボールがな」
今度はこれだった。
「腹にだよ」
「ぶつかってきた」
「そうなったんだな」
「気付いたら目の前にあってな」
そしてというのだ。
「避けられなかったんだよ」
「何か続くな、不幸が」
「今朝は」
「御前今日厄日じゃないのか?」
「十三日の仏滅の日か?」
俗に言う最悪の日だ、この日に生まれた漫画の主人公もいたらしい。
「阪神もセレッソもパープルサンガも負けて猫に噛まれてな」
「電車の隣の席はヤーさん」
「で、サッカーボールにも当たる」
「朝からきついな」
「正直ボール受けた時帰ろうって思ったよ」
信彦は友人達に憮然とした顔でこうも言った。
「もうな」
「けれどか」
「今ここにいるんだ」
「帰らずに」
「そうしてるんだな」
「そうだよ」
その通りという返事だった。
「やっぱり授業はって思ってな」
「まだ何かあるかもな」
「そんな調子だとな」
「ああ、実はな」
ここで信彦が言うことはというと。
「俺星座占いで運勢最悪だったんだよ」
「もうドツボだったんだな」
「最初からな」
「今日はな」
「そうした日だったんだな」
「そうなんだよ、どうせおみくじ引いてもな」
神社にあるそれをだ。
「大凶だろうな」
「実際大抵の神社に大凶ないぜ」
「あっても凶よりずっと少ないぜ」
「凶の数って実は大吉より少ないしな」
「むしろ凶引いた方が凄い位だぜ」
実はそうらしい、神社の方でもおみくじの中に凶はあまり入れていないのだ。あまり凶が出ても喜ぶ者はいないからだ。
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