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私の宝物 超能力 第二話

作者:ドリーム
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私の宝物 超能力 第二話

 
前書き
第二話 

 
 第2話

 コンサートが終りホールを出た所で、暗子の予知能力が危険を察知した。
 なんでこのタイミングで予知能力が目覚めたのか暗子にも分からない。
 偶然、前を歩いている富田幸男を見た時に暗子が叫んだ。
 「あ! 貴方、貴方はこれから車に乗って帰るのでしょう。危ないわ。事故が起きる予感がする。行っては駄目よ! もう少し時間を置いてからした方が」
 「え? なんだって」
 後ろから叫ぶように言った声の主を振り返る。
 普段、温厚な幸男も突然、妙な事を言われて、つい言ってしまった。
 「なんて言ったの? ……あんた何を言っている。少し頭が可笑しいじゃないのか。事故が起きるって馬鹿な事を言うなよ」

 それはそうだ。誰もそんな話を信じてはくれない。そう思われても仕方がない事だ。でも暗子には神が与えてくれた、ささやかな贈り物がある。この先の出来事が脳裏に浮かぶのだ。つまり予知能力だ。それが暗子の宝物。ただ自分自身にさえ自覚のない宝物。その予知能力がいつもある訳ではないが、時々そんな事があった。だが富田幸男が間もなく驚きの、事態を迎えてしまうとは思いもよらなかった。しかし今は信じろという方が無理な話しだ。

 幸男の眼から見た日陰暗子は、いかにも貧しさが滲み出た容姿をしていた。
 ど近眼のメガネに、いつ美容院に行ったのか、服装も使い古したような姿だった。どうせ親切な媚でも売って自分に、あやかろうとしたのだと思われても仕方がない。金持ちならではの発想の仕方だ。
 だが暗子には見える。幸男がこれから起ころうとする事が脳裏に浮かんで来るのだった。
 「分かっているわ。見ず知らずの私が、貴方に訳の分からない事を言っているのだもの。でも騙されたと思って信じて……車に乗るのを十五分くらい遅らせて。お願い信じて」

 暗子と違って幸男はカジュアルなファッションだが、英国製の生地を使ったオーダーメイドの物で時計は勿論ロレックスだ。身に着けている物は全て超一流品だ。
 そんな幸男が待たせて置いた、お抱え運転手と眼を合わせ呆れた顔した。
  運転手は路上に車を停車させ幸男を迎えに来た所だった。
 「幸男様、いかが致しましょうか」
 「いいんですよ。運転手さん気にせず、いま乗りますから」
 「お願いです。私を信じて大変な事が起こるの」
 暗子は悲痛の表情を浮かべ引き留める。
 幸男は友人数人と待たせてある車に乗り込む寸前の所で再び暗子に声を掛けられたのだ。
 「あんたね、そんな馬鹿な事を言って何も起きなかったらどうするつもりだ。からかうのもいい加減にして欲しいな」
 「いいわ、十数分後に分かる事だから。その無駄になった十数分間なんでも貴方の言う事を聞くわ。それならいいでしょう」
 幸男と一緒にコンサートに来ていた仲間達と笑いながら暗子に言った。

 本当は言うつもりじゃなかったが、あまりにも途方もない事を言うので冗談のつもりでムッとなり暴言を吐いた。
 「ほう、それは面白い。もし何も起きらなかったらストリップでもしてくれるのかい。それが嫌なら御免なさいと言って帰りなさい。悪い事は言わないから」
 それと同時に幸男の仲間が腹を抱えて大笑いした。
 幸男は仕方なく車に乗り込むのを止め時間潰しに友人と談笑し始めた。
 「幸男様、仕方ありませんね。長く路上駐車出来ないので私、その辺を一周して戻って参ります」
 「ああ、悪いね。そうして下さい」
 運転手も笑いながら停めてある車に戻った。やがて幸男は暗子の顔を覗き笑いながら言う。
 「よし決まった! 余裕をみて、じゃあ二十分にしょう。いまさら逃げないでよ」
 「ちょっと待って! 運転手さんは何処へ行ったの? 運転手さんが危ないわ」
 「おいおい、今度は運転手の心配してくれるのかい。ハッハハ彼はA級ライセンスを持っているんだ。事故なんて100%考えられんよ」
 「技術の問題じゃないの、もう遅いわ。私にはどうする事も出来ないの……」

 暗子は、そう言いながら震えていた。
 幸男と仲間達は暗子を見て気味が悪がって仲間内で囁いた。
 「幸男、とんでもない女に引っ掛かったんじゃないのか」
 そう言いながらも、その仲間達から笑顔が消えて、冷めた眼で暗子を見た。
 それでも幸男は暗子に最後の忠告を告げた。
 「ねぇ君、悪い事を言わないから、早く帰りなさい。みんなに笑われるだけだよ」
 「貴方達は何も分かっていない……信じろと言っても無理もないけどね。もう遅いわ。私には危険を察知しても誰も信じてくれない。もうどうする事も出来ないもの」 

 もう幸男も仲間も首を振るしかなかった。
 すると暗子は耳を塞いで悲鳴をあげた。
 「嗚呼!! 爆発する。逃げて! 逃げて」
 数秒後、表通りの方からもの凄い爆発音と地響きの振動が伝わりビルの上まで炎が燃え上がるのが見えた。
 「なっなんだ!? 何が起きたんだ」
 幸男と仲間達は表通りと暗子を見比べた。
 「だから信じてと言ったのに……私は危険が予知出来るの、でも止める事は出来ない」
 呆然と立ち尽くし幸男と仲間達。彼女はエスパー? 予知能力者なのか?
 それから数分後の事。表の通りからサイレンの音がけたたましく鳴り響いた。
 それもかなりの数のサイレンの音が街中に響き渡る。

つづく 
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