ポケットモンスター 急がば回れ
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22 シルフカンパニー 2
エリカ「ロケット団に襲われていたところを会長が助けてくださったのですわ」
ブルー「そうだったんですか、ありがとうございます!」
イミテを心配していたブルーは安堵して彼女を抱きしめる。
エリカ「よかったですわね、ブルーさん」
サカキ「しかし、見れば見るほどよく似ている。
君たちは双子なのか?」
ブルー「いいえ、ヤマブキに来たときに初めて会ったんです」
サカキ「そうか、なるほどな……」
イミテがブルーに耳うちする。
イミテ「早くここから出ましょう」
ブルー「えっ?」
イミテ「お願い」
ロケット団のせいで大変な目に遭ったから早く家に帰って安心したいのだろう、とブルーは思った。
ブルー「サカキさん、いろいろありがとうございました。
それじゃああたしたちはこれで」
サカキ「ちょっと待ちたまえ」
帰ろうとするところを再び止められる。
サカキ「何度もすまない。実は君に頼みたいことがあってね」
ブルー「頼みたいこと?」
サカキ「ナツメから聞いたが、君はイエローという少年と共にポケモントレーナーの旅をしているそうだね」
ブルー「はい」
サカキ「彼の身に危険が迫っていると私は思うのだよ」
ブルーは険しい表情になる。
サカキ「というのも、先日のシオンタウンを襲ったロケット団のポケモンのことはニュースで知っていると思うが、あれはイエロー少年のピカチュウを狙っていた」
ブルー「確かにピカチュウを攻撃してるところをこの目で見ました。
それにしてもロケット団のポケモンだったなんて……」
サカキ「やはり君もあの現場にいたのか……君が無事でよかった」
ほっとした息をついてブルーの肩に手を置く。
サカキ「あのピカチュウが普通のピカチュウからは考えられない何か不思議な力を持っていることを、実際にバトルで体感したナツメから聞いて私は直感した。
理由はわからないがロケット団はあのポケモンを利用してピカチュウとイエロー少年を狙っている。
何としてでもロケット団の野望を阻止しなくてはいけない。
だからブルー君、私に協力してくれないか?」
ブルー「えっ? でも、あたしは何をすれば……」
サカキ「ピカチュウをシルフで保護したいとイエロー少年に君から頼んでもらいたい」
ブルー「でも、またあのポケモンが襲ってきたら……?」
サカキ「ロケット団にヤマブキを占拠され、あのポケモンに脅されてシルフを都合のいいように使われてしまったのは紛れもなく私の責任だ。
だが、私は同じ失敗を繰り返さない。
一度はレッド君に助けてもらった身だが、どうか私を信じてほしい」
ブルー「わかりました。そういうことなら……」
突然、音を立てて扉が開く。
グリーン「騙されるなブルー! そいつがロケット団のボスだ!」
一同がグリーンに注目し、静まり返る。
ブルー「グリーン、何てこと言うの!」
グリーン「じーさんに聞いたぜ。
お前は昔じーさんの研究所にいて、あのポケモン……ミュウツーの開発に関わった1人なんだ!」
サカキ「オーキド博士の孫か。
確かに私はあの研究所にいた。
だが、それが何だというのだね。ミュウツーは我々の手には負えなかった」
グリーン「そんなおっかねーポケモンが、そう簡単にロケット団なんかの手に落ちると思うか?」
サカキ「何が言いたい」
グリーン「ここで開発してる究極のモンスターボールってやつは、どんなポケモンでもゲットできるんだろ?」
サカキ「その通りだ。完成すればの話だがな」
グリーン「それがもう完成してるんだよ!」
グリーンはバッグから1つの箱を取り出す。
トキワシティのショップから預かったお届け物の箱を開けると、紫色のボールが出てくる。
グリーン「どんなポケモンでも必ずゲットできる究極のモンスターボール、マスターボール。
シルフで何年も必死になって作ってるマスターボールは俺のじーさんがとっくに完成させてたんだよ!」
サカキは沈黙する。
紛れもなく本物だ。
グリーン「なぜ研究所にいたお前に渡さなかったかわかるか?
ロケット団を立ち上げるのに夢中になってたお前が悪用するのを恐れたからだ!」
サカキは表情を変えない。
サカキ「完成させておいて発表しないとはオーキド博士も人が悪いな」
グリーン「こいつが欲しいか? くれてやってもいいぜ。
そのかわりレッドとイエローの居場所を教えろ!」
サカキ「確かにそのマスターボール、シルフの代表として喉から手が出るほどだが、その少年たちの居場所など私が知る由もない。のめない条件だな」
グリーン「ふざけるな!
お前がミュウツーをけしかけてシオンを吹っ飛ばしてイエローとピカチュウをさらったんだろ!
あとレッドもミュウツーで倒したんだろ! ロケット団のアジトを潰された腹いせにな!」
ブルー「サカキさんもロケット団の被害者なのよ!
それにサカキさんはイミテを助けてくれたし、イエローとピカチュウの心配もしてくれてる!」
グリーン「シルフなんてあんたにとっちゃただの隠れ蓑だろ?
いざという時に被害者ぶるためのな!」
ブルーはグリーンの頬を引っぱたく。
重苦しい空気が流れる。
静かに肩を震わせるブルーは、怒りをあらわにした表情をゆっくりと上げる。
ブルー「いい加減にして。
言ってもわからないならこれで決着をつけましょう」
モンスターボールを掲げる。
グリーン「……ちっ、これだから女は」
サカキ「君たち、バトルをするなら屋上を使ってくれて構わない。
ここでは狭そうだからな」
サカキは部屋から出ようとする。
サカキ「そろそろヤマブキは開放される。
メディアはこぞってここを目指してやって来るだろう。
出迎えてやらねばな」
ナツメ「しかし、会長直々に行くことは……」
サカキ「いざという時に被害者ぶってシルフを隠れ蓑にするわけにはいかないからな」
エリカ「ですが……」
サカキ「君たちは彼らのバトルを見届けてやってくれ。頼んだぞ」
そう言い残して出ていく。
グリーン「逃げんのか? 待ちやがれこのヤロー!」
ブルー「サカキさんの邪魔はさせない」
普段のブルーからは想像できない様子にグリーンはたじろぐ。
エリカ「さあ、こちらですわよ」
エリカとナツメに続いてブルーとグリーンは屋上に向かう。
イミテ「ブルー、やめて!」
ブルーは制止しようとするイミテを押しのける。
その瞬間、目が合う。
ついさっき、イミテが無事だとわかって安堵したときの目とはまるで別人のようだった。
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